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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(39)スーレシアの行動と……(3)

 街道では有り得ない程の商品を捨て値と言っても良い値段で大量に購入できて笑顔の町民と、その噂の店に笑顔で期待に胸を膨らませて向かうアザヨ町の町人が多数いるのだが、その中で唯一怒りの表情で宿に戻るスーレシア。


「ちょっと、この町を出るわよ!」


「一体どうしたのよ?突然。これからここで商売をするのじゃなくて?」


 同行している金魚のフンに今まで起きた事を説明すると・・・


「じゃあ、ある程度町を見てきたのでしょう?スーレシア。この町に教会はあったのかしら?」


「そこまで探していないけど、いくら寂れているとはいえ町の規模から考えると無いはずがないわね」


「では、そこからロマニューレ聖主に連絡してみたらどうかしら?」


「・・・あの裏表の激しいババァに?」


 スーレシアがこのように言っている相手は癒しを行える人物を各国に配置している教会のシスターとして派遣している国家である聖国ロナの聖主であり、所謂国家元首に相当する人材なのだが、このロマニューレ聖主はスーレシアと同じ穴の狢で表向きは非常に敬虔な聖職者なのだが裏の顔は何よりもお金が大好きな卑しい存在。


 その事実を知っているスーレシアは同族相容れないと言う思いもあるのか教会を通して自国に連絡をしてしまっては、あの有り得ない薬草等を破格の金額で投げ売りしている商会の説明をせざるを得ず、間違いなくその商会を手に入れるためにあの手この手で攻撃してくるのが目に見えていた。


 そこはある意味どうでも良いのだが、そうなった結果この周辺は焦土となって自分が得るべき益も得られないばかりか最悪は余波により被害が自身にも及ぶ可能性が高いので報告を渋る。


「そんな事を言ってもそれ程の薬草があるのであれば教会の、私たちシスターの、ひいては母国の聖国ロナの存在意義にも関係してくるのではないかしら?」


 ソシケ王国の王都では既に長く営業をしているシン()ロイ商会だが、あの場所では高級な素材は相応の金額・・・と言ってもそれでも安いのだが、ある程度の金額としていたのでここまで異常な熱狂的とも言える歓迎を受ける状態にはなっていない。


 そもそも王都に設置している店舗であるために周辺住民の懐が十分に潤っている事もあるのだがここアザヨ町はそのような事は無く大事になってしまい、そこから噂が巡り巡って各国に設置している教会の存続にも波及しかねないと危惧している。


 本来の聖職者であれば喜ばしい出来事であり、そのような人物に癒されている人々はたとえ教会に対して癒しの作業を依頼しなかったとしても寄付をするだろうが、スーレシアとその子飼いであるテルミッタは今迄の愚行から分かるようにそのような事をしてもらえる存在ではないので教会ありき、そして屋台骨である聖国ロナが重要だ。


 ジンタ町の教会で活動をしていた所で色々あって結果的にはスーレシア達に追い出されていたシスター達が現状について教会を通して祖国に報告しないのは、癒し自体はしっかりと行っていると思っていた事や当人達には告げ口の様な行動をすると言う意識がなく、そんな暇があるのであれば他の場所に行って癒しを行ってあげたいと言う慈愛の心で行動していたからだ。


 まさにシスター、聖女と言っても良い人物達を追い出した挙句に、自分達も逃げるようにアザヨ町に来ているスーレシアとテルミッタ。


「仕方がないわね。正直あのババァと話しをするのは心底嫌だけれど、そうも言っていられないわ。でも、上手く話さないと私達もあの欲望の渦に巻き込まれかねないわよ」


「それならば、敢えてホフマン司祭に連絡するのもありかもしれないわ!」


 ホフマンとは聖国ロナのナンバー2と言って良い存在であり、聖主、所謂国主であるロマニューレとは全く異なり、ジンタ町で行動をしていたシスター達の様に慈愛に溢れる聖職者だ。


「ちょっと、テルミッタ。あんな堅物にあの店の話しをしても何もならないでしょう?」


「そうじゃないわよ。そもそも町の人達が怪我をして治っていないと言う事は教会が機能していないのよ?そこをしっかりと報告すれば労せずに私達が教会を管理出来るのではないかしら?」


 テルミッタはシン()ロイ商会の話しをスーレシアから聞いてはいるがあまりにも有り得ない内容であった為に話し半分程度で聞いており、教会さえ乗っ取れば絶対に町民は癒しを求めて来ると信じている事からスーレシアと根本の部分で大きな意識の乖離が発生している。


 スーレシアはテルミッタの提言に従っても絶対に自分が望んでいる結果にはならないと思っており、結局結論が出ずに行動に移せずこの日は終了してしまう。


 この一日、いや、半日が二人にとっては致命傷になり、翌朝起きてテルミッタにも現実を見せた方が理解は早いので街道を進んでシン()ロイ商会に向かうのだが、その道中で誰しもが活気にあふれ、ただの一人として体調が悪そうな人物、更には怪我をしている人物を見る事が出来なかった。


「ちょっと、スーレシア!こんな環境で癒しを求める人がいるのかしら?これだけの人数がいるのであれば本来は結構な数の癒しが必要な人がいるはずよ?それが・・・まるでいないなんて」


 昨晩にスーレシアが伝えていた事に相当な現実味を感じ始め、この町で活動する事は不可能になる可能性が高く焦っているテルミッタ。


 やがて小高い丘の上に聳え立つシン()ロイ商会が見え、周囲とはあまりにも落差が激しい立派な外観に強烈な違和感を覚えつつ・・・昨日のスーレシアの説明によれば購入できない可能性は高いながらも入店はできるだろうと思い、商品がどのようなものなのかその目で確認するべくズンズンと進んで行く。


「こ、コレって・・・」


 予想通りに入店は問題なかったのだが、周囲の者達がいつの間にか商品を手にしている状況の中で自分の手元には何も出ずに只管ショーケースの中に陳列されている品々を見ると、スーレシアが言っていた事が誇張でも何でもなく本当の事だったと嫌でも理解できてしまった。


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