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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
232/236

(231)撃退

「忌々しい。それに何なのだ、あの料理は!あの店に真面な食材は一切ないはずだ!」


 シン()ロイ商会から撤収している男は、自宅に戻ると商会で起きた事を明確に思い出して怒りが再燃している。


 豊穣の神を祀らない店である為に町を挙げて迫害しているので仕入れなど真面にできる訳も無く、手に入っている素材は部分的に腐ったり虫食いだったりの劣悪な品である事はその目で確認していた。


 そのような品を使ってあれほどの料理を仕上げる主人の技量は凄い!の一言に尽きるのだが、この男がそんな事を知る訳もないしそもそもどうでも良く、如何にあの鉱石を無事に手中に収めるかを考え始める。


 方針として夜間に侵入して盗み出す事は決定しているがどう考えても第三者である冒険者二人がこの町におり、あの流れでそのままシン()ロイ商会に宿泊している可能性が高い事も理解している。


「だがこの町の絶対の神を称えない以上は、町全体に不幸が訪れる可能性も排除できない!目に見える形で罰を与える事こそあいつ等の為になるはずだ!」


 独善的な考えでいつの間にか開店していたシン()ロイ商会にダメージを与える事こそが正義だと思い、ついでに自らの懐も潤うのでこれ以上ない程の案だと思っている。


「これで常に豊穣の神を称えている事に対する褒美を頂ける事になるのだな。そうと決まれば・・・信心深い俺が動く以上は神の加護によって間違いなくあの冒険者達は深く眠っているので、警戒する必要はないだろう」


 ダイヤキング達の会議同様に誰も止める事がないので信仰心が無駄な方向に暴走しているのだが、冒険者二人はカートの者達が作成した過剰な機能を持つ設備を使用しているので安心して深い眠りについている所だけは事実だ。


「ふふふ。良し良し。宿である以上は夜も鍵は開いている・・・」


 逆に言えば従業員も起きている可能性が極めて高いのだが、従業員としては今の所突然現れた二人の美女しか見ていないので流石に連続で勤務しているのを確認している以上、夜は最低でも仮眠を取っているはずだと思いそっと商会内に侵入する。


 泥棒です!と、一目でわかるような姿をしているわけではないので、音を立てないように移動しているのだが第三者に見られても夜にフラッと店を覗きに来たと言い訳が出来る格好だ。

 

「改めて見ても間違いなく本物に見えるな。それをこの価格で販売するとは・・・無知なのか、そもそも販売するつもりがない客寄せなのか」


 冒険者二人が食事を頼めた所は見ているのだが、所詮は食事で金額は高額ではない。


 つまりこの非常に高価な鉱石は本物でありつつ破格の金額を提示してはいるのだが、そもそも商会側に販売の意図がない可能性があると考えている。


「何れにせよ、本物かどうかは手に入れる事で確実に判明する事になる」


 ショーケースに手を当てて透明の板を持ち上げようと力を込めるのだが、土台を含めてびくともしない。


「ぐぉおおおお」


 思わず声が漏れるほどに力を込めているのだが、変化があるのは自らの体がプルプル震えているだけなので埒が明かないと次の行動に映る。


 最早目撃者がいても関係ないとばかりに、近くの椅子を持ち上げると一切の迷いなくショーケースに叩きつける。


―――カンッ―――


 乾いた音がして椅子が容赦なく跳ね返り、ショーケースと土台は全く変化が見られずにいる。


「クソッ!そもそもどうやってこの商品を中に入れだのだ!いや、販売する気が無ければ入れ替えなどする必要がないからな。商品を中に入れた状態で二度と取り出せない様にしているのに違いない。姑息な店だ!」


 前半は勝手な推測なのである程度見逃せる部分があるのだがそこに加えて“姑息な店”と言ってしまい、カードの者達にとってみればロイの事を姑息と言っているのに等しいので制裁実行が即断されてしまう。


 この町及び商会についてはハートシックスとダイヤフィフスに一任されているので、カードの者達による会議を経ずに即実行に移される。


 絶対の主であるロイが無駄な殺生を好まない事は知っているのでその意に反する事のない範囲で実行する事だけを気を付けた結果、ダイヤフィフスが突如として現れて強烈な一撃を腹部に叩き込むと一撃を食らった男は流れるように出入口から外に吹き飛ばされる。


「残念です。私の方が一歩遅かったですね」


 直後にこの場に来たのはハートシックスであり、ダイヤフィフスよりも上層階にいたので到着が一瞬遅れて一撃を加える事が出来なかった。


「ううぅぅぅ。お、お前等!この俺に、この豊穣の神を称えているこの俺に対してこのような蛮行、神罰が下るぞ!」


 外で喚いている男の大声を聞き嫌でも周辺の住民が通りに顔を出しているのだが、民と比較して最も周囲の喧騒に対して敏感になれる力を備えている冒険者二人は遮音性能の高い部屋にいるのでこれだけの騒ぎでも心地良い夢の中にいる。


「とても面白い発言ですね、泥棒さん。必死にショーケースを持ち上げようとしたり椅子を使って壊そうとしたり・・・無駄な努力、お疲れさまでした」


 ハートシックスから事実を告げられて、思わず反射的に何も考えずに反論してしまう。


「コソコソ隠れて見ていたのか?そもそも何をしても中身を取り出せないショーケース等不要だろうが!中の品々を販売する気がないと証明している様なものだ。違うか?偉そうにするな!」


「あら?これまた自白をありがとうございます。必死に中身を取り出そうとしていた事は把握しておりましたが、無様で滑稽でしたよ?」


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