(216)作戦とは
「我が主。ダイヤキング殿からお話しがあるそうです」
いつものフレーズではあるが今日の話題は間違いなく魔剣と魔槍の話しだと思っているロイなので、過去の得体のしれない不安など無いままダイヤキングを顕現させる。
「我が主のお力で二つの武器の所在、既に明らかになっております。やはりその武器を手にした人物がおり、その人物によって失踪したとされている者達も一カ所に集められておりますが全員今のところは無事である事、ここにご報告いたします」
「そうなの?そこは良かった!!でも、早く助けないと生命力を吸われるんでしょ?」
残念ながらどのように宝物庫から二つの武器が持ち出されたのかまでは流石のジョーカーでも掴めなかったのだが、現時点で重要な情報は手に入れる事が出来ていた。
ロイが最も心配すると容易に想像できる失踪者については無事が確認できており、かなり体力を消耗している状態だが全員の無事を確認している。
二つの武器に呑まれている二人に関してもどうやらさほど生命力を消費している状態ではなく、何故かせっせと恐怖の森の近くに拉致した人物を集めている様だ。
「経緯は不明ですが、今のところは武器を持つ二人もさほど消耗しておりません。ですが我が主が危惧されている通りに現状が維持されるとも思えませんので、早速救出に向かえればと思います!」
「わかった。直ぐに行こうか?」
一刻も早く拉致された人物や武器に呑まれている人物を救出して国民の心配をしている国王、王妃、王女、ギルドマスターに安心してもらいたいので直ぐに動こうとしているロイだが、ダイヤキングは待ったをかける。
「我が主。少々お待ち頂けますでしょうか?何事にも準備は必要でございます。特に今回の件は慎重に行動すべき案件なので、夕刻までお待ちください。間違いなくそこまで時間が経過しても彼等に影響はありません!」
何故そこまで断言できるのかと言う疑問はありながらも切り札とも言えるジョーカー二体が情報収集した結果だと聞いているロイなので、自らは反論する術を持たずに言われた通り夕方まで待つ事にした。
「ですが準備に少々人員が必要になりますので、ハート部隊のトップ3を顕現頂きたくお願い致します!」
状況が状況なのでトップ3の三体に加えて要望されてはいないが間違いなくジョーカーまで顕現して行動するのだろうなと思いつつ、言われた通りに三体顕現させているロイ。
「ありがとうございます。では私も準備の陣頭指揮を直接行いますので、これにて失礼させて頂きます。準備が整い次第クラブの部隊によって現場にお越し頂く事になると思いますので、よろしくお願い致します!」
「わかった。待っているよ!」
クラブの部隊によって移動すると言う事は間違いなく恐怖の森近辺に一気に移動するので、その時の為に少しでも体力を温存すべく横になるロイ。
正直この程度で変わる程の体力を持ち合わせているわけではないが、カードの者達の作戦を知らないので、できる事はしておこうと言う気持ちの表れだ。
その間カードの者達は何をしているのかと言うと・・・ハート部隊のトップ3、ジョーカー1体、ダイヤキングが既に恐怖の森近辺に到着しており、気配を完全に消した状態で呪いの武器を持っている二人と少々離れた場所に集められている拉致された存在を比較的近い場所から直接視認している。
「成程・・・我の相棒の報告の通り、あの武器は自我がありそうですね。その上生命力の吸収は任意に調整できる。一般の人々では抗う術はないでしょうね」
ここに来る前に情報収集の為にジョーカー二体が顕現して動き回っていたのだが作戦実行に二体は不要と判断されて一体はロイの元にカードの状態で待機しており、この現場を発見して情報を得たのはそちらのジョーカーであった為にもう一体のこの場に来ているジョーカーは初めて現場を目にしている。
カードの中でも別格の力を持つ存在の為に初見で他のカードよりも詳細を瞬時に把握し、呟く事でさりげなく情報の展開を行っている。
「それならば作戦を修正せずに済みそうだ。我が主をお待たせするのも不敬である故、早速実行するとしよう!」
ダイヤキングの宣言によってハート部隊のトップ3、ジョーカー、そしてダイヤキング自身も動き出す。
全員が気配を消して行動しているのだが、別格の存在が纏まって動いている以上は違和感を覚える存在もいる訳で・・・自我を持つ武器を持っている二人が突然攻撃を始めた。
―――ドンドン―――
剣と槍を何やら怪しげな雰囲気がする場所に投げつけたのだが、こうなると投げた側のただの人は突然糸が切れたかのように倒れ込む。
自我の有る魔剣と魔槍としては移動速度は遅いながらも第三者の手を借りずに自らを動かせる事から何かあれば倒れている人物の元に行き接触する事で再び完全に乗っ取れるし、攻撃が当たった場合にはその人物を直接乗っ取れば良いと考えている。
仮に攻撃が上手く行かず共、今の状況は魔剣と魔槍を投げた存在が貴重な武器を手放して攻撃してきた所なので、攻撃を受けた側は安全の為にその武器をより遠くに放り投げるか自らが使用するのかは不明だが必ず手に取ると思っている。
その際に弱らせるために生命力をある程度奪い人格も乗っ取れば良いので、一部の漏れの無い完璧な作戦だと自負していた・・・のだが、それは普通の人が相手の場合に限られる事であり、まさか相手が人でもなく獣や魔獣でもなくあり得ない能力によって生み出された特殊な存在であるとは分かるはずがない。
「む?こ奴等、こちらの気配を掴んでいたようだ。生意気な!」
当初の作戦ではハート部隊が一気に聖魔法で武器に宿った自我を浄化させて普通の武器に戻してその間に弱っている人物達をダイヤキングとジョーカーで癒す予定だったのだが、突然攻撃の矛先が向かってきた事に気分を害されたダイヤキング。
ムンズと地面に突き刺さった魔剣と魔槍を掴むと、地中から引きずり出す。




