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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(28)ジンタ町で(2)

「今日も鴨が沢山虫のように並んでいるわね。フフフ、バカな者達。調整して光魔法を行使されているとは思いもしていないようね。数日経てば再び癒しが必要になる事も知らずに必死にお金を貯めて貢に来るなんて、本当にありがたい存在。永遠に我ら教会に貢ぎ続けるのだから!」


 この教会のトップであるスーレシアは、豪華な内装の私室の窓から門の外に並んでいる人々を見下ろしている。


 この教会、以前は立派な人物が善意のお布施を頂きながら運営し、癒しを求めてくる者に対しては必死に対処していたのだが・・・近年スーレシアがトップになってから一変した。


 教会所属の者とは思えない程の贅を求めた結果真面な人物は一人、また一人とスーレシアの元を去り、補填するように引き入れた子飼いの者達で運営されている。


 今教会にいるのはスーレシアと同じように施しよりも贅沢と言う意識が極めて強い者であり、スーレシアの子飼い。


 継続して安定的に住民から搾り取るために光魔法による癒しを中途半端な状態で止めており、僅かな時間経過で再び癒しの力が必要になる状態に調整されている。


 対象は住民達だけではなく冒険者や町を管理する人々にも及んでいるので、彼等としては何かあった時の為に貯蓄を行わなくてはならない状況だと認識した結果、町は何とも言えない暗い雰囲気に包まれている。


 この町を統治する貴族から派遣されている町長の家族ですらこの憂き目にあっているのだが、以前この教会で勤めていた人々は何も対策が出来ないジンタ町に見切りをつけて既にこの町にいないので一部の住民は時折訪れる冒険者が光魔法を使えると聞けばそちらに癒しを求めて訪問しているほどだ。


 町の規模がそう大きくない為に、この報告を聞いている領主も態々収納魔法と同等に貴重と言われている光魔法を使える者を派遣する事はしないし、他の手を打つ事もしない。


 そもそも教会は領主の管轄ではない上に教会がない町も存在するのでこの町の為だけに動く必要はないと思っているし、教会と揉めたくないので動けないと言う理由もある。


「今日もたんまりと稼がせて頂くわよ!」


 数人のシスターを引き連れて門に向かうスーレシアだが、そこで仕立ての良い服を着ている三人の後ろ姿が見えた。


 一人は体格の良さそうな男性に見え残りの二人は女性のように見えるのだが、顔は隠しているようで良く分からない状態だ。


 何やら列をなしている鴨に対して話しをしていたようだが、この列は何なのか聞いていたのだろうと判断したスーレシアは開門させた所で先頭にいた者はオロオロするだけで中に入ろうとしなかった。


「どうしたのですか?私達は神に仕える都合上あまり時間はないのです。癒しが必要な人は中にどうぞ」


 神に仕えると言うよりも財に溺れる時間が必要なのだが、取り繕った笑顔を張り付けて優しい声で中に入るように促す。


「ハハハハ、コレ(・・)がこの教会の長か。フム、見るからに貧相で貧弱。多額の金銭を納めなければ治癒をしない神などいない方がましだ。皆の者、どう見ても欲にまみれた神よりも我らが商会長の方が崇めるに値するぞ!」


 ダイヤキングの話しを聞いて、漸く先頭の人物が教会に入る事を躊躇っている理由が分かったスーレシア。


「あら?あなた方はこの町で見た事はありませんね?そもそも顔が良く分かりませんが、何を言っているのですか?私達は癒しを求める人々から心ばかりのお礼を頂いているにすぎません。神に仕える者であったとしても、日々の生活がありますから」


 形上問題のない上辺だけの定型文で回答するスーレシアなのだが、ダイヤキングはその言葉を一切聞いていなかったのでまるで大きな独り言になってしまっていた。


「良し、見た所全ての人々が善の人である様だ。順に癒そう。始めるぞ」


 スーレシアやシスター達の視線を完全に無視して、ダイヤキングの指示の元どうすれば良いのかわからずオロオロしている人々を癒す為に移動するハート部隊の二人。


「フ、フフフ、無視ですか。あなた方は私達教会がどれほどこの町に貢献しているか、全く知らないようですね。ここで生活する時に長く苦労する事になりますよ?」


 どんな生活を送るのかは不明だが、長年怪我や病気の一つもなく暮らしていくのは厳しいこの世界で癒しは必須と言われている。


 この町の癒しを一手に引き受けている教会を無下にするとこの町での生活が出来なくなると脅しているのだが、大前提として対象が光魔法を使えない必要がある。


 スーレシアとしては最大限の脅しをかけたのだが、その言葉すら無視される。


 ハード部隊の二人が列の先頭に並んでいる親子に見える人に近づいて魔法を行使しようとする姿を見たスーレシアは、自らの勝利を確信した。


 ここに来る人々の大半に対しては光魔法の力を調整して継続して通わせるようにしているのだが、列の先頭の二人は事情が違ってスーレシアを始めとしたシスター達が全力で光魔法を行使しても完治させる事ができない状態なのだ。


「フフ、あなた方も良く見ていると良いですよ?神を愚弄するような者に正しい癒しが行えるわけがありません。少し光魔法を使える程度では、目に見えた回復は不可能なのですから!」


 あえて列の人々に聞こえるように語り掛ける自信満々なスーレシアと、ハート部隊の二人を不安そうに見ている群衆。


「「さっ、治りましたよ」」


 その直後に顔は良く見えないが姿は双子と言っても良い程に似ている様に見える二入が、全く同じタイミングで同じ言葉を発した。


「フフ。やはり口だけ、偽りの力のようですね。その者達は私達が全力で癒しを与えても完治できず、現状維持が精いっぱい。それをこのような短時間で治ったなどと宣言するとは、神に唾を吐くのに等しい行為と知りなさい!」


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