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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(2)能力②

 突然騎士に部屋から城内の一際豪華な部屋に乱雑に放り込まれたロイは、金目金髪の可愛らしい女性が目に入る。


 名前はリーンと言う女性のようで過去のロイと同じくこれから能力の有無について鑑定を受ける準備を始めており、厳かな雰囲気の中で行われている。


 リーンの見た目は10歳程度に見えるので間違いなく能力が発動する上限の年齢の可能性が高く、能力を持っている存在であれば何の能力を持っているのか確実に判定できることになり、コレは貴族に対して行われる通常の流れだ。


「では此方へ」


 恭しくリーンを祭壇のような場所に案内している鑑定の能力持ちの男だが、勿論この祭壇には何の意味も無く単純に雰囲気を出している為の小道具に過ぎない。


「リーン様・・・ハイス子爵家のルホーク様も能力をお持ちでしたので、貴方にも能力が発現している可能性が極めて高いです。現時点で何らかの能力を得られた感触はありますでしょうか?」


「あるけど・・・言いたくないわね」


 本来は王族として必要な能力持ちと判断されていたのだが、未だに能力の発動に至らずにいるロイの扱いは騎士に強制的に連行されている事から一気に悪化している。


 このまま行けば他の能力なしの兄弟姉妹達と同様の末路を辿るのは想像に難くないが、一応国家の管理対象である能力を持っているロイをそのままにできないので騎士が背後で控えて監視しつつリーンの鑑定作業を見ている。


 通常能力が発現、自ら行使できるほどになっていれば喜ぶべき事態だと感じているロイなのだが、視界に入っているリーンは全くその様子が無く寧ろ嫌そうな態度を隠そうともしていない。


 自分が望んでも全く手に入れられない状況なのにこの態度なのか・・・と、不思議な気持ちで見守っているのだが、逆にこれこそが能力の発現率が高い貴族の通常の態度なのだろうか?と、わかる訳も無い疑問を持ちつつボーっと状況を見ている。


「リーン様。一応鑑定結果との不整合を防止する為にお伺いしたのですが・・・教えて頂けないでしょうか?」


「・・・勝手に鑑定して報告すれば良いじゃない?」


 強気の姿勢を崩さないリーンを見て何故か尊敬してしまうロイだが、何かを発言する権利も無ければこの儀式を邪魔するほどの気力も無いので静観以外の選択肢が無い。


「では・・・おぉ、成程。そう言う事ですね?確認しました。では陛下への報告はこちらで実施させて頂きます。今日はお帰り下さい。今後については別途陛下からハイス子爵家に指示があるでしょう」


 鑑定を行った結果リーンの態度に納得したかのような態度であった事からロイの背後にいる騎士が思わず独り言を呟き、ロイの疑問を一部解消してくれた。


「成程な・・・恐らく<収納>の能力持ちだったのだろうな。<収納>は非常に希少だが、発動には強大な力を常に必要とする。だとすると他の能力は一切持てない事が確定してしまうし、間違いなく陛下の管理下に置かれる。貴族にしては良い事は何もないからな」


 一部不敬罪ともとられかねない内容が含まれているのだが、騎士の近くにはロイしかいないので本人も全く問題ないと思い小声ながらも本音が出てしまったのだろう。


「終わったようだな?」


「お父さん!」


 鑑定が終わったタイミング、偶然と言うには明らかに作為的なので扉の前で終了するのを待っていたハイス子爵が部屋に入って娘であるリーンを迎える。


 突然背後の扉が開いてハイス子爵が入ってきたので少し前の独り言を聞かれた可能性が高いと騎士は冷や汗をかいているのだが、一切その件には触れずに抱き着いているリーンを優しく撫でているハイス子爵。


「ハイス子爵・・・リーン様の能力については把握されていたのでしょう?貴重故に国家の厳しい管理対象になる<収納>の能力・・・残念ながら他の能力を持ち得ない能力なので、公になるのを少しでも遅らせるために鑑定の義の出席を拒み続けてきた。違いますか?」


