(204)決闘へ(2)
ここまで決まり立会人のギルドマスターの宣言も有った事から中止にはできず、ミラーラは少々不安な表情をしながら態度が一切変わらないロイにこう告げてギルドから消えて行った。
「貴方はこの国の民ではないから知らないでしょうが、あの森はその名の通り恐怖の対象なのよ?散歩に行くかのような態度だけど、絶対に後悔するわ!」
自らが提案したくせに・・・と思わなくもない発言を受け、その後は依頼を受ける様な気持ちになれずに一日中適当に町を散策して過ごしたロイとシルハ。
「我が主。あの童女、どの様に料理するべきでしょうか?もしよろしければこのダイヤキングの方で適切に調理して御覧に入れますが?」
「いやいや、なんだか本当に調理しそうだから止めて!それにこうなったのも俺の失言が原因でもあるから、過剰に反応するのは禁止!わかった?本当に頼むよ?」
「・・・承知しました」
あの場では命令故にぐっと堪えていたので夜に顕現してもらった直後に復讐せんとばかりに熱く語ったダイヤキングは、再びロイの一言で轟沈していた。
「でもさ?本当にそんな場所が存在するのかな?」
「ございます。こちらがその魔核になります」
「・・・え!?もう持ってきちゃったの?動いたのはジョーカーかな?」
ロイの目の前に出されているのは確かに今迄ギルド職員として働いていた時には見た事も無い様な大きさの魔核があり、明らかに魔力も相当量籠められているのが見て取れる。
「えっと、なんだか結構な品だけどさ?そんな物を持って来て何か問題になるんじゃないの?まだまだ周囲の魔力を吸収できそうだから、それが無くなると大気中の魔力が異常に濃くなって変異種やらなんやらが発生した結果、過去にない程の異常状態にならない?」
「確かに我が主の仰る通りに何もしなければそうなるでしょう。ですが我らダイヤ部隊が指揮を執った結果が不具合を起こす事など、有ってはなりませんし有り得ません!」
今まで散々不具合しか起きなかったのにな・・・と言う言葉は飲み込んで、ダイヤキングが具体的な内容を話すまで黙っているロイ。
「同じ大きさの鉱石を同じ場所に設置して暫し観察したところ、順調に魔力を吸収して魔石になりましたので問題はありません!」
今回のこの行動もダイヤキング達にしてみれば数少ない真面な動きだと納得のロイなのだが、勝負を決める品は今手元に来てしまっており以降の流れをどうするべきなのか悩み始める。
ダイヤキングが言っていた通りに代替品があるのであればその品を持ち帰るのもアリと考えられるのだが、その場合は更に代替品を設置する必要がある。
ロイは勝負を決する為の品を持っているのでそこまで考慮する必要はないが、ミラーラの護衛である眼鏡君が仮設置した魔石になりたての品を持ち帰った場合には今後の対応をしなくてはならないと判断した。
「じゃぁ・・・」
「では、今後の対応はこのダイヤキングに一任頂きたく!何卒!!」
話しをしようとした瞬間に熱く語られてしまい、直前に説明を受けた行動がロイにしてみれば常識の範囲内だった事、そもそも王族とこれ以上絡んで無駄に嫌な思いをしたくないし余計な事に労力を使うのも嫌だと思ってしまったロイは一任してしまう。
「わかった。一応誰も怪我をしない様に、その後も現状維持できるような案で頼むよ?」
「おぉ、ありがとうございます。このダイヤキング、必ずや我が主の熱い期待に応えて御覧に入れます!」
過去にダイヤキングに対して熱い期待などした事は無いはずなのだが?と思いつつも、精神的に疲れたのでもう寝ようとモソモソと布団に潜り込んだロイ。
この状況はカードの者隊による会議が開催される流れなので、本当に熱い時間が流れる。
「そもそも、我が主自らあのような場所まで移動される事自体が納得できん!」
「確かに!ダイヤキング殿に全面的に同意する。それに加えてあの童女には厳しい罰を与えてやりたい所だが、我が主の慈愛溢れるご命令によって怪我の一つも許容できない状況である今、万屋として何が出来るのか!」
「そうだ!我が主の移動に関しては、主が移動するのではなく森の方を移動すれば良いではなかろうか!ジョーカー殿は盗賊共を二部隊所有していたはず。その者共を使ってなんちゃらとか言う森をこの町の近くまで運搬させてはどうだろうか?」
「ハードキング殿。ロイ様に無駄に御足労頂くのは我も思う所がありますが、残念ながら我が所有している人族の集団程度では森を移動する力を持っておりませんよ?」
カードの者達の力基準で会話がなされているので、冷静なジョーカーがロイの護衛任務の為に茶番を仕込んだ盗賊崩れとフラウを襲う為に雇われた盗賊崩れ達全員それ程の力を持っていないと告げる。
「むぅ、軟弱な。今から鍛えて・・・は間に合わんか。ならばどうするか?我らにとってその程度は造作もないが、そこまで介入しては我が主から褒めてはもらえないだろう。そこは何としても防ぎたい所だ」
「我が思うに、ロイ様は万屋としての行動はあまり積極的にしてほしくないのではと思っています。もちろん今回は万屋として行動しますが、その力を直接的に行使するのはハートキング殿が指摘されている通りに称賛の対象にはならないでしょう」
過去に何度かロイから称賛された経験があり、あの表現できない極上の感情を再び味わいたいがために何とかロイの意向を酌んで作戦を成功させたいと必死に頭を使っているカードの者達。
「ふふふ、やはりこのダイヤキングの出番のようだ!我が極上の一計を説明させて頂こう!」
会話の流れから・・・如何に今回の勝負に勝つかは当然だが、更にロイになるべく余計な負担をかけない方向に話しが進み、幸か不幸かミラーラの罰についての話題は消滅した。




