(25)宿
過剰な贅沢をするような場所ではなさそうで、一先ず安心する事が出来たロイ。
「良かった。考えすぎだったかな。ちょっと過剰反応だったよね?」
そのまま受付の方に進み、ダイヤキングが既に支払い済みと言っていた為に自分の名前を名乗る。
「あの、ロイ・ハイスです。少し前に宿泊の処理を代理人がしたと思いますが、聞いていますでしょうか?」
「ロ、ロイ様・・・ロイ様でございますね!はい。伺っております。本当に有難うございます。ささっ、こちらでございます」
きちんと宿泊の処理はされているようだが明らかに普通の対応ではない受付の様子を見て絶対に何かしでかしていると思ったロイは、とりあえず部屋に案内してくれている人の後ろをついて行く。
ロイにとっては初めての旅で宿についても冒険者から聞いた情報程度の知識しかないので本来このレベルの宿であればもう少し客はいるべきで、更には調度品についてもバランス良く配置されている必要がある事は理解できなかった。
「こちらでございます」
「ありがとうございます。おぉ~、町を一望できる。凄い!」
宿に泊まった経験のないロイはこの大きな部屋から見える景色に大満足で、受付の様子から感じていた違和感についてダイヤキングから事情を聞く事を忘れてしまっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇(ダイヤキング視点)
フフフフ、スペードキング殿は良い仕事をしているぞ。
我が主ロイ様が相応の宿をお探しと言う情報を、私を含めたカード状態の者達に対して即座に展開してくれたのだ。
当然十分な空間、しっかりとした食事、適度な気温、疲れが取れるベッド、最低限のラインは譲れないので、全力で調査をする事にしよう。
いくら私が頭脳派であるとは言え、この町程度の調査を行うのは訳もない。
フム、どうやら適当な宿は一つだけ。選択肢がない以上はここにする他ないのだがこの町、ジンタ町には少々問題があるようだが、これからお休みになられる我が主に余計な事を告げてしまうのは得策ではないな。
取りあえず・・・食材の提供と少々多めの金銭を出しておけば良いだろう。
主だった荷物はダイヤ部隊が収納しているが、我が主ロイ様の配下であるカードの者達は全員が収納魔法を使えるのである程度の荷や金銭は全員が収納している。
「少し良いか?」
「は、はい。宿泊でございますか?」
何やら久しぶりの客だと期待している顔だな。
確かに客ではあるのだが、このままの状態では我が主に相応しい食事が提供できない事を知らぬわけではあるまい!
っと、いかんいかん。どうにも我が主ロイ様の事になると熱くなってしまう。
私はロイ様の頭脳であるべきで・・・頭脳?そう、頭脳だ。
わかったぞ!我が主ロイ様の頭脳であるならば、この状況を改善するとともにロイ様の素晴らしさ、偉大さを広げるために利用すべきだろう。
この世界の真理に瞬時に至ってしまうとは、我ながら自分の能力が恐ろしい。
よし、早速・・・待て!我が主ロイ様は、あまり目立つ事がお好きではないのを忘れてはならないな。
とすれば、方法は一つに限られる。
「あ~、確かに宿泊だがいくつか確認しておきたい事がある。隠す必要はない。全て知っている上で聞くので、あくまで確認だ」
「確認・・・でございますか?」
「そうだ。どうやらこの町の財政状況は良くないようだ。残念ながらこの宿も同じだな。食材も十分ではなく、ここは推測になるが調度品も金策の為に販売したのか?」
「そ、そこまで・・・確かに、申し訳ありませんがその通りでございます」
ここからが本番だ、ダイヤキング!我が主ロイ様の為に上手く話しを纏めるのだ。
「実は、我が万屋が非常にお世話になったお方が間もなくここに宿泊なされる。我らは陰ながらそのお方に恩返ししたいのでな、万屋の存在についてそのお方には一切口外しないでもらいたい」
この程度の話しであれば、日常的ではないがなくもないから安心だろう。
「そのお方は、ロイ様。ロイ・ハイス様だ。当然食材も最高級の物をお食べ頂きたいので、私から提供しよう。残りは皆で食べると良い。それと宿泊料だが・・・通常はどの程度だ?」
食材提供まで一気に説明してしまったせいか、少々怪しんでいるように見えるな。
まぁ、元よりこの姿を公にするつもりがなく素顔をわかり辛くしている以上は警戒されるのは否定できないが、我が主ロイ様の為であればこの程度の品々の提供は当然であり、そこを理解できないとは努力不足だ。
実際目で見える金銭と共に食材も出せば、否が応でも信じざるを得ないだろう。
「部屋にもよりますが・・・」
「当然一番良い部屋だ!」
なっとらん!ロイ様が泊まられるお部屋は最上級以外に有り得ないだろうが!




