(33)アザヨ町(2)
彼等、彼女達はロイの性格を把握しているので、本音を言えばロイだけの為に動きたいのだが、周囲の者達にも慈愛の行動を行うべきとの至高の考えに従って動く事を考え始める。
「どうあっても調査をする必要があるのは誰が考えてもわかる事。だが、それだけでは我らが主の望む所からは大きく乖離している。あれほどの崇高なお方のご要望がその程度であるはずがない!」
当然ダイヤキングは瞬く間に熱くなり周囲にはロイを崇拝している者だけで構成されているので加速度的に場は盛り上がって行くのだが、その話しの方向が正しいかどうかは定かではない。
「今までの経験から、欲にまみれた者達が攫っているのだろうが・・・」
「であればダイヤキング殿。その不埒な者達の対処は我がクラブの部隊に任せてもらおうか!」
ありがちな人攫いだろうと断定し、その相手を表立った戦闘を得意とするクラブの部隊の隊長であるクラブキングが名乗り出る。
「フム、確かに厳しくお灸をすえるのであればクラブ部隊が最適。その方針で行こう!」
最早当初の決まり事である調査をぶっ飛ばして勝手に敵を作って始末する方向に話しが飛躍したこのカード達の会議だが、誰しもが納得して充実感を得た状態で閉会された。
カード状態の者達でそのような会議が行われている事を知らないロイは道中魔獣の罠用の餌の設置まで付き合った後にアザヨ町に到着するのだが、少女が言っていた通りに少し活気のない状態であることは肌で感じ取っていた。
「じゃあ、本当にウチに泊まってくれるのですか?」
「うん。宜しくね!」
道中少しは打ち解ける事が出来たロイと少女。
話しの流れで少女の両親は宿を営んでおり、最近は活気のない町になっている事や噂を聞きつける能力の高い者達から更に噂が広がっているのか来訪者が激減し客が少ないとの話しを聞いたロイは、少女・・・名をミレニアと言う少女の両親が経営する宿に宿泊する事を決めた。
この会話の流れを全てスペードキングから聞いているカードの者達は絶対の主が決めた事であれば反対する事や文句を言うわけも無く、ダイヤキングでさえ本来はもっと良い宿に泊まってもらいたいと言う気持ちを持っていても何も言わない。
「我が主。ダイヤキング殿からお話があるようです」
上等とは言えないベッドと小さな机がある一室に案内されたロイに、スペードキングから最早ルーチンワークのようになっている事を告げられてダイヤキングを召喚するロイ。
「我が主。このダイヤキングは全てを理解いたしました。全く不埒な輩がいるものです。我が主がいらっしゃるこの町でそのような行いがなされるなど言語道断!しかし、慈悲深い我が主御自ら動く必要は一切ございません。えぇ、理解しております。本来は絶対のお力をお持ちのご自身で解決したいと思われるのは承知の上でございます」
「えぇ・・・」
最近はこのような事が立て続けに起こっているので、何故か自分の支配下にあるはずなのに一切制御が出来ないなと思いつつも半ばボーっとしながら無意識に返事をしているロイ。
「そこで我が主にはアザヨ町をご堪能いただき、些事は我らにお任せいただきたいと思います。今回はクラブ部隊がやる気を出しておりますれば、何卒ご命令を頂きたく!」
「はぁ・・・」
無意識下全自動回答を行っているロイは、ダイヤキングの話しの中身はあまり理解していない状態で半ば反射的に中途半端な返事をしており、この何とも言えない返事を肯定と理解したダイヤキングは喜びのままクラブ部隊召喚を促した。
「では早速クラブキング、クィーン、ジャックを召喚お願いいたします。今回はトップ3が対応をしたいとの事でしたので!」
ダイヤキングとしてはこの騒ぎに乗じてこのアザヨ町でもシンロイ商会設置か万屋の知名度上昇を行う為に行動する事は必須であると考えているので、どさくさに紛れて自らの配下であるダイヤ部隊も数名召喚依頼を出している。
少々ボケっとしながら対応しているロイだがこの町の少女であるミレニアから聞いた話しは解決したいと考えているので、情報収集に長けたスペード部隊の召喚を行っていない事に気が付く。
「ダイヤキング。スペード部隊は召喚しないの?」
この言葉に反応したのは、既に召喚されているクラブキングだ。
「我が主から頂戴しましたお力が有れば、我らクラブ部隊でも情報取集など造作もありません」
言われてみればそうなのかもしれないと思い、今回はダイヤキングの作戦立案と実行部隊にクラブの部隊トップ3と言う布陣で行う事を承認してダイヤキングのみをカードに戻して休む。
一応二時間以上歩いていたロイなので、即深い眠りについた事を確認した召喚済みの面々は音を立てずにこの部屋から消えて行く。
「私は中央部分を調査します。キングとジャックはどうしますか?」
暗闇を完全に気配を消して疾走しているクラブの部隊三人はこのアザヨ町を大きく三分割して行方不明になっている人々についての情報を得るために動き始めるのだが、結果的に当初想定していた人攫いに繋がる情報を得る事は出来なかった。
「まさかここまで何も痕跡がないとは・・・次は調査範囲を広げて、町の外を調査しましょう!」
一先ず集合して各自が情報を公開したのだが三人揃って犯人に繋がる情報を得られなかったので、事前に聞いていた通りに性別・年齢等に統一性はないのだがこの町を何とかしたいと思っている人、助けてやりたいと思っている人が行方不明になっている事だけは新たな情報として得る事が出来ていた。




