(219)その後(1)
剣として生まれ変わった存在から事情を聞き、ここで漸くカードの者達からも事情を聞いたので全てを理解したロイ。
「そっか。色々と・・・お疲れさまでした。二人?二つ?は一つになっちゃったけど、大丈夫?」
ダイヤキングが褒めて欲しそうな顔をしているのを知りつつ、先ずは結合してしまった二つの自我に関して確認するロイ。
「大丈夫です。寧ろありがたいです。前の体の時も、幾ら自分で動けるとは言っても速度は遅いし一回の移動距離には制限がありましたから、離れ離れになった時にはどうしようと言う不安があったのです!」
「そっか。それなら良かった。ダイヤキングも、皆も、お疲れ様!」
褒めるべきはダイヤキングだけではないので、被害者の状況を確認した後に自らの部隊を労うロイ。
順番がどうだろうが共に労われた者が居ようが関係なく、カードの者達は全員が恍惚の表情をしている。
「じゃあ、全員を町に戻せばお終いかな?」
「いいえ、我が主。魔剣と魔槍が一つの剣として生まれ変わっておりますれば、その対処も必要ではないでしょうか?」
王女ミラーラからは破壊しても構わないと言われているので二つが一つになって姿が変わっても問題ない事はわかるのだが、自我が二つ組み込まれている剣、それもダイヤキングの錬金によって作成された剣なので一般的な剣である訳がないのは理解しているロイ。
相当な切れ味があるのかあり得ない程の強度があるのか、はたまた所持者を回復する能力があるのか、制限なく色々な考えが頭をよぎり、普通に誰かに渡すのは出来ないだろうと判断する。
最も良いのは自分で使う事だがそもそもロイは剣を使えるほどの体力も無ければ技術もないので、仮に所持したとしても飾りになってしまう。
今は旅をしているので移動中は邪魔になる為収納する事になるのだが、剣に宿った二つの自我にしてみれば折角旅をしているのに何も見えないのも可哀そうだな・・・とまで思っている優しいロイ。
悩んでいるロイの姿を見て、連続で褒められる可能性に思い至りダイヤキングがいつも以上の勢いで口を開く。
「我が主!このダイヤキングが一計を案じました!」
「そ、そう?どんな案か聞いても良いかな?」
「もちろんでございます!!」
周囲のカードの者達は黙ってこのやり取りを聞いており、生まれ変わった剣としては今後の自分の行く末がここで決まる為に祈る気持ちで耳を傾けている。
「本来焼却、滅却の予定であった二つの武器ですが、我が主の非常に慈悲深く慈愛溢れる御威光によって自ら生まれ変わる事が出来たのです。従って自我はそのままであり、破壊耐性、自己修復、そして絶対の切れ味を誇っております!」
やっぱりとんでもない能力を加えていたな!と思いつつ、自分の予想していた能力が付与されていなかった部分を思わず聞いてしまう。
「そ、そうなんだ。でも、所持者に対する強化や回復機能は付けなかったの?」
「成程!!御尤も。是非とも必要な能力です。自我に負担がかかりますが、どうなっても良いので我が主のご期待にお応え致しましょう!」
「い、いやいや!大丈夫。止めて!!さらっと自我を痛めるみたいな事を言わないで!!折角所持者との会話も楽しめるのでしょ?普通にしておこうよ?」
「むぅ・・・承知しました。こ奴等は所持者とのみ会話できるようにしておきますので、場合によっては知恵を授けてくれることもあるでしょう」
「そうだね。周囲に余計な会話を聞かれても困るし、普通は武器と話せないからね」
「はい。では続きですが、この新たな剣はランカ王国の王族が引き継げば良いのです。しかし必ずしも王位を持つ者が持つ必要はありませんので、以前の様に一カ所に留め置かれる事も無いでしょう。こ奴等の希望も色々と外の世界を見てみたいと言う事でしたから、その辺りは万屋としてランカ王国に提言するのもありかもしれません」
自分と同じく色々な事を見聞きしたいと言っている二つの自我なので、共感できる部分が多く宝物庫に留め置かれる事は気の毒だと思ったロイはダイヤキングの案を称賛する。
「凄いね。色々と考えてくれているんだ。万屋として提言すれば保管され続ける事も無いよね?帯剣している人が移動する事で色々経験できるし!凄く良い案だよ!」
「おぉ!!ありがとうございます、我が主!!」
過去ここまで手放しでダイヤキングが賞賛された事は・・・魔法を花火として打ち上げた一度しかないので、顕現している周囲の者達もあり得ない程の絶賛に羨ましそうな視線を向けている。
「では我が主。依頼元のミラーラ殿に無事終了した事を報告致しましょう!」
気分の良いダイヤキングがこの場を〆、ロイを運搬するクラブの部隊、足元に潜って護衛しているスペードキング以外はカードに戻り剣も収納袋に入れられている。
「戻りました!」
ギルドに戻ると、事情を聞いているのか不安そうな表情をしている受付に案内されてギルドマスターの執務室に向かうロイ。
「あれ?シルハさんまで待っていたのですか?」
ロイが退室した時と同じメンバーが吉報を待ち望んでいたようで、シルハだけではなくギルドマスターとミラーラもこの場に残っていた。
「待っていたわ。その表情なら上手く行ったのかしら?」




