(1)能力①
ロイは国王バレントの何人目かの息子かは不明だが、一応王家の血を継ぐ人物としてこの世に生を受けて王城で生活をしている。
「ロイ。いよいよお前も能力を判定する時がやって来た。我が国の発展のため、当然王族として有用な能力が発現していなくてはならない。ないとは思うが、無能と判断された場合にどうなるのかは分かるだろう?」
ソシケ王国の何代前の国王による命令なのかは不明だが、その当時から一連の流れとして定着している儀式が行われようとしている。
国家平定の為に全ての国民に対して行われている作業なのでどの様な状態であろうが全ての子供に例外なく能力の確認が行われており、王族であるロイも例外ではない。
その理由は、国家に有益な力を持っている存在を手中に収めるか首輪をつける事で脅威とさせずに益になる人材として管理する為だが、王族であるロイに関して言えば管理する側の立場に相応しい能力を持っているのかを確認するべく実施される。
国王であり父であるバレントの言葉は仮に能力なしであればただでは済まないと明確に言っているのだが、全てを把握しているわけではないながらも実際に能力なしと判定された兄やら姉やらをその後王城で一切見かけなくなっている事から、どう考えても明るい未来が待っているわけではない事は理解できている。
能力の発現は基本的に10歳までの若い内に起こり、ある程度年齢が経過して能力が無い人は一生能力が無いままになるのが一般的だ。
「では、ロイ様。僭越ながら鑑定させて頂きます」
一般人が能力を持つことは稀で、その能力の中でも戦闘系で力になりそうな能力の他に収納の能力者も非常に有用と考えられている。
あまりにも貴重なので能力を伸ばして積極的に国家の益になって貰えるように立場が激変するのも、能力者の特権と言える。
当然王族であるロイに対しては戦闘系統の能力か収納の能力が期待されているので、鑑定を行っている姿を穴が開く程父である国王から見られている。
「こ、これは!!陛下、お喜びください。ロイ様は収納の能力をお持ちである事が確認されました。ロイ様、今迄何か突然何もしないのに目の前からモノが消えたり、頭の中に保管されているリストが出てきたりした経験はございませんか?」
ロイを鑑定していた人物が国王バレントとロイに対して王族として必要な能力が備わっていた事実を告げるとともに、能力発動の兆候があったのかを確認している。
ロイは言われたような経験が一切なく素直に答えつつも、父親である国王の表情が安堵の表情に変わった事から自分自身も安心している。
「ありません」
能力に目覚めて間もなければ収納に関する何らかの経験が無いのは当然なので、特段態度が変わらずに説明を続けている鑑定を行った男。
「そうですか。繰り返しになりますが、ロイ様は非常に貴重な能力持ちである事が確認されました。この世界には収納の能力を持つ者は殆どおりませんので、戦闘系ではないながらも非常に有用です」
「ロイ、よくやった」
「ありがとうございます、陛下」
父親からもねぎらいの言葉をかけられた為に、口では実際に能力が無ければどうなるか分からないと脅しをかけられてはいたのだが、やはり血の繋がりがある父親なので自分の事を心配してくれていたのだと喜んでいるロイ。
その後は、収納の能力が使えるようになればどのような事が出来るのか・・・いくつかの説明を受けた後に自室に戻るロイ。
「は~、安心したぁ。これで何も能力が無ければ、父上の立場を考えると厳しい処遇があったのだろうなぁ」
自分では知る由も無いが、国王ともなれば幾ら息子とは言っても臣下に対して厳しい姿勢を誇示しなくてはならない場面もあるはずだと勝手に想像しているロイ。
このような事を考えられるのも、自分に能力があると判定されて今の生活が保障された事で余裕が生まれたからだろう。
「それにしても収納か。血生臭い環境に行く可能性が高い戦闘系の能力ではなかった事は正直ありがたいかな」
争いを好まない優しい性格故か希望していた通りの能力を得る事が出来て自室で安堵しつつも、早く能力を使いこなせるように何もない空間に巨大な箱があるイメージを持ちながら適当な品を収納する動きをしている。
能力を持っていない、又は能力が発動できていなければ何もない空間に何らかの品を必死に仕舞おうとしている怪しい人物の出来上がりだが、ここはロイの個室なので第三者の目に触れる事はない。
そうこうしている内に数か月が経過し、ロイの弟や妹に一部能力がある事が判明すると同時に能力なしと判明した者達は王城から人知れず姿を消していた。
「ロイ・・・どうだ?」
明確に能力がない王族が消えて行く王城なので、ロイは自らの能力を発動できない状況に焦りを感じ始めている。
最近では毎日のように父であり国王でもあるバレントがロイの部屋に訪問し、能力が発動したのかを問いかけてくるのも余計なストレスになっている。
「も、申し訳ありません。今日もまだ発動に至っておりません」
「・・・そうか」
このやり取りも定例句になり始めており徐々に雲行きが怪しくなっている事を肌で感じているロイは一刻も早く能力が発動できるように日々必死に修練しているのだが、結果は未だに出ていない。
そして、ついにその日はやってくる。
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