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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
204/232

(203)決闘へ(1)

 相手が王女と名乗っているのに、ギルド職員としての経験を活かしきれずに少々余計な事を言ってしまい決闘する羽目になったロイ。


 自分の失言がきっかけになっているので止むなし!と言う気持ちで受けたのだが、その宣言を聞いた王女ミラーラは勝ち誇った表情で綺麗な金髪を敢えてかき上げながらこう告げる。


「そう。当然ね?もちろん私が直接魔核を取るような事はしないわ。貴方は私の護衛の存在に気が付いている上で“まだまだ”と言い放ったのですから、私の護衛がお相手をするのは当たり前よ?」


―――バサッ―――


 ミラーラの言葉が終わると外套を取るような音がして、その直後にロイが伝えていた通りに眼鏡をかけた神経質そうな男が突然姿を現した。


 周囲の経験豊かな冒険者やギルドマスターもある程度護衛の強さを肌で感じているのか少々厳しい表情になっているが、そのような気配を感じる能力すらないので平然としているロイ。


「はい。そうですね。それで良いですよ」


 普通に肯定の意を示す事が出来るのも相手の強さを認識できるだけの技量が無いからなのだが、この態度もミラーラの癪に触っているようだ。


「王女。それでは正式な決闘と言う事でギルドマスターである私の方で取り仕切らせて頂きますが、宜しいですか?」


 少しだけ怯えながらも中立として公平に仕切れるのは自分しかいないし、万屋が暴れた際には何とかロイに謝罪して制御してもらおうと考えているギルドマスター。


「良いわよ。じゃあ、貴方の方から詳しく説明して」


「承知しました」


 曰く、今までロイはシルハの実力の関係で低レベルの依頼しか受けていないので情報を持っていないのかもしれないが高レベルの依頼が密集している地域があり、その更に奥、かなり危険と言われている場所に恐怖の森と呼ばれている場所が存在している。


 その領域に踏み込める冒険者はこの町にはおらずにそもそもギルドでも進入禁止としているのだが、過去の伝承から伝説の魔獣の体が朽ちてて心臓とも言える魔核だけが残り、周囲の魔力を吸収し続けていると言われていた。


「へ~、凄いですね。過去の事象・・・伝説に触れる事が出来るなんて中々できる経験ではないですからね。歴史を肌で感じる事が出来る。興味がそそられますよね?」


 具体的な説明を聞いて本当にそのような魔核があるのかどうかは別にして、事実恐怖の森が存在してその周辺の魔力が非常に高い事は知られていると説明を受けたのでがぜん興味が湧いてしまったロイ。


「あれ?であれば、何か処理をしないと変異種が生まれてしまいませんか?それとも大量の魔石が存在していて継続的に魔力を吸い取っているのですかね?」


 職員時代の知識によって状況を把握し、疑問が口に出てしまう。


「確かに魔力に当てられていると獣や魔獣が変異し易いのは一般常識だ。だから魔石になる可能性の高い鉱石を複数設置して危険を未然に防いだ上で魔石を手に入れているのだが、あの場所はそんな事が出来る場所じゃないからどうなっているのかは全く分からない。そもそも基本的には進入禁止だからな」


「ふふん。怖気づいたのかしら?今なら心からの謝罪で許してあげない事も無いわよ?」


 単純な疑問を口にしただけなのだが、ギルドマスターの回答を聞いて再び何かを考えているようなしぐさをしているロイを見て強気になるミラーラ。


「あっ、大丈夫ですよ。ですが今のお話しですと魔核が無い可能性もあるのですよね?あくまで伝承による存在の認知ですから。その場合はどうしますか?」


「・・・本当に良いのね?私が温情をかけるのも今が最後よ?」


 恐怖の森には何人も侵入を禁ずべしと言う家訓があるので、実は本心では自分の護衛も侵入させたくないミラーラは引くに引けない状況ながらもこの場でロイから中止を宣言させれば問題ないと思い必要以上に無駄に念を押すのだが、ロイには通用しない。


「大丈夫ですよ。で、魔核が無かった場合はどうしますか?」


 思惑が外れてしまったので、自分から決闘を口にした以上はこのまま突き進むしかないと考えているミラーラはロイの疑問に対してしばらく考え込む。


「そうね。それならばこうしましょう。朝から夕刻まであの森に侵入するの。滞在だけでも相当危険と言われているのだから、魔核を持ち帰れば間違いなく勝利。互いが見つけられずにいた場合は引き分け。でも、夕刻まで無事にいる事が条件よ?」


「そうですか、わかりました。互いに怪我をしないように頑張りましょうね?」


 随分と余裕を取り戻しているロイと逆に今更ながら自分の護衛が危険に晒されると言う不安に襲われているミラーラなので、引くに引けないが最後の賭けと思いミラーラはシルハに声をかける。


「あ、貴方は相棒が危険な場所に行っても問題ないのかしら?」


「はい、大丈夫です。ロイ様は別格の存在ですから、何も問題はありませんしトラブルも起きません!ですよね、ロイ様?」


「ありがとうございます。シルハさんの期待通り、無事に・・・もし発見できれば魔核も持ち帰りますよ?楽しみにしていてください!」


「では双方条件を理解した様なので、ギルドマスターである私が取り仕切ります。明朝から決闘を開始しましょう。恐怖の森入り口に日の出頃に集合。そもそもその場所に来られないようでは決闘の資格なしと判断する!」


 周囲は決闘の結果を直接見届けたいと思っているのだが、あの森の入り口に到着するにも相当危険が伴うので本当に一部の者とギルドマスターだけが向かう事になっていた。


「じゃあ明日の依頼は受けられないのでゆっくりしていてくださいね、シルハさん。できるだけ早く帰りますから」


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