(41)スーレシアの行動と……(5)
聖主ロマニューレはスーレシアを信頼しているのではなく、強欲なスーレシアがジンタ町を離れるのであれば今映像に映っているスーレシアやテルミッタの様子から非常事態が起きたようには見えないので、実際に癒しを行う必要が無い・・・多少はあっても儲けにならない状態になった事は間違いないだろうと思っている。
「それならば、今あの町の教会は無人なのですか?」
「そ、それは・・・申し訳ありませんがその通りです。ですが申しあげたとおりにあの場所では癒しを必要とされていないので、今から後任を派遣しても無駄になりますよ?」
ここだけは真実なので表情にも自身が満ち溢れているスーレシアと、立場上教会に所属するシスターが不在であっても問題がないのかを調べる必要があるロマニューレ。
「わかりました。今日の通信は急ぎでなければここで一旦終了として、ジンタ町の調査を行った後にこちらから改めて連絡します。調査自体は今日中に終わるでしょうから、そう待たせる事はありません。それでも大丈夫ですか?」
強欲とは言え、教会を統べる立場である以上は体裁を保つ必要もある。
スーレシアとしてもジンタ町の現状を理解してくれれば自分の話しに嘘偽りがない事の証明にもなるので、次に話すアザヨ町のターゲットになる店の話しもし易いと言う思いからその申し出を受ける。
どの道あの強欲で性格の悪い聖主であれば今自分達がいるアザヨ町の調査もこの時間内で同時に行うはずなので、自分の訴えが正しいとロマニューレ自身が証明する事になると考えている。
「わかりました。では、聖主様からの連絡をお待ちしております」
その日の昼過ぎ・・・
「スーレシアの言う通りに、確かにジンタ町では癒しを求める人物がいない事が確認されました。何やらシンロイ商会と言う店があり、そこで相当効果のあるポーションが格安で販売されているようですね。その上、聖魔法を行使できる人材まで抱えていると言う話しでした。まさか我ら聖国の幹部でさえ略使えない聖魔法を行使できる人材がいるとは俄かには信じられませんが、そこは確認できませんでした。ですが・・・残念ながら少なくとも教会の存在意義が無くなっている事だけは疑いようのない事実ですね」
自分達が追い出されるきっかけになったのが全力で癒しを行っても完治させる事が出来なかった者達を一瞬で完全に治して見せた、顔は思い出せないが異常に均整の取れた瓜二つの人物二人の魔法であった事を思い出したスーレシア。
冷静に考えればアレは聖魔法で間違いないのだろうと思ったのだが、ここでは余計な事を言わずに黙って聖主ロマニューレの内心興奮している様な声を聞いている。
『あの町にもシンロイ商会が出来たのですか。だとすれば、ババァもあの店についてより詳細の調査を入れているはず。場合によっては素材入手先をもう掴んでいるのかもしれないですね。声から抑えきれない欲が見えるわよ、強欲ババァ!』
こんな事を思いながら今後自分はどのように話すべきかを慎重に検討しているスーレシアと、表面上は平静を装いながらもシンロイ商会の商品について話しているロマニューレ。
「・・・と言う事で、確かにジンタ町では教会の存在意義が無くなった事は認めます」
「ご理解いただけて何よりですが、ロマニューレ様。そこでお話しがあります。実は今のお話しの中で出てきたシンロイ商会ですが、今私達がいるこのアザヨ町にもあるのです。町民の説明によれば突如としてできたらしいのですが、できた場所が町から少々離れていた場所なので人目につかなかった事もあり、本当に突如としてできたと言うのには語弊があるのかもしれませんが・・・」
真実を話す事で慎重にロマニューレの表情を伺い、間違いなく事前調査をしたうえでこの話しを聞いているのだと判断したので説明し易くなったと安堵する一方、どこまで情報を掴んでいるのかが気になる。
「こちらの商会でも超高品質レベルの物を相当な数量取り揃え、有り得ない程の安価で町民に卸していました」
「それを大量に購入して、転売する方法もありますね」
思わず心の声が漏れたロマニューレ。
この声を聞いても互いの性格は知っている前提になっているのでスーレシアが突っ込む事はしないのだが、この一言でロマニューレが持っている情報の精度についてある程度理解する事が出来た。
自分が経験した屈辱的な状況・・・店に入るのは問題ないが購入は一切できないと言った事態を把握しておらず、恐らくロマニューレが派遣した人材であれば自分と同様に購入する事は出来ないはずなのだがそこを考慮する事なくこのような事を言っているのだから、現時点で仕入れ先までの情報を得ていないだろうと判断する。
「そこでロマニューレ様にご相談なのですが。あのような訳の分からない商会が繁殖してしまうと教会の、ひいては聖国の存続意義に直結してしまうのではないでしょうか?完全に排除するのは難しいのかもしれませんが、弱体化させておくことは必須、義務であると考えます」
「確かに、言われてみれば尤もですね」
ロマニューレはスーレシアの提言に多少納得できるところはあるのだが、本心としては仕入れ先を抑えて私腹を肥やしたいだけ。
「我が国の安定の為に、ここは私ロマニューレが一肌脱ぎましょう。こちらがシンロイ商会を調査の上で供給網を多少制御する事にします。全て潰しては民の生活に支障が出てくる可能性が高いですからね」
まるで配慮しているかのような言い分ではあるが内容を冷静に考えれば強奪以外の何物でもなく、一方でその言葉を受けたスーレシアはこの萎びた教会で暫く我慢すれば商会は商品の入荷が難しくなり人々が癒しを求めて来る事は間違いないと安堵する。
「ロマニューレ様の御心のままに」
自分の豪勢な生活が保障されるのは間違いないと確信したスーレシアは心にもない言葉を口にして通信を終えると、隣で慎重に成り行きを見守っていたテルミッタとハイタッチをして喜ぶ。
「やったわね!これで少しの間我慢すれば、またあの生活に戻れるわ!」




