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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(207)伝説の魔獣とは

 恐怖の森と言う不名誉な名前を付けられてしまった森で生活していた、とある魔獣。


 周辺一帯の生態系の頂点に立っている存在だが非常に温厚で自ら攻撃する様な事は無く、だからと言って侮られて攻撃を受けるような事も無い。


 何故自分の様な存在が生まれているのか等わかる訳も無いのだが、間違いなくこの周辺には膨大な魔力が溢れ出ているのでその影響を大きく受けて上位種の魔獣として生活していくうちに変異種となり別格の存在になったのだろうと思っている。


 森自体の大きさも相当であった事からその巨体をゆっくりと休める広さの平原も存在しておりそこで平穏な生活を送っているのだが、魔力によって様々な物、者が影響を受ける可能性については理解しつつもこれまで特段大きな問題が起きていないので、今日ものんびりと昼寝をしている。


 見た目は巨大な馬のように見えなくもないのだが、その巨体を覆うように魔力が渦巻いているので姿をしっかりと認識する事は出来ない。


 この魔獣が肌で感じている大地から溢れ出ている魔力自体に淀みが無い事から、この魔力によって影響を受けた存在は格が上がる変異は有れど自我を失うような事態にはならないと言う確信めいた気持ちを持っていた。


 確かに自我を失うような事は今の所なかったのだが、逆に言えば元より攻撃的な存在であれば格が上がってもその性格は引き継がれる事を意味する。


 その様な存在が自らの存在があり得ない程に上昇するとどうなるかは明らかで、周辺の頂点に立とうとするのは必然だ。


 森の中央部分の開けた平原に何時も寝そべっている存在が最強なのは誰しもが認めるところだが永遠にその座に居座られては自分達が頂点に成れないと言った気持ちが芽生えており、同格の存在と共闘を企む魔獣や同格の存在を打ち負かして自らの力として手に入れる魔獣が現れ始める。


 直接最強の魔獣に対して何かをするわけではないのでいつもの通りに平原で眠っている魔獣だが、そこを中心として少々距離が離れた場所では苛烈な争いが日々繰り広げられるようになっている。


 まるでサバイバルゲームの様に勢力図が毎日塗り替わり各エリアの頂点に立つ存在も日々入れ替わっている中で、森にも徐々に変化が起きる。


 変異種の死骸を吸収した大地、それも戦闘によって少なくない怨念を残しながら死亡した大量の変異種を吸収した大地がどうなるのかと言うと、今までも大地に収まらない魔力が地上に湧き出ていたのだがその魔力に淀みが生じ始める。


 淀みの魔力の影響を受けると自我を失う場合が多く出てくる為に更に場は混沌としてくるのだが、例え凶暴化して自我を失った存在でも中央部分に鎮座している絶対的な存在の脅威を本能によって判断しているのか攻撃をする素振りは見せていない。


 この状態が続くと溢れ出る魔力は淀んだ魔力だけになり、その影響を受けた変異種は凶暴化された存在だけが発生し・・・と悪循環に入る。


 流石にここまでくれば異常状態に気が付く森の頂点の存在だが解決に至るだけの知識が無く、どうすれば良いのか分からないまま時間だけが無駄に過ぎて行く。


 大概寝て過ごしていたこの頂点の魔獣だが一応この平原を自らのエリアと認識しているのかある程度の防御魔法を構築しており、更に最強の変異種であった事から淀んだ魔力の影響は受けていない。


 しかしこのままでは近い将来この場でゆっくりと休む事が出来なくなると考えたのか防御魔法を取り去った上で淀んだ魔力を一旦自分が全て吸収し、その後に周辺に多数存在する様になっていた凶暴化した魔獣を排除しようと動き出す。


 あり得ない程に長時間ノンビリと過ごしていた魔獣故に周辺の異常に気が付き始めてからも相当ノンビリして初動が致命的に遅れた結果、人族時間で言えば数百年は放置してしまっていた為に、実はこの魔獣一体ではどう考えても受けきれない淀んだ魔力が溢れ出る森になっていた。


 人族の伝承になっている伝説の魔獣の話しは恐らくまだ淀んだ魔力が噴出していない頃に人族がこの森の奥に侵入し、中央部分の平原に穏やかに眠っている巨大な存在を見て語り続けていた所から来ているのだろう。


 こうしてこの森を一旦リセットするべく行動を始めた魔獣なのだが、行動としては周囲の防御魔法を取り払っただけで今迄の様に中央部分で動く事無くのんびりと過ごしつつ魔力を吸収していた。


 どの程度時間が経過したのかは不明だが、過去同様に殆ど動く事無く魔力を吸収しながら生活していた魔獣はやがてその意識が微睡の中で消えて行く。


 最早この魔獣単体で吸収できない量の淀んだ魔力が排出されるようになっていた森なので、魔獣の体を侵食していた。


 既に変異種である事から凶暴化や更なる進化は無かったのだが淀んだ魔力はその肉体を魔獣自身が気付かない内に侵食し、やがて心臓とも言える魔核だけを残してその体は全て朽ち果ててしまう。


 残ったのが未だに魔力を吸収し続けている巨大な魔核なのだが吸収しきれずに淀んだ魔力は溢れ続けており、周辺の魔獣を排除する前に自らが排除されてしまい人族の中では恐怖の森の名にふさわしい環境が出来上がる。


 ここまでの状態になってしまうと淀んだ魔力を一掃する為には癒しの魔法である光魔法か聖魔法が必要になるのだが、淀み具合と魔力の量を考慮すると光魔法では全く歯が立たずに終わるだろう。


 そして今、長くこの地を現状維持するべく鎮座していた魔獣の魔核は事情を知る訳も無いジョーカーによって容赦なく持ち去られ、今は周囲の魔力を吸収しきれなくなってヒビが大きくなっている代替品の魔石が間もなく破壊してしまうのか微振動している。


―――パキン―――


 丁度ロイ一行が恐怖の森入り口に到着して休憩を始めた時、ついに魔石は周囲の魔力に耐える事が出来ずに粉々になってしまい内包した魔力量が多かったせいか粉々になって周囲に舞い散り痕跡すらなくなる。


 結果ロイが魔核を持ち帰って眼鏡の護衛が魔石を持ち帰る事態は何をどうしても起こり得なくなったのだが、より一層周囲に魔力が漂い始めてしまい・・・その領域は魔核があった場所、代替として魔石を置いた場所を中心に急激に広がり始めていた。


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