(22)ダイヤキング(2)
「ダイヤキング殿。あまり時間をかけては我らが主の御意向、早く苦しんでいる冒険者を治癒させると言う事に反しますぞ?」
む?我が主であるロイ様の素晴らしさをどのように伝えるのか、少々悩みすぎたようだ。
「確かに、時間をかけては我が主の御意思に反する。良し、手紙はこれで良いだろう。頼んだぞ、スペードテン!」
頭脳・錬金が得意なダイヤ部隊とは言えスペードテンの動きを補足する事は容易いので、念のために調べておこう。
フムフム、陰魔法によって地中を移動して・・・そのまま荷馬車の中に入って、誰の視界にも入らない位置に手紙とポーションを浮上させる・・・と。
「ダメだろう!」
申し訳ない。
ダイヤ部隊の隊長ともあろう私が、思わず口に出してしまった・・・
しかし、あれでは冒険者達が何も気が付かないではないか!
そのまま町に向かって行っては荷台の中に無駄に置かれているポーションと、それを使わずに息絶える冒険者の不思議な図が出来上がってしまうではないか!
何らかのミステリーを狙っているのか?スペードテン!いや、待て。
スペードテンにはまだ動きがあるな。
そうだろう、そうだろう。
そうであろうと思っていたぞ、スペードテンよ。
スペードテンは自分の腕の一部を陰から出しているな。
その手の先には・・・石なのか?
その石を倒れている冒険者を心配そうに囲っている集団の位置に投げた。
……コン……コロコロ……
なるほど。
何もないはずの荷馬車の奥から石が投げ込まれれば不思議に思い、そちらに意識が向くと言う寸法か。
フフフ、知ってた。
頭脳派最強を自負するダイヤキングの名を持つ私であれば、この程度は容易に想像できていたぞ。
欲を言えばもう少し捻りが欲しかったところだな、スペードテンよ。
冒険者達はスペードテンと私の思惑通りに荷馬車の奥を不思議そうに見ている。
大きな荷物もないから危険なものが存在しているとは思っていないようで誰も武器を構えるような事はしていないのだが、冒険者の一人が転がったただの石を不思議そうに見つめると奥を調べる為に移動する。
良く考えれば、手紙をそのまま集団の上から降らせれば良かったのではないか?と思わなくもないが、そこはスペードテンの演出を否定する事になるので黙っておこう。
「何だコレ、まさかポーション?誰か準備したのか?」
良し、ポーションに気が付いたようだし手紙を手にしているな。
私が丹精込めて数秒で書き上げた力作の手紙だ。
我が主の偉大さをその身に感じながら読むと良い!
「手紙もあるな。これは見た目からはポーションだと思うが、何があるかわからない。毒の可能性も捨てきれないから使うのはちょっと待て!」
この男・・・リーダーなのか警戒心が強いのは感心するが、我が主であるロイ様の慈悲によって下賜されたポーションを言うに事欠いて毒だと?なっとらんぞ!!
細切れにするぞ!っと、いかん。
この程度で平静を失う様では、頭脳派トップとは言えないな。
「何・・・万屋?なんだか良くわからないが、万屋を名乗る御大層な方が助けるためにポーションを提供してくださると書いてあるぞ」
「ちょっと読ませろ!・・・確かにな。悔しいが町まで持たないのは事実だろう。俺から見ても相当厳しいのは理解できる。だが誰もこの荷馬車に入った気配はないのにそこまで理解した上で提供されたのであれば、俺は使ってみる事に賛成だ」
「夜の移動ができない以上、間に合わないのは事実なのでしょう?だったら私も賛成よ!」
良い方向に話しが進んでいるのは結構な事だが、御大層とは非常に癪に障る言い分だ。
実際に素晴らしいお方なのだが上手く伝わっていない様で、やはりそこの所をもう少し具体的に認める必要があったのだろう。反省せねばならない。
お、そうこうしている内にポーションを使うようだな。当然だ。
まぁ、効果は非常に低い部類に入るが、あの程度の怪我であれば問題ない。
「こ・・・これは!もう一度手紙を読ませろ!」
おや?何故冒険者達が慌てているのだ?まさか効果がなかったのか!?
いや、大丈夫だ。確実に瀕死の冒険者は完全に回復されている。
「有り得ない効果のポーションだ。それも無償で姿も見せずに提供いただけるとは!」
「万屋、その名前覚えたわ。まさに神の所業ね」
どうやらあの効果が低いポーションであっても人族には考えられない効果を出していたようだが、私にとってはロイ様の命令を完遂できたので正直そこはどうでも良い。
むしろ万屋を崇拝するかのようになっている、つまりはロイ様を崇拝できている状態になっているので、私は大いに満足している。良くやったぞ、スペードテン。




