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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
212/234

(211)恋愛事情が分からない(2)

 クィーンの四人は全員が同じ顔ながらも、チョーカーにダイヤ部隊特性の識別可能なペンダントをつけているので間違える事はない。


「「「「召喚有難うございます、ご主人様」」」」


「そんなにかしこまらないでよ。楽しくしたいから、三時間・・・正直ちょっと長いけど、シルハさんが来るまで宜しくね?」


 万屋の守護があるのは公知になっているが、あまりにもあからさま過ぎるのでシルハにこの状況を見せる訳にはいかず彼女が到着前に撤収する必要がある為に、共に過ごせるのはシルハ到着予定時間の三時間程度だと告げているロイ。


 クィーン達にしてみれば至高の時間がたったの(・・・・)三時間と思っているのだが、ロイの言葉を否定する事なく笑顔で自らが取り出した椅子に丁寧に座る。


 ロイから良い目で見られたいと言う気持ちはカード部隊の共通の認識の為、顕現の機会を得た四人は何処の貴族かと思う程に美しい所作と優しい微笑でロイと談笑する。


 会話の流れも楽しくそしてロイの負担にならない事をこれ以上ない程に熟考しているのだがその能力の高さからか態度には全く現れていないので、ロイはクィーン達がある程度配慮している事は理解しつつも、あり得ない程の選択肢の中から一瞬で最善の一手を選択している事までは分かり得ない。


「でね、今回はシルハさんがこの森に侵入して俺の手助けをしてくれる形をとるんだ。シルハさんは俺の助けになりたいと思ってくれているし俺と仲良くなりたいと思ってくれているから、一緒に行動する事で満たされるんだって。ダイヤキングも凄いよね」


 人としての常識などあろうはずもないダイヤキングの案なので恐怖の森と呼ばれているこの場所に元貴族令嬢が一人単独で侵入する時点であり得ないのだが、勝負の核となる魔核はロイのいる場所から少し離れた位置に無造作に設置されている。


 無造作に設置しているが既に破壊している魔石(・・)以上に周囲の魔力を吸収しているので、異常状態によって森の外側に追い出されるように生息地を変更していた獣や魔獣の勢いは一旦収まる。


「ではご主人様。宜しければ私ダイヤクィーンがマッサージをさせていただきます」


「「「私にも、その栄誉を賜りたく!!」」」


 ダイヤクィーンがこれ以上ない程に有益な事を言い始めたので、乗り遅れては堪らないとばかりに淑女らしい態度すら忘れて身を乗り出している他の面々。


「え?そう??大変じゃない??」


「「「「そんな事は有りません!!」」」」


 この時点で一時間ほど経過しただろうか、会話の中身は調整しているがロイとの談笑は内容如何に係わらず至福の時なので幸せを感じつつも、それ以上に直接触れられるチャンスを逃してはならないとばかりに少々血走った眼をしている。


「じゃあ、折角だからお願いしようかな・・・」


 若干引いてしまったロイだが過去にハート部隊にマッサージをしてもらった時には変な声が抑えきれない程至上の一時だった事を思い出し、やはり一般常識から大きく乖離しているので“恐怖の森”の中で平然と微睡の世界に突入する。


 両手両足を四人に優しくマッサージされているので瞬間に意識が飛んで寝息を立て始めるロイと、その姿を見てはち切れんばかりの笑顔でマッサージを続けている四人のクィーン達。


「これ以上ない程の至福の一時です。この記憶を絶対に忘れないようにしましょう!」


 かなり小声ながらも四人で似通った内容の言葉を発しており、互いに否定する要素など何一つないので至近距離でロイの寝顔を見ながらロイに触れられる経験を満喫している。


 いくらカードの者達の能力が突出していると言ってもロイとの至福の時間は得難い経験なので完全に没頭しており、森の入り口でギルドマスターやフラーラ王女と揉めた後にシルハが侵入してくるのにも気が付かなかった。


 周辺の警戒をしているスペードキングはカードの者達からの通信や自らの力で状況を把握しているのだが、あまりにもクィーン達が幸せそうな表情をしている上にその理由も理解している事から極限まで至福の時間を引き延ばそうとした結果、直前での連絡になる。


「クィーンの方々、そろそろダイヤキング殿の作戦の通りにシルハ殿が到着される。急ぎ椅子や机を収納の上で撤収をお願いする」


 ロイの意識が無くともカードに戻る事は出来るので、指示された通りに即撤収しているクィーン達。


 その後程なくして、シルハがロイの前に現れる。


「ロイ様!勝負の途中で申し訳ありません」


 どう考えても恐怖の森の中に単独で侵入出来る強さを持っていないシルハだがスペードテンによって安全にこの場所に到達する事が出来ているし、その事実をロイも理解しているので通常ではあり得ない会話がなされている。


「いやいや、丁度退屈していたので話し相手が欲しいと思っていました!」


 シルハとしては万屋の作戦は極限状態で互いに仲を深められる所謂“吊り橋効果”を狙っているのかもしれないと考えており、一方のロイやダイヤキングとしては周囲に邪魔な存在がいない場所であれば本心から会話が出来るので友人(・・)として仲を深められると考えていた。


 互いに意識のずれがあるままに普通(・・)の会話が続き、危険な状態にいると認識していないロイに吊り橋効果が表れる訳も無く日が暮れてしまう。


「シルハさんと楽しく話しが出来たおかげで時間があっという間に過ぎましたよ!じゃあ、戻りましょうか?」


 本心から言えば消化不良ではあるが二人で楽しく過ごせたことは間違いないので満足できたシルハはロイと共にギルドマスター達が待っている森の入り口に戻ると、とっくにミラーラ王女の護衛である眼鏡の男は戻っており、ロイが魔核を持っていない事を確認したギルドマスターが引き分けを宣言した。


「これは、引き分けだな」


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