(34)アザヨ町(3)
クラブの部隊トップ3がジンタ町内部ではこれ以上の情報は掴めないと判断して町の外に向かい人ならざる力を使って一晩調査の上明朝にロイの部屋に戻るのだが、その表情は安堵の表情になっている。
部屋に入る前にカード状態のダイヤキングに情報を入れており、そこからロイの護衛をしているスペードキング、そしてロイに伝わっているので説明は概略で済む。
「我が主。クラブ部隊による調査の結果ですが、行方不明となっていた方々は全員の無事を確認しております」
「お疲れさま。まさかね・・・でも、町を何とかしたいと強く思っている人がいなくなっているって事はそう言う事なんだよね」
実は行方不明者となっていた人々、少々前からこの町が衰退の方向に向かっていると判断して、先ずは何らかの事情で孤立しても問題の無いように食料自給率を上げる事から始めていた。
少々離れた場所の荒れ地を耕し、近くの川を整備して魚を獲れるように改良し・・・情けない事ではあるが、夢中で作業している内にアザヨ町への帰還だけではなく報告すら忘れてしまっていたので行方不明者が出ていると言う噂が流れてしまい、良かれと思って行った行動が確かに衰退の方向に向かっていたアザヨ町をより加速度的に衰退方向に向かわせてしまった結果となったのだ。
このあたりの意識はアザヨ町を良くしようと言う強い思いから来た故郷を愛する者、そして町の発展を心から願っている来訪者が真直ぐ過ぎたせいだろう。
その結果を既にカード状態ではあるがスペードキングを通して全てを聞いているダイヤキングが珍しく黙っているのは、この状態からどのように改善してシンロイ商会や万屋の知名度を上げて行くかを考えているからだ。
「とりあえず、その人達に一度帰ってきてもらう事にしようか?突然俺が町の人に行方不明者を見つけたと言っても、信じてもらえない可能性もあるし・・・」
このアザヨ町からは少々離れた場所で開拓のような作業を行っているので作業の音も聞こえず気配もわからないまま行方不明とされている事態を収拾すべく、ロイ達が動き始める。
「我が主。ダイヤキング殿から、お話しがあるようです」
その直後、タイミングを狙っているかのようにスペードキングから定型文で声をかけられてダイヤキングを召喚するロイ。
「我が主!これはまさに神たる主の出番でございます。運命とは主を中心に動き、運命が主を引き寄せる。まさに至高のお方の天運!」
「・・・」
何かを思いついたダイヤキングは召喚直後から非常に暑苦しい状態であり何を言っているのかイマイチ理解できないロイは言葉を失っているのだが、対照的に同じカードの部隊の者達はこれからどのように素晴らしい案が出てくるのか期待に満ち溢れた表情をしている。
「フフフ。そこで私ダイヤキングが恐れ多くも一計を案じました。少々距離のある場所で開拓を行っている新たな居住地。そこにシンロイ商会を設立し、更には万屋の力も含めて開拓をサポートするのです。徒歩で小一時間の距離であれば、道中の街道まで整備する事でよりこのアザヨ町は発展する事間違いなし!」
事情を聞いていたロイは、まぁ想定の範囲内の発言であった事から安堵する。
「町が発展する事は良い事だよね。やり過ぎない範囲で任せるよ」
この宿に泊まるきっかけになったミレニアの少し寂しそうな顔を思い出し、行方不明者発見の報と共に町が発展する事で笑顔になってくれればと考えてダイヤキングに一任する事にした。
「ありがとうございます。ではあまり目立つと万屋としての方針を違えてしまいますので、本日もう少し経過した頃に作業を開始したいと思います。もう時間も時間ですので、是非我が主にはお休みいただきますよう」
本心からロイを心配しているのだが、結果的にロイが全く関知しない状態で作業が行われる毎度の事態になっている。
「そっか、ありがとう。とりあえず夕飯でも食べてから休ませてもらおうかな」
その善意をそのまま受け取り、言われた通り早めに休むための行動を開始するロイ。
一階に向かいミレニアが両親の仕事を手伝っている食堂で夕食を済ませると再び部屋に戻って意識を飛ばすのだが、護衛としてスペードキングがこの部屋に残っている以外の召喚された者達は一気に部屋から出て作業を開始する。
夜も更けている中全力で気配を消して行動しているのだが、街道整備の為に木を伐採して地面を整え・・・と、通常であればあり得ない程の轟音、振動が出て然るべき作業も全くと言って良い程の無音で進み、僅か数時間で街道整備が完了してしまう。
「フム。これで街道は良いとして、次は我らの拠点。神たる我が主に相応しいシンロイ商会だからな。これ以上ない程にしっかりと建設しなくては!」
やる気に満ち溢れている一行の中で指揮を執っているダイヤキングは、作成途中の集落と言って良い場所を見回しながら適切な場所を探し出す。
周辺の気配を掴む程度は造作も無いので誰一人として起きていない事を確認しながら完全に気配を消して活動しており、やがて少し小高い丘になっている場所に到着すると満足そうに頷く。
「ここだ!ここしかない!!フフフフ、流石は我が主。当然と言えば当然だが、お休みになっていてもその御威光は止まるところを知らず!なれば、我ら配下は全力でサポートさせて頂くのみ!」
その後伐採した木々を使用して継続して無音で建築を開始し、こちらも時間がかからずに終了してしまう。
「むぅ、本来はもう少し厳かでありつつ威厳の有る様な、神たる我が主に相応しい創りであるべきだが・・・やむを得ない所か?」
どう見ても相当立派な建屋ではあるのだが、素材に限りがあるので限界はある為に渋々納得していたダイヤキングだ。




