(224)そんな神は不要(3)
「・・・と言う訳で、我が主が把握されております通りにこの町では豊穣の神を称えない存在は厳しく迫害されております。あの少女と両親も同様で現在までの調査結果では、残念ながら母親は病で亡くなっております」
いつもの通りにダイヤキングがロイの前に顕現し、ジョーカーが集めた情報をロイに伝えている。
「父親も金銭を得る手段がなくなり、病に伏した妻の為にあの鉱石・・・ではありませんが、何とか少しでもお金に変えようとして断られ、その後病没しております」
全てが最悪の予想通りだったので、報告を聞きながら眉が寄ってしまうロイ。
「父親ですがあの少女を優先していたので自らは栄養失調に陥り、免疫も下がった為かあっという間に息を引き取ったようです。この宿の御夫婦以外は誰も手を貸す事は無く、少女は心に痛みを持ったままだと容易に推測できます・・・これが豊穣の神を称えている町とは、聞いて呆れます!」
正しくロイが思っていた通りの内容だったので深く頷くのだが、ダイヤキングが呆れている部分はロイが呆れている部分とは若干齟齬がある。
「まったく。豊穣の神としても益にもならない行動を平然と行うような人物に称えられても面白くない、寧ろ迷惑と思う部分があるのでしょうが、このような悲しい現状があるのに何もしない、できない神など一切不要!そもそも神として称えるべきは我が主以外に存在しません!」
称えられているのがロイではない部分が最も納得できないダイヤキングを筆頭としたカードの者達なので、この町をこのままの状態で放置するなどと言う選択肢はなかった。
「そこで、宜しければこのダイヤイングがこの町の悪しき環境を一掃して御覧に入れます。是非ともご命令頂きたく!」
迫害に対する怒りに関しては非常に共感できるのだが、それ以外には不安しかないのでそのまま許可は出来ないと考えたロイは具体的にどのような行動を起こす予定なのかを恐る恐る聞く事にした。
「もし対策を一任したらどうする予定なのか・・・ちょっと聞いても良いかな?」
「もちろんでございます、我が主。先ずはあのクソガキどもは各自の家の前に逆さに吊るします。当然第三者が触れられない位置にしますので、その生産者とも言える親も救出する事はできません。ご安心ください!」
相変わらず安心できる要素が何もないと思いつつ、しょっぱなから否定しては話しが続かないので取り敢えず最後まで説明を聞く体制を維持しようと思っているロイ。
「そしてあの場にいた周辺の有象無象、あの場にいない存在もこの店の御夫婦以外は同種と判明しておりますれば、先ずは生まれたままの状態に戻って自らを省みさせます!」
具体的な内容を聞かずとも全員裸にひん剥いて生活させる事だとは、過去の事例から理解できてしまうロイ。
「更に!我が主以外に無駄な祈りを捧げていても益はないと身をもって知る必要があると考えておりますので、今豊作に見える作物は全て没収!そして神である我が主の銅像に心からの懺悔と崇拝の祈りを捧げた者のみに食材を与えます!」
「・・・あの、さ?それだと今以上に圧制になっていない?」
「とんでもございません!これでも最大限の譲歩をしております。もちろんこの対象には今シルハ殿と共に居るあの少女、この宿の御夫婦は該当しませんのでご安心ください!」
この短い会話で二度目になる全く安心できない話しを聞かされ、このままではこの町は瘦せこけた人々が裸で徘徊して子供が宙吊りにされている怪しい町で有名になってしまうと確信したロイは、必死に頭を働かせてダイヤキングでも納得できる案をひねり出す。
過去の行動を見ればシンロイ商会設立か万屋による暗躍がデフォルトなのだが、暗躍を選択してしまうと大惨事に陥りかねないので本当に止む無くシンロイ商会設立の方向で話しを進めようと誘導する。
「じゃあさ?この町に商会を設立してここの御夫婦、あの女の子に手を貸すと言うのはどうだろうか?商会が宿と食堂を営んでご夫婦に働いてもらっても良いし、陰ながら援助するのもアリだよね?で、女の子は・・・」
今はシルハと同じ部屋にいる少女の対応をどうすべきか結論が出せなかったロイは、言い淀む。
「成程、流石は我が主。承知しました。全てこのダイヤキングにお任せいただければと思います。ですが商会が陰から力を貸すにしろ商会で働いてもらうにしろ、直接の接触は万屋として行動させて頂ければと考えております。少女の方はこのご夫婦の養子とすれば良いでしょう」
超常的な力で何かをしでかす事は間違いなくできるのだが人の感情の部分も関係する養子についてはそんなに簡単に行くのか?と言う疑問がありながらも代替案が出なかったロイは、今の所は最善だと判断した。
「わかった。夫々の被害者が負担に感じない様にお願いするよ?それと、万屋の行動は過剰にしない様に気を付けてね。フリじゃないからね?」
「承知いたしました!」
珍しく矢継ぎ早にロイを称える方向の案を告げて来なかったと思いながらも、目に見えて不幸な存在を助ける目途がついたと就寝するロイ。
何故この時にダイヤキングがあっさりと引き下がったのかと言うと商会設立および万屋としての行動が許可された部分もあるのだが、ロイの希望としてはこの店の夫婦と少女に援助する事だと告げられてそれ以外には万屋としての若干の行動制限だけを指示されたからであり、曲解すればそれ以外は何をしても良いと許可を得た事になる。
相変わらず詰めが甘いロイと一般常識と言う言葉が辞書に存在していないカードの者達なので、その後この町は激変する事になる。
「皆の者!我が主から行動の許可が出た事は既にご承知の通りだ。残念ながらあのクソガキどもに直接躾をする案は却下されてしまったが、やはり罰は必須であると考えている。その部分も含めて、このダイヤキングが一計を案じだ!」
「「「おぉ!」」」
こうしてロイの意図せぬ方向に事態は進んでいく。