「・・・言いがかりはやめてもらおうか?お前に指摘される謂れも無いはずだが?」


 実際には図星なのだが、娘の自由な時間を少しでも長く確保する為に子爵と爵位は低いながらもある意味国王の命に反し続けていたハイス子爵。


「まぁ、その通りではありますが・・・っと、そうでした。今日は一つお願いがありまして、この場に余計な(・・・)人物が一人来ております」


 ここで初めてロイに視線が集中する。


「リーン様に能力がある可能性が高かったのですが、確定していない段階ではお願いできずに汚物(ロイ)を退出させませんでした。コイツ(ロイ)も収納の能力持ちではありますが一切能力を発動できないのです。能力者の発動に触発されればあるいは・・・と思い、結果的に同じ能力をお持ちのリーン様であればその確率は高くなると思った次第です」


 ロイを視界に入れたリーンとハイス子爵は少し悲しそうな表情になり、子爵の腕の中から離れたリーンは迷う事無くロイに近づき手を取る。


「可哀そうに・・・わかったわ。私も能力を鍛える必要があるから、この子(ロイ)を引き取って共に行動する。そうすれば私の能力発動を見る機会も増えるでしょう?」


 ロイを連れてきた騎士や鑑定を行った男もリーンの発言は予想していなかったので反応できずにいるのだが、その隙にこの場では立場が最も高いハイス子爵が話を強引に進めて纏めてしまう。


「成程・・・それならば国の益にもなるしリーンの修行にも熱が入る。良いことだらけだな。まさか反対するような人物はこの場にいないだろうから、ハイス子爵家が責任を持って養おう」


 あれよあれよと言う間に王城を後にしてハイス子爵邸宅に到着したロイを迎えたのは、リーンの兄であるルホークと母であるテレシア。


「これからウチで過ごす・・・ロイだったな?能力の事など考えずに楽に過ごしてくれ!」


 城での話とは異なってロイには気楽に過ごして貰おうとハイス子爵が優しく声をかけ、ルホーク、リーン、テレシアも同じようにロイを笑顔で迎えていた。


「あの・・・一応収納の能力を持っていると鑑定されたロイです。間違いなく王族からは除名になると思いますので、そんな自分に肩入れしたと知られれば皆様は国家から目を付けられる可能性が高いのではないでしょうか?」


 ロイは突然周囲の態度が激変した原因は間違いなく能力があっても発動できない事に有り、つまり他の王城から消え去った能力なしと判断された兄弟姉妹達と同じ扱いになったと正しく理解している。


 その結果、王族としての地位や権力などあろうはずも無く、寧ろ国家の汚点として扱われる可能性が極めて高いのでハイス子爵家に迷惑をかけてしまうと考えて覚悟を決める。


「なので自分の事はお構いなく。泥を啜ってでも生き残れると思いますので失礼します」


 正直何の根拠もないが、短い時間でも自分に対して温かい言葉と態度で接してくれたハイス子爵家に対して被害が無いように行動する事を決意する。


 貴族であれば王族と揉めることは避けたいはずであり、自分が余計な火種になりたくないと思っているロイはさっさと席を立って目的のない旅にでも出ようかとしたのだが、その動きはリーンによって止められる。


 あっという間に近接されて優しく抱きしめられどうすれば良いのか分からずに慌てているロイをよそに、ハイス子爵家の家族は優しくロイを言い含める。


「ロイ・・・もうお前はウチの家族だ。どこの世界に家族を、息子を放り出す親がいるんだ!」


 正にロイの実父である国王バレントが言葉通りの行動をしている事をハイス子爵も理解しているのだが、本心から告げている。


「そうよ。ロイ君もハイス子爵家の一員になったのだから、勝手に家出されては困るわ。お母さん悲しい!」


 演技で泣き真似をしつつ、出口に移動してロイの動きを制限している夫人のテレシア。


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