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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
49/155

(48)アザヨ町にて

良いお年をお迎えください

 スーレシアとテルミッタは商会で販売している品々がどう見ても不足している事を理解し、やがてこの教会に民が列をなすだろうと安堵しているのだが・・・待てど暮らせどそのような列は出来ずに時折商会に出向いて状況を確認するのだが、相変らず人で賑っている所は変わらないが商品が不足している所も変わらない。


「何故商品が不足しているのに来店する人々が減らないのかしら?」


「きっと希望の品が入荷しているのかを常に確認しているからじゃないかしら?」


 普通であればそうなのだろうがこの商会はロイ率いるカード部隊直轄の店であり、そのような事なない。


 スーレシアとテルミッタはどの道自分達は商品を手に取る事が出来ないのは理解しているので無駄に広い店内をテクテク歩きながらも空きが目立つショーケースの確認だけをしており、この状況であれば列を作るまで行かずとも癒しを求めてくる人材が皆無である事がおかしいと気が付く。


「このコーナーって、薬草や回復薬だったはずよね?」


「確かにそうですが・・・何もありませんね」


 商会では用途に応じて品々が整理されているので、明らかに回復系統の商品が並んでいたショーケースが完全に空になっているのを確認した二人はこの場所に客があまり足を運んでいない事に気が付く。


「誰も怪我や病気をしていない・・・とかですかね?」


「そんな事は無いと思うわよ?いくら何でもこれだけの人がいて、そもそもこの薬草や回復薬を購入した為に品が無くなっているのだから、必要としている人はいるはずよ?テルミッタ」


 自分達の想像の範疇を超えている店である為に同じ様に想像できない事が起きているのではないかと思い至り、慎重に住民達を観察すると口々に聞いた事のない様な言葉を発しているのに気が付く。


「スーレシア、万屋って言っていないかしら?」


「そのようね。ちょっとそこの貴方、少し聞きたいのですが?」


「んぁ?俺かい?」


 差し当たり近くに来た人物を捕まえたスーレシアは、この町の住民であろう男性から万屋について知っている事を教えてもらおうとする。


「そうです。周囲の皆さんが万屋とお話しされているようなのですが、ここはシン()ロイ商会と言う名前ではないですか?看板が変わったのでしょうか?」


「いや、そうではなくて・・・俺も確かな情報を持っていないけんど、どうやらサリナの所で万屋を名乗る者による奇跡が起きたようでな。同じような状況の人々からその話しを聞いたところ、時折この商会で万屋に依頼を受けてもらえるっちゅー話しを教えてもらったんだ。正直話しを聞いた当時は信じられんかったけど、奇跡が起きたのは事実だで」


 スーレシアはサリナについて見た事はあるはずなのだが、そんな事を思い出せるわけも無いのでこの男が言っている事は殆ど理解できない。


「良くわかりませんが、何かの団体、組織が助けてくれると言う事でしょうか?」


「あぁ、そうだと思う。俺も半信半疑だったがなぁ、実際に母ちゃん()を助けてくれたのも万屋だから、感謝しかねーっちゅー話しだ」


「そ、その万屋にはどのように話しをつけるのですか?この商会で話しを聞いてくれると仰っていましたが?」


「ん~、良くわかんね。俺の所もゲンさんと一緒にこの店で困った事を愚痴っていたら、いつの間にか万屋と名乗る不思議な声から接触があっただけだかんな」


「声・・・ですか?人ではないのですか?」


 接触してきたのが声と言っているので、言い間違いではないかと確認するスーレシア。


「うんにゃ、声だな。姿は一切見えんかった。何でも他の連中も同じだったようでな。一切の報酬も受け取らず、何故か万屋と連呼して声が消えて行ったっちゅーわけだ」


 この話しを聞いただけでは商会と繋がりがあるのか否かの判断すらつかないのだが相当力のある組織である事だけは間違いないと判断したスーレシアは、今得られた情報を基に無駄にテルミッタと共に生活に困っているだの所属している教会を統括している組織が大変だのと愚痴を言っているのだが、何時まで経っても万屋を名乗る声は聞こえずに店から出て教会に戻っても何も変化が訪れる事は無かった。


「やっぱり唯の噂話しなのかしら?」


「でも何人かは実際に助けられたと言っていたわけですから、噂として片付けるのは少々無理があるのでは?」


 何も起こらないのでどうするべきがを話しているスーレシアとテルミッタは、結局このままでは同じように癒しを求める人々は来ないだろうと判断してこのアザヨ町を捨てる事を決断した。


「結局、あのババァ(ロマニューレ)が儲かっただけ・・・」


 愚痴を吐きつつ町を出るスーレシアとテルミッタは、今後は同じように癒しを求めてくる民を待つのは少しの期間とし、自ら動く・・・つまり、冒険者の一員としてその癒しの力を行使して金銭を得る事にしていた。


 アザヨ町もそうだが、最早裏の組織で目立たずに・・・と言う所は姿を現さないと言う事だけで満足できると勘違いしている節があるカードの部隊達なので、この町でも完全に万屋は公に認知されるに至っている。


 ここまで大事になっているとは当然何も知らないロイだが、カード部隊、特に統括しているダイヤキングとしては、アザヨ町で万屋を立ち上げる事もロイの崇高な考えだと思っているのでこう伝えていた。


「我が主、アザヨ町も順調です」


 この一言の中に全ての報告が含まれているのだが、ロイとしては既に旅立った町の商会が順調であり、且つ町の人々も幸せに過ごせていると判断していた。


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