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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(222)そんな神は不要(1)

 シルハとロイも少女の姿を見て手に持っている鉱石は何も価値が無い品だと容易に想像できていたのだが、周囲を囲うようにしている身綺麗な子供達が大声でその少女に対して詰め寄っている事から何方ともなく仲裁に入ろうと動き始める。


「ゴミじゃないもん!お母さんが大切にして私にくれた宝物だもん!!」


 少女はロイやシルハの近接に気づく様子も無く、またちょっかいをかけている側の子供達も気が付いていない様で言い合いが始まっている。


 その様子は嫌でも周辺の大人に把握されているはずなのだが多対一にもかかわらず誰も少女に手を差し伸べる様子や集団の子供を諫める様子が無い事から、この町も一見良さそうに見えても上辺だけなのかと言う気持ちになっているロイ。


 思わず足を止めて、こう呟いてしまう。


「この町も、弱者を追い詰める様な町なのか・・・」


 その呟きを聞きシルハも足を止めてしまい、ロイが元王族で追放された事、その後ハイス子爵家に養子となった事、更にはある程度の期間ハイス子爵家は王家から相当な嫌がらせを受けていた事は聞かずとも知っていたのでそっと優しく背中をさする。


「ロイ様。大丈夫です!一見弱く見えても、実は心が相当強い人も沢山いるのですよ?ロイ様もそうではありませんか!」


 異国出身ではあるがどう考えても自分の詳細を知っているかのような口ぶりなので、素直にその慰めを受けるロイ。


「ありがとうございます、シルハさん。シルハさんも色々ありましたからね」


 色々の詳細は生贄の様な婚姻、貴族の義務とも言える部分しか知らないロイだが、それだけでも相当心の負担になったのだろうとの思いからこう告げていた。


 その間にも少女は周囲の子供達に必死に言い返しつつ大切に鉱石に見える品を抱えているのだが、子供は自制心があまりないので容赦が無い。


「俺の父ちゃん母ちゃんも言っていたぜ?お前の様な豊穣の神を称えないような奴が、鉱石なんて立派な品を持っているわけがないってな!」


「そうそう、だからお前は一人ぼっちになったんだろう?バチが当たったんだよ!!」


 事情はよく分からないが既に少女の両親は居ない様で、そこを容赦なく抉りに来た言葉に何も返せずに悔し涙を流して震えている。


「それに、その鉱石・・・じゃないな。ただの石だけど、お前の父ちゃんが一度店に売りに来たらしいぞ?知ってたか??だけど・・・プププ、唯の石だからって追い返されたんだってよ?」


「「「アハハハハ」」」


 暴言の内容が事実か否かは不明だが、この状況を見る限り・・・そして数少ない会話から情報を得る限りでは、この少女と今はいるのかどうか不明な両親共に豊穣の神を称えない事が原因で迫害されていると判断したロイ。


 ツカツカと少女の方に近づいてしゃがむと、震えている少女と視線を合わせて優しく問いかける。


「俺、旅をしているロイって言うんだ。あっちのお姉ちゃんは旅の仲間のシルハ。それで、君の名前は何かな?」


「おい、よそ者が邪魔をするなよ!」


 どう考えても迫害の対象になっており周辺の大人が諫める事もしていない以上はこの状況は慢性化していると考えるのが妥当で、未熟な少年少女であれば余計に増長する環境が整っていると言える。


 そのせいかロイやシルハが第三者であると理解しつつも露骨に攻撃的な姿勢を崩す事はないのだが、ここでロイが明確に不機嫌になり反論しようものなら子供とは言っても容赦のない制裁がカードの者達から加えられる事は明らかなので雑音を完全に無視して少女に集中するロイ。


 口を開けば感情が溢れ出てしまうのか、少女はあふれる涙を拭いもせずに鉱石に見える品を抱えながら震えて唇をかんでいる。


「ごめんね。お兄ちゃん、君の事が知りたいって思ったんだ。もし大丈夫ならお兄ちゃんと少し一緒にお話しして、お食事もしない?」


「あっ、そこにはお姉ちゃんも混ぜてくださいね?」


 何とかこの少女を元気付けたいと思っているのはロイだけではないので、ロイの意図を酌んで自分もその輪に加わると優しい笑顔で告げるシルハ。


 正直な所自分一人では荷が重いかもしれないと思っていたロイなので、何も告げずに同じような行動をしてくれたシルハに心底感謝している。


 仮にこの場にリーンがいればロイに心配させる原因を作ったその一点だけで事情を聞く事など一切せずに周辺の子供、大人、全てが容赦なく吹き飛ばされていただろう。


 このままこの場にいても周辺の雑音が収まらずに余計に目の前の少女が落ち着けないと分かっているロイは、半ば強引に少女の肩に優しく触れて少しだけ力を入れて誘導する。


「さっ、座って。何が食べたいかな?飲み物でも良いよ?」


「ロイ様・・・えっと、色々と私の方で注文しても宜しいですか?」


 この状態で希望を聞かれても感情が揺れ動いている上に遠慮もあって要望など出ないだろうと考えたシルハがフォローする。


「あっ、そうした方が良さそうですね。お願いできますか?」


 近くの店に多少強引に引き連れて席に着いた後、シルハが少女の為に種類を多めに注文を始める。


「アンタ達・・・見た事が無いね。注文は分かったけど一つ聞いても良いかい?」


 恰幅の良い女性が未だに涙を堪えているように見える少女を悲しそうに見ながら、ロイとシルハに問いかけた。


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