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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
30/138

(29)ジンタ町で(3)

 どの部隊に所属していても高いレベルの鑑定魔法は使えるのでダイヤキングも目の前の親子が完全に治癒できている事はわかっており、目の前で自信満々に攻撃的な事を言っているスーレシアが多少ではあるが哀れになっている中でも、やはり同じ主を仰ぐハート部隊の成果を貶されては非常に面白くないダイヤキング。


「ハハハハハ。貧相な者が崇める神であればいくらでも唾を吐こうではないか!そもそも我らの力は偽りなどではない。その濁り切った瞳で良く見るが良い!」


 (ロイ)を想い多少声が大きくなっているのだが、その声につられて先頭に並んでいたお得意様とも言える二人を見るスーレシア。


「え?」


 その驚愕の声からわかる通りに今までどう見てもフラフラで体の一部が壊死していた二人の親子が、見た目上も完全に癒されて健康そうに見えるので驚きの感情しか出てこない。


「そんな馬鹿な!いいえ、まだわかりません。この者達は完治できない病のはず。私達でさえ治癒できないのに治るはずが・・・」


 スーレシアの声を遮るように先ずは親子の子供が嬉しそうに話すが、子供故に声が非常に大きくこの場に並んでいる人々に良く聞こえている。


「あ、あの・・・万屋さん?ありがとうございます!痛みが消えました。本当に消えたんです!こんなに体調が良いのは初めてです!」


 子供の頭を本当に嬉しそうに撫でながら、母親らしき者も続く。


「私も本当に良くなったようで、ありがとうございます。その・・・今迄治らなかったのにここまでして頂けるなんて正直思いもよりませんでした。治療に対する費用はこれで足りますでしょうか?」


 おずおずと少々汚れている袋をダイヤキングに差し出すのだが、謝礼など必要ないので全く受け取ろうとしない。


「お二方は長い間苦労されたようだ。その体調でそこまで稼ぐのも大変だっただろう。どこぞのふざけた訳の分からん、あろうことか神の代行者と名乗る者に毟り取られていたと思うと、もっと早く助けられなかった事を恥じている。申し訳なかった」


「そ、そんな!ここまでして頂いただけでも本当に嬉しいです。体調が良くなればまたしっかりと働けますし、どのみち今日はこのお布施で治療して頂く予定でしたので不足分は後日にして頂けると助かります」


 再度頭を下げて、袋をダイヤキングにグイグイ押し付けてくる女性。


「フム、わかった。貴方のその申し出を受けよう。そしてこれが我ら商会からのお詫びだ」


 一旦受け取って、即座にその袋を女性に握らせるダイヤキング。


 そのやり取りを間近で見させられているスーレシアやシスター達は、女性に見える二人が少なくとも壊死部分を完全に治している事から高いレベルで光魔法を使える事だけは理解しており、実力は自分達よりも上であると判断して分が悪いと思い黙って撤退する。


 その後教会の門の前は大賑わいになった。


 癒しを求めてくる人々を無償で完全に(・・・)治癒してくれるのだから今まで長く苦しめられてきた人々は歓喜に打ち震えており、やがてこの場での作業を終えたダイヤキング達はここに来られない程に衰弱している者達の元に向かう。


 残されて喜びを分かち合っている人々は、口々に万屋を称賛する。


 多少離れていてもその程度の声は聞き取る事ができるダイヤキングやハード部隊の二人は、今回の作戦で最も重要な事、ロイと言う存在を称える裏の商会である万屋の知名度を上げられた事に喜ぶ。


「ダイヤキング殿。これでご主人(ロイ)様を崇める人々が増えましたね?」


「ハートセカンドに同意します。神と言えばご主人(ロイ)様ですから、称えるのは当然の心理、いいえ、真理と言えます」


「二人共良く理解できているではないか。その通りだ。だがこれは序章に過ぎない。我が主を高みに連れて行くのが私達の至上命題!この程度で満足するわけにはいかない!」


 三人共に満足そうに各家に赴いて光魔法、時折聖魔法を行使して人々から感謝されるのだが、感謝されるよりも万屋の認知度が上がった事に喜びを感じている。


 こうしてロイの意図しない所で事態は勝手に進んで行く。


 人助けをした事を知られて過剰に感謝される事を嫌った為に馬車の荷台の中で苦しむ冒険者を万屋と言う謎の商会を名乗って救ったのだが、その万屋の噂が無駄に広がり始めてしまった。


 教会の奥に引っ込んだスーレシアと子飼いの女性は突然の出来事に少々驚いてはいたのだが、先頭に並んでいた二人のように完治が難しい者も少なからずいたので数日経てば同じように癒しを求める列ができると楽観視している。


 唯一の懸念は光魔法を行使できる存在の二人の女性がこの町に定住する事なのだが、その時は教会の威光で追い出す事ができると考えた。


 現実は・・・全ての人々が完治した状態である上に今後は万屋に頼ろうと考えている為に列は二度とできないのだが、その現実を知るのは数日経過してからになる。


「なかなか列が復活しないわね。あの女の姿も見かけないし、最悪は他の町に財産を持って移動するべきかしら?」


 教会の威光と言ってもあの日以来双子に見える女性の姿を確認できていないので追い出す必要も無く、どこにも活用する事が出来ていない。


 更に癒しを求める人々が全く教会に来ずに得る物もなくなっているので、散々悪さをして蓄えた財産と共に他の町に移動する選択肢も出てきた。


「一応、収納袋にしまっておいた方がよさそうね」


 こうして軽い気持ちで移動の準備をする為に財を保管している部屋に移動するのだが、スーレシア達の視界に入ったのは空っぽの部屋の中に一枚の紙、“天誅”と書かれた紙があるだけだった。


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