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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(52)状況を聞いたダイヤキング(1)

 各商店の状況、特に第三者の妨害によって商品の入荷、素材入手が短い期間(・・・・)困難になってしまったと言う油断もあった為にダイヤキングは定期的に報告を受ける事にしており、その際に些細な事でも通常とは異なる動きがあれば必ず報告する様に部隊全員に申し付けていた。


 今日の報告はアザヨ町にある商会からの報告なので、ダイヤキングはカード状態になって遠方からの話しを直接聞いている。


『・・・と言う事でジルと言う男性とそのお付き初老の方、バリアドと言う男性が少女の為に猫を探すと言う素晴らしい行動を始めたようです、ダイヤキング殿』


 アザヨ町の商会はハートセカンド、サード、クラブエースで運営しており、万屋としても動く事が出来ると各部隊の面々は認識しているので、願いがあると言っていた町の人々の状況については都度情報を仕入れながら店員として活動をしている。


 それだけの余裕があるからできる芸当ではあるが、日々町および周辺の状況を把握している部隊である為にジルやバリアドの行動もしっかりと認識する事が出来ている。


『成程。どこにでも素晴らしい人材がいると言う事で理解した』


『ここだけ聞けばそうなのですが・・・実は少々詳しく調査したところ、そのジルと言う男性は羨ましくもハートエースがご主人様に対して癒しのマッサージを行っている際に、余計な口を挟んできた男性でもありました』


『むむ・・・そうか。結果的にはスペードキング殿からの情報ではそのジルと言う男の盛大な勘違いだったとは聞いているのだが、そのような過去があるのであれば少女の為に万屋として動く事は吝かではないが、ジルと言う男の為になってしまう事を考えると我が主にお伺いする必要があるな』


 友達である猫を失ってしまった少女に対する行動は否定しないが、その依頼を受けたジルと言う男が絶対の()たるロイに対して勘違いであっても文句を言った事実があれば、どの様に動くべきかの判断を仰ぐ必要があると考えているダイヤキング。


 状況が状況だけにあまりにも直接的な言い回し、具体的に実在する人の話として説明するとロイに余計な心労をかけてしまうかもしれないと、最強頭脳集団のトップを自認するダイヤキングは無駄に頭を悩ませていた。


「ならば、これしかないだろうな!」


 野営であるはずが何故か豪華な食事と温調が完全に管理されている空間、更には風呂までついている不思議な部屋になっているテントの中で寛ぎ始めているロイに対して、陰から護衛しているスペードキングが何時もの通りに声をかける。


 このテントも実際に使用して改善点を無駄に見つけ出しているダイヤ部隊が日々その能力を如何なく発揮して改善に改善を繰り返しているので、今は外観だけは普通のテントだが中はどこの高級ホテルの一室だと言う状態になってしまっている。


 ロイも当初は困惑していたのだが善意の活動を制御できるわけも無く、半ば投げやりな気持ちでこの状況を受け入れていた。


「我が主。ダイヤキング殿からお話しがあるようです」


 そこに毎晩のように何かしらの報告や問い合わせの時間が始まる定例句を言われたので、流れ作業の如くダイヤキングを召喚する。


「我が主、この世界は不思議でございます。町、国、色々な風習、文化があるように、それぞれの逸話も数多く残っております。我らカード部隊一同、日々活動している中でその伝承とも言える話しを仕入れましたので、今日は趣を変えて大陸の知見をそれらの伝承から仕入れると言うのは如何でしょうか?」


 普段であれば各種の結果報告をものすごい勢いでしてくるかロイを無駄に褒め称えるか、はたまたどのように行動するのかの問い合わせと言う名の確認をするかの何れかだったのだが、全く違うパターンに少々不安になるロイ。


 散々カード部隊が無駄に力を使って暴走しているのを見ているので、その指揮官とでもいうべき存在が突然変化すれば次に待っているのはどのような呆れ、驚き、諦めになるのか・・・と、どうしても不安になる気持ちを抑えきれないまま、期待に満ちた目を向けているダイヤキングに許可を出す。


 この辺りがやはり非情になり切れないロイの人柄が出ており、家族、カード達からも愛され、尊敬されるところなのかもしれない。


「わ、わかったよ。じゃあ、お願いしようかな?」


「おぉ、ありがとうございます。僭越ながらこのダイヤキング、心を込めてお話しさせて頂きます!」


 無駄に姿勢を正して真剣な表情に変わったダイヤキングなので、どれほど深い話になるのかと思わず期待してしまったロイ。


「コホン、では・・・昔々あるところに!両親と少女、そして少女の妹として共に生活している猫がおりました」


 何故か良く分からない身振りが入っている事、そして大陸の伝承と聞いていたはずなのに極めて一般的と思われる昔話が始まってしまった事に不思議そうな顔をしているロイだが、ダイヤキングが熱く語っているので邪魔にならないように一応話しだけはしっかりと聞いている。


「その猫が有ろうことか脱走してしまったのです。少女の悲しい気持ちはいかばかりか、考えるだけでも胸が張り裂けそうですが・・・しかし大丈夫です。猫についてはしっかりと所在が確認できておりますし、健康そのもの!」


 最早昔話とも言えない流れになりつつあるのもやはりダイヤキングだから仕方がないのかと思いながらも・・・そもそもこの話しの真意はどこにあるのかを把握しなくてはならないと、早くも気持ちを切り替えているロイ。


「そこに、全く想定していない人物が助け舟を出したのです。その人物は有ろうことか神に等しい、いいえ、神以上の存在に対して碌に事情を確認せず旅の途中で寛いでいらっしゃるところに事実無根、無礼千万とも言える言いがかりをつけてきた存在なのですが、最も許せないその行動を除けば他は正しい行動をしている存在です。しかし、残念な事にその男の力では猫を探す事は出来ないでしょう・・・と言う伝承です」


「・・・はぁ」


 真意を把握しようとしても何が何だかわからず、結局何とも言えない返答しか行う事が出来ないロイだ。


お読みいただきありがとうございます。


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