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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
224/232

(223)そんな神は不要(2)

 この町に始めて来たので新顔と言われればその通りであり、問いかけてきている店の人は雰囲気からそう悪い人なのではないだろうと思っているロイとシルハ。


 質問に対して断る要素は何もないので、店の女性の言葉の続きを待っている。


「この町では豊穣の神が全てに優先されるんだよ。その事は知っているのかい?」


「何となくですが、そのような雰囲気があるとは感じていました」


 ロイは少女が置かれた環境を見て、感じた事をそのまま告げる。


「そうかい。で、アンタ達はその事についてどう思っているのか、正直なところを聞かせてもらえるかい?」


 どのような答えが女性の望む答えなのかは不明だが、特に忖度する必要はないので思ったまま、感じたままを伝えるロイ。


「俺の個人的な見解ですが・・・正直に言って何かを称えるのは悪い事ではないと思いますけど、強要するのは違うと思いますね。誰しもが自分の力ではどうにもならない時に何かに縋りたいと思うのは間違いないですから、そこを否定する事はありませんけど」


 あくまで個人的な感想と言う体で、称えるのは個人の感性に任せるが強要するのは違うと明確に告げる。


 目の前の少女が豊穣の神を称えておらず、それが原因で何らかの不利益を被っていると理解したので強制性を否定する部分はどうしても付け加えておきたかった。


「・・・わかったよ」


 女性の表情は若干和らいだように感じ、更には少女の頭を優しく撫でて去って行ったので回答としては望んだ回答だったのだろうと思っているロイ。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん。私と一緒にいるとこの町にいられなくなるよ?この店のおばちゃんだって、私なんかに手を差し伸べてくれたせいで・・・」


 漸く長い言葉を発してくれた少女なのだが、その内容はどう考えても悪い方向の話しであった事からロイとシルハは互いに視線を合わせて悲しい表情になっている。


 少女の言葉を聞き周囲を見ると広い店内ではあるが客は自分達しかいないのでこの店は恐らく少女と同様に豊穣の神を称えておらず、迫害されている少女側の人物と認識されて周辺の人々から距離を置かれていると判断したロイとシルハ。


「ロイ様。私は少し・・・いいえ、かなり残念な気持ちになってしまいました。折角実り豊かな美しい作物が見られたのですが、一見だけ美しくても中身がこれでは・・・」


「そうですね。豊穣の神を祀るのは良い事だと思うのですが、それを強要するのは無いですね。それもこれだけ露骨になんて、ちょっと信じられませんよ」


 この町の住民が聞けば血相を変えて怒りだす会話で、久しく正面から否定する話など耳にしていなかった少女は驚きからか涙が止まってしまう。


「お待たせ!大した品ではないけどたっぷり食べておくれ!」


 そこに注文した品々が運ばれて来る。


 調理の腕が良さそうなのは理解できるのだが、使用されている材料に難があるのは一目でわかる料理だった。


 ここまで条件が揃えば間違いなくこの店も迫害されているので相当呆れつつも、折角作ってくれた料理なので少女にも半ば強引に勧めつつ食べ始める。


「!?」


 どう見ても不揃いの食材、更には不要な穴・・・想像するに虫食いか傷んだ部分を処理したのだろうが、そのような素材ばかりの料理ながらも予想以上に美味しかった事に驚いてしまうロイとシルハ。


「あの・・・凄く美味しいです。正直俺も自炊していた時期があるのですが、ここまで美味しい食事は作れたことが無いですよ!」


「嬉しい事を言ってくれるね。調理している旦那も喜ぶよ。でも、こっちは商売だから簡単に真似できる様な料理しか作れないと問題だろう?」


 顔見知りの店の女性を含めて会話を始めていたので、少女も少し安心したのか自ら食事を口にして嬉しそうにしているのをさりげなく横目で確認しながら本当に食事を楽しむ事が出来た二人。


「あの・・・このお店って宿もあるのでしょうか?」


 どう見ても宿泊受付用のカウンターも見えるので、昨日宿泊した宿に連泊する気が失せていたロイは問いかける。


「一応やっているけどね。残念ながら客が来ないから使える部屋は数部屋しかないんだよ」


 客が来ない環境で全ての部屋を整備し続けるのは出来なかったらしく、複数の部屋だけ使える状態だと告げる女性。


 ロイとシルハは迫害されている少女を近くの店に誘導した結果この店に辿り着いたのだが、普通の旅人はこの店に入ろうとした時点で周辺の住民から半ば強引に声をかけられ、なんやかんやと口出しされてこの店に入る事を阻害されていた。


 その結果が閑古鳥の鳴いている店兼宿の出来上がりになるのだが、今回はカードの者達が何もせずにこの町唯一の良心と言って良い人物が経営する店に辿り着いている。


 つまり・・・


「流石は我が主!正に町中が肥溜めの中で唯一の光に労せずに、そして迷わずに到達できるなど神と言わずして何と言う!」


 カードの者達の定例会議の場で、全てが偶然なのだがロイが意図的にこの場所に難なく到達できた体で称賛され続けている。


「だがしかし!本来は全ての存在が至高の我が主をお迎えできる体制になっているのが当然であり必然。どうしてくれようか・・・」


 ロイが部屋に到着するので、ダイヤキングはその場で対策について話すつもりでいた。


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