(227)商会開店(1)
守るべき存在は三人、そして守る側の人員はハートシックスのみであれば個別に保護対象が動いた際には救出に遅れが発生する場合があり、そうならない様に三人はあり得ない存在に庇護されていると知らしめるべきだと告げるダイヤキング。
言っている事は尤もなのだがロイの威光を知らしめること、更には有象無象に何らかの罰を与えたい気持ちが残っているので追加の作業があると告げている部分もある。
「それならもう一人部隊を置いておけば良くない?流石に二人いれば大丈夫でしょ?」
ロイにあっさり解決策を提示され、確かに本来は一人でも十分守り切れる力があるのだがそこに追加で一人配置されれば過剰戦力と言える。
「で、ですが・・・わ、わかりました。しかし有象無象に対して融通を利かせる事は出来ない事、その点に関しましては何卒ご了解いただきたく!」
「その位は仕方がないよね。流石の俺も、アレはないと思ったからね。酷かったよ」
ダイヤキングとしては不完全燃焼なのだがロイの指示を否定するわけには行かずに受け入れつつも、少しでも本来の目的を達成できるように交渉した結果・・・自らが望む回答を得て上機嫌になる。
実際にロイもリルが受けていた仕打ちとダイヤキングからこの町の状況を聞いた結果、他の町に存在しているシンロイ商会と同様の形態で運営するのは無いと思っている。
他の町の商会では一部の存在は除外されるが基本的に町の益になるようにあり得ない品をあり得ない額で販売しており、結果町の発展に大きく寄与している。
正直この町の発展には興味が無くなっているロイなので、ダイヤキングから得た追加の情報・・・この町で保護すべき存在は宿の夫婦とリルだけだと聞き、敢えて攻撃的な姿勢を取る必要はないが益を与える必要も無いと決断していた。
翌朝食堂に新たな従業員として配置したダイヤフィフスがおりロイにしか見分ける事が出来ないハートシックスと並んで配膳をしていたが、宿の主人夫婦とリルは事前に万屋から連絡を受けていたようで何も混乱する事はなさそうに見える。
当然呼び間違い防止のため、チョーカーとペンダントとは別に名札を付けている。
ここまで準備すれば安全はこれ以上ない程に確保されている上に今後の生活も仮に客が一人も来なかったとしても間違いなく安定するので憂いが無くなり、町としてはもう見る場所はないと移動を決意するロイ。
正直なところを言えばダイヤキングが言っていた有象無象・・・つまりこの町の住民に対して、商会として何も融通を利かせないと言う行動の結果を見たくない気持ちがあったのは否定できない。
融通を利かせないとはこの店に客として住民が訪問する事が大前提にあるのが普通だが、あのダイヤキングが普通であるはずが無く当然何らかの事を起こすのは明らかなので、必要以上に自らの心に負担を掛けたくない気持ちが勝っていた。
「じゃあ、俺達は行きますね。リルちゃんも頑張って!」
「ウフフフ、リルちゃんは何も心配する事はありませんよ。家族と一緒に楽しく生活してくださいね!」
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
こうしてロイとシルハが去った豊穣の町だが、既にあり得ない建屋とこれ以上ない程にシンロイ商会を主張している看板なので周辺からの視線は継続して集めており、そこに見た事も無い人物で目が飛び出るほどの美人であるダイヤヤフィフスとハートシックスが笑顔でロイ達を見送っているのだから完全に無視し続ける事は難しい。
とある人物は、自らの子供にこう告げていた。
「おい!豊穣の神を祀らない不埒な宿にあれ程の美人が・・・コホン。何も知らない従業員を二人雇った様だが、この町の常識を知らずにいる可能性が高い。お前が店に行って真実を伝え、リルやらあの夫婦やらと縁を切るように教えてやれ」
あり得ない美人を救出するべきだと独善的な考えからの発言なのだが仮に救出できれば自分が恩を売れると言う卑しい心があるのは明らかで、自らが行動しないのはあの美人二人を前に口汚く夫婦やリルをこき下ろしては印象が悪くなるかもしれないと言うふざけた打算によるものだ。
しかし子供とは年齢にもよるが親の影響を多分に受ける上、この町ではリルの様な存在は異物と認識されている為に何をしても良いと思っている事から言われた通りに店に向かっている。
低俗な町に成り下がっているので同じような事を考える存在が多数おり、数日前にリルを囲んで詰め寄っていた子供の大半が同じ様な事を親に言われて揃って店に向かっていた。
移動中に仲間が増えて気が大きくなっている子供達は、勢いよく店に入る。
「おい、何だかスゲーぞ?」
見た事も無い様なショーケースにこれまた見た事のない様な品々が陳列されているので親から言われた事をすっかり忘れ去って品々に釘付けになっているのだが、当然手に取りたいと思っても手元に品が移動する事はない。
リルや夫婦は事前に子供達の襲来を察知したカードの二人によって建屋の上層階に誘導されており、一階の喧騒など一切聞こえない。
「うわっ!見ろよ。コレって鉱石だろう?」
リルの父親が鉱石に見える品を売りに出し、容赦なく断られた事を知っている少年がこう叫ぶ。
幼いながらも鉱石に関して知識があるのは少年の父が営む店が鉱石を扱っているからであり、故にリルの父親が持ち込んだ鉱石がまがい物である事も親から聞いて知っていた。
共に生活を始めたカードの者達であればこの情報は既に把握済みであり、リルが大切に抱えている鉱石に見える品は母が大切にしていた品である事も理解しているので、そのまがい物の鉱石を錬金が得意なダイヤフィフスがこのように告げてリルの許可を取った上で練成し、今ではあり得ない程の価値がある鉱石に変換している。
「リルさん?その石ですが私の方で少し強固に、そして価値を上げる事が出来ますよ?大切にしている事は理解しているので、石はそのままに価値を上げると考えてください。どうしますか?」




