(214)魔剣と魔槍
状況的に物騒な名前の魔剣やら魔槍やらを宝物庫から運び出せるのは万屋・・・つまりカードの者達しかいないと思っているロイなので、思わず冷や汗をかきながらどのように言い逃れすべきかを考えていた。
スペードキングは今の話しの内容を聞きながらもロイの安全を最優先に考えて行動しているので冷や汗、心拍数、瞳孔の状態を確認するとダイヤキングに報告し、即座に反応があったのでその指示通りに動く。
「我が主。念のためにお伝えいたしますが、今回の二つの武器に関し私達は一切関与しておりません」
密集した状態で陰に潜っているスペードキングに連絡すると周囲の者達に怪しまれるので確認する事も出来ずに焦っていたロイなのだが、ダイヤキングの冷静な分析によって最も欲している回答を得る事ができて安堵している。
カードからロイへの連絡は周囲へ気が付かれる事無く行う事が出来るので、ミラーラやギルドマスター、シルハもロイが誰かから報告を受けているなど分かる訳も無いまま話しが進んでいる。
「ミラーラ王女。それは非常に・・・伝承によれば、二つの武器を手にした人は武器に呑まれて自我を失うとありますが?」
「そうね。私もそう聞いているわ。それに破壊衝動が抑えられずに暴れる上、魔獣・・・いいえ、魔核を破壊して吸収する事で更に力が増すはずよ」
「あの・・・今のお話しは少しだけ理解できましたが、ひょっとして今回の失踪と二つの武器が無くなった事は関連しているのでしょうか?」
頭の回転が相応に早いシルハが今の話しをある程度理解して即思いついた事を問いかけると、ミラーラやギルドマスターは黙り込んでしまう。
どう考えても関連がある事を否定できず、このままでは被害が拡大し続けると想像できてしまったからだ。
突然うつむいていた顔を上げてロイを見ると、ミラーラは懇願する。
「お願い、ロイ!伝承なので確実ではないけれど、あの二つの武器は人を襲っても力を得る事はないの。でも、魔核・・・つまり魔獣を始末する度に力を得るので、何時かは手に負えなくなるわ」
「ミラーラ王女。私が知る限りではそれだけではないですよね?」
結構えぐい能力を持つ武器だなと思っているロイなのだが、ミラーラの説明は不足しているとギルドマスターが追撃する。
「・・・そうね。あの二つの武器は敵に触れず共その生命力を奪えるの」
「それって無敵ではないですか?どの様に対処するのですか?不可能ではありませんか?」
あまりにも異常な武器の話しを聞いてシルハが過剰に反応してしまうが、ミラーラやギルドマスター共にこの問いかけに対して明確に答えるだけの知識を持っていなかった。
「敢えて光明を見出すとすれば、あくまで伝承なので事実とは異なる部分があるのかもしれない所ね」
「・・・えっと、それならばもっとあり得ない能力があるかもしれないって事でしょうか?」
間違いなくその二つの武器に対する対処をお願いされると確信したので思わず口を挟むロイと、言われている事は事実なので今度こそ何も反応できないミラーラ。
「我が主。ジョーカー殿が調査した結果ですが、この短い時間では王城の宝物庫から厳重に保管されていた何らかを失った事しか確認できませんでした。もう少々お待ちいただければ追加の情報をお伝えいたします」
僅かこれだけの時間で王城に忍び込み、恐らくより一層厳重に警備している宝物庫内部の情報を抜いてきたカードの者達に感謝しつつ、今回ばかりは危険な状況に陥りかねないと危惧しているロイ。
「あの武器を厳重に保管する際にも過去に多数の騎士が犠牲になったと聞いているわ。今回の異常状態とも言える振動だって、武器を直接見る事が出来ずに繋がっているはずの鎖の揺れる音を聞いて確認したところ、実際に鎖が大きく揺れていたの。でも、数日様子を見ていたら鎖が緩んでいたの」
まるで凶暴な生物を強制的に捕縛している様だが、間違いなく鎖は引きちぎられて二つの武器はその姿を消していた。
その時点で第三者が鎖を引きちぎって武器を持ち出そうとしていた可能性はゼロではないが、武器をその手中に収めようとした人物が実際に手にするまでの短い時間でも生命力を食らう武器だとの伝承があるので数日鎖が揺れ続けていた事からその線はないだろうと考えているミラーラ。
「それで意を決して確認したら・・・二つとも消えていたのよ!」
民を思い最悪の事態を引き起こして申し訳ないと言う気持ちが前面に出過ぎたのか、懇願するような視線をロイに向けつつも無意識で涙を流してしまっている。
「我が主、続報になります。ジョーカー殿からの報告によれば、例の魔核に内包されている魔力の残渣が宝物庫に残っているようです。この状況を整理すると、恐らくあの魔核の影響を受けた武器が暴走したのではないかとの事です」
徐々に明らかになってくる原因だが経緯はともあれ自分がしでかした事だと認識したロイなので、多少の危険は覚悟のうえで対処しなくてはならないと腹を決める。
「わかりました。こちらから万屋に願い、何とか対処してもらうようにします。今の情報では相当危険な武器のようですので、元の状態で手に入れるのは難しいかもしれません。最悪は完全に破壊しても良いでしょうか?」
願いを万屋に告げる前に結論の一つを述べており、あたかも自らが関与すると言っている内容になっているが、事態が事態なのでロイが万屋に願う前に先読みして各種状況を検討してくれたのだと捉えているミラーラやギルドマスター。
「それでお願いするわ。あんな武器、元から不要だったのよ。視認できる位置にあると生命力が吸われるとの伝承なので破壊も出来ずに困っていたの。申し訳ないけど貴方の、貴方の事を守護している万屋に縋るほかないの。お願いするわ」
「わかりました。色々準備等があるので今日はこれで失礼しますね」




