(51)新たな店員を目指す(ジルとバリアド)
ロイ達と少々揉め事を起こしてしまった曲がった事が嫌いなジルとそのお付きのバリアドは、今後について相談・・・と言うよりも、一方的に願望をジルがバリアドに対して伝えている。
「あの商会は神の商会だ。あれほどの美しい女神がいらっしゃるからな!俺も一瞬あの女神に目がくらんで暴走してしまった所は反省しなくてはならないが、俺がそこまでになってしまう程の神々しい容姿。他の有象無象がそうなってしまうのは必然!」
「はぁ」
「そこで俺は思い至った。俺の力、正義の力は女神を守る為に使う為に得たのだ!と!」
「えぇ」
「俺はあの女神と、女神達と同じ空間で仕事ができる栄誉を何としてもこの手でつかんでみせるぞ!爺!」
「ほぉ」
延々と続いている同じような願望を垂れ流されているバリアドは、もう単語しか返しておらずに正直話しの内容は一切聞いていない。
真直ぐ進む事しか知らないジルは走り出したら止まらない性格である為にすぐさま行動に移し、宿を飛び出してシンロイ商会に向かってしまったので慌てて後を追うバリアド。
「む?」
急ぎ商会に向かっているのだがやはりその性格からか少々曲がっていると感じている事などは特に気になるし、更には弱者を助けると言う意識が強いので今回で言えば何やら困り顔の少女が目について足を止める。
「俺はジルと言うが、どうしたのだ?何か困った事があれば、できる事であれば力を貸そうではないか?」
泣きそうになりながら何かを探している素振りを見せている少女の為に足を止め、しゃがみこんで話しを聞いているジル。
「あの、ね?ナナちゃんがいなくなっちゃったの。私のお友達なの!」
「な、何?人攫いか?重大案件ではないか!!その容姿・・・見た目はどのような子なのだ?」
焦るジルと、同じく早く捜索しなければと言う思いでいる爺ことバリアド。
「えっとね、フワフワの赤い毛で、可愛い顔をしているの」
「むむ、爺!コレは相当可愛らしい少女が攫われた可能性が高いな。赤毛の少女・・・直に探すぞ」
バリアドも頷いて即座に動き出そうとするのだが、少女の話はまだ終わっていなかったようだ。
「それでね、私がお腹をコチョコチョしてあげるととっても喜んでね、ニャーって鳴くの。早く見つけて一緒に遊びたいの」
思い出しながら悲しくなったのか泣いてしまった少女をあやしつつ、自分達が盛大に勘違いしていた事に赤くなりながらもとりあえず行方不明が人ではなくどうやら猫でありそうだと安堵する。
「わかった。俺・・・兄ちゃんに任せておけ。何時頃、どのあたりでいなくなったんだ?」
安堵はしたが悲しむ少女を見捨てる事は出来ないジルなので、そのまま探し猫、迷い猫とでも言うのだろうか、見つけてやると言う気持ちは変わらない。
「えっとね、ついさっきまで一緒に歩いていたのに振り返ったらいなかったの」
「爺!すぐに周辺を調べるぞ。それで、もっと何か特徴とか好きなご飯とか、何かあれば情報を教えてくれるか?」
どのような些細な情報でも時には値千金の結果を生み出す可能性がある事を経験から知っているので、今回の猫探しにおいても今迄の経験通りに先ずは情報を得ようとする。
例えば好きな場所、好きな食べ物、この辺りの情報であれば対象を見つける事や誘い出す為の重要な情報になるのだが、食事をしたばかりであれば急激に遠くに行く可能性は低いなど、不確定ながらも色々と捜索範囲や手法について絞る事が出来る。
「えっと、ナナちゃんはお魚さんが好きなの。沢山食べたけど、食べすぎちゃったみたいで少し苦しそうだったから休んでからお散歩に行っていた所だったの。えっとね、あとね、ナナちゃんは本当に珍しくって、全身が綺麗な赤色一色なの!ナナちゃん~、早く帰って来て~!」
「大丈夫だ。兄ちゃん達に任せておけ。見つけたらどこに連絡すれば良い?」
「本当に見つけてくれるの?私の家はここなの。お願いします!」
何と目の前の家に住んでいるようで、これならば猫の習性からこの場を中心に余程の事が無ければそう遠くには行っていないだろうと動く。
「爺はそっちに向かえ。俺はこっちだ。夕方に落ち合うぞ!」
「承知しました」
色々と決めごとをしているとその時間で探し猫がどこかに行ってしまう可能性も捨てきれないので、本当にざっと待ち合わせと探索エリアだけを決めると二人は少女の前から消えて行った。
その後、いくら二人が必死に猫を探しても時折風貌が似た目撃情報はつかめるのだが、赤い毛だとしても部分的であり対象の猫ではなく中途半端な目撃情報に振り回されていた。
夕方・・・
二人は目的を達する事が無く残念な報告をするのだが、ジルはその報告を聞いて悲しそうにしている少女を見て発見するまで活動する事を誓った。




