(202)国王と王妃は良かったが
ギルドに到着した直後にギルドマスターに呼ばれ、そこで出会ったのはロイとの接触を望んでいたランカ王国の王妃ゼレンラ。
あの態度、引き際、どれをとっても面倒事を起こす様な王妃ではなく、また国王も過剰な要求を告げたわけではなく単純にお礼を伝えたいと言われていたので、この国の王族は素晴らしい人物なのだな・・・と勝手に想像していたロイ。
だからと言って積極的にかかわりたいかと言われると否なのだが、そんな気持ちが一瞬で吹き飛ぶことになる。
「私はランカ王国の第一王女ミラーラよ!お母様がお父様のお使いでギルドに出向いたと聞いていたけれど、何で貴方の様な冴えない人物と会っていたのかしら?不思議で仕方がないわ。お母様に聞くわけにはいかないので教えてくださる?」
ここで具体的にキノコの説明をしようものなら初見ながらこの性格では過剰な要求をしてくる可能性が高いと思っているので濁す事にして、即座にこの場から去ろうと考えているロイ。
このまま苛烈な発言をされては、例え自分と同じ年齢に見える女性と言っても容赦のない制裁がカードの者達から加えられる事は間違いないからだ。
「ロイ様?」
隣にいるシルハが少々不安な表情をしているので、さっさと事を済ませて日常を取り戻すべく明確に拒絶しつつも内容はあいまいに告げる。
「あの、俺にも良く分かりませんでした。じゃあ失礼しますね?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!そんな事で引き下がるわけがないでしょう?あのお母様が態々こんな場所に単独で来るなんて一大事なのよ?貴方は事の重大さを分かっていないようね?」
「はぁ~。何でこうなるかなぁ」
一人で来る事が一大事と言われても自分はこの国、ランカ王国の国民ではないので知った事ではないし知る必要も無いので思わず呆れて露骨にため息が漏れてしまうロイ。
「あ、貴方!不敬よ!!今すぐ謝罪しなさい!!」
徐々に状況は悪化しており、このままでは本当に目の前の女性は厳しい罰を受けかねないと危惧したロイなので親切心から独り言のようにカードの者達に明確に指示を出す。
「絶対に余計な事はしない様に!」
カードの者からすればロイの意図は分かり本当に悔しそうにしながらも命令を無視するわけにはいかずに大人しくしているのだが、第一王女ミラーラにしてみればロイのこのセリフは謝罪と言う行為を余計な事と言い切り、隣にいるシルハに対して指示をしていると受け取れる。
「あ・・・貴方。本当に不敬罪でしょっ引くわよ?王女だからって甘く見ているのかしら?確かに屈強な冒険者と比較すると強さは劣るわよ。でも、立場上それなりの者が護衛任務に就いているのよ?」
「あぁ、王女の横にいる眼鏡君ですね。確かに相当な手練れのようですが、道具に頼っている様ではまだまだですね」
あの母からこの娘か・・・と思いながらも、今日は朝から依頼も受けられないし余計な出来事が多すぎると少しだけ機嫌が悪くなっているロイは、スペードキングから得た情報の一部を敢えて開示する。
「な、そこまで??」
ロイと同じくミラーラに近接しているシルハでさえ護衛の存在は全く認識できていないし、王宮にいる高い戦闘能力を持っている近衛騎士ですら看破できた事が無いので驚愕してしまうミラーラ。
「何か不思議な力・・・いいえ、鑑定魔法でも持っているのかしら?でもソシケ王国のハイス子爵家は収納の魔法で有名だったはず。貴方、何者なの?」
あれほどロイの事を冴えない人物とこき下ろしていたのだが、一応ロイに関する情報はある程度持っているようだ。
「今ご自分で口にしていた通り、ソシケ王国のハイス子爵家の一人ですよ。じゃあ行きましょうか、シルハさん?」
「待ちなさいって言っているでしょう?わかったわ。お母様が何をしに来たのかは聞かない。でも、私の護衛を見下すのはやめてもらおうかしら?」
「えっと、どこに見下した要素があ・・・」
「まだまだ!と言ったでしょう!!」
確かに少しイライラしていたので余計な装飾をつけてしまったと思い出したロイなので、ここまでくると今日は依頼を受けられないかもしれないと残念な気持ちになる。
「私、ランカ王国第一王女ミラーラは貴方に決闘を申し込むわ!決闘の内容はあの恐怖の森に存在していると言われている魔核を手にする事よ!」
流石にこれだけ騒ぎになるとギルドマスターもこの場に来ており、流石にまずいと介入する。
「王女。私の口からも王妃殿下のお話しの内容は申せません。申し訳ありません。ですがロイ殿に感謝している事だけは間違いありませんので、決闘などお止め下さい。ご存じの通りにロイ殿には万屋が付いているのですよ?」
「そのような事を言えば引っ込むと思っているのかしら?あり得ない噂に尾ひれがついているだけの万屋。そんな存在に怯えて背中を見せる私じゃないわ!」
実際に直前まで話していたが・・・と言って良いのか分からずにオロオロしてしまうギルドマスター。
この短い時間でこの王女に関する性格をある程度把握し、過去冒険者と長く接した経験からも最早何を言ってもダメだし自分も余計な一言を口にしてしまった反省があるので、申し出を受ける事にしたロイ。
「わかりました。その決闘、受けましょう!」




