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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(18)旅立ち

 よもや頭脳集団のトップであるダイヤキングが、平然とシン()ロイ商会などと言う訳の分からない名前をつけるとは思ってもいなかったロイ。


 姉であるリーンの言っていたロイを崇めているような名前なのではなく、確実に崇めているのだと理解しているのはロイだけ。


 得体のしれない疲労感に襲われつつも、翌日ギルドに出勤する。


「おい、ロイ!聞いたか?あの商会の集合店舗が出来上がったようだが、その名前がシン()ロイ商会だってよ。お前と似た名前だから間もなくご利益があるかもな?」


「グッ・・・そ、そうだね。そうなると良いね」


 真実を知らない同僚は気軽にこう言っているが、ロイとしてはどこから真実に辿り着く者がいるかもしれないと気が気ではないので笑顔は少々ひきつっている。


 その後徐々に冒険者達がギルドに訪れるが、何人かは巨大な店舗に行った後のようで感想を漏らしている。


「今までと変わらない対応をしてくれそうで安心したぜ。寧ろ武具だけではなく薬草とかも多少歩くが同じ広い敷地の中で一気に購入できるから、前よりも良くなったかもしれないな。それに一日中開いているらしいから、急に入用になってもいつでも購入できそうだ。助かるぜ」


「私もそう感じたわ。まっ、あの店から遠い所に住んでいる人は大変だけれど、一度店舗に行けば全部揃うから人によっては良いわね。広すぎるのだけが難点かな?一長一短ね」


「だけどよ?あの商会って一族経営なのか?店員は色々いるが、上の立場に見える連中は全員瓜二つだったぞ?」


 ロイとしても今迄の顧客に対してなるべく不利益にならないように配慮してくれ・・・と指示を出していたので、肯定的な意見を聞いて安心している。


 カードから召喚した者は睡眠を必要としないので丸一日店舗を開店していても問題はないが、いくら大丈夫とは言えひたすら店舗の管理を同一人物にさせるのは忍びないのでそこは交代制にしている。


 目ざとい冒険者は同じ顔の者が複数いると気が付いていたようだが、当人が言っているように身内であると言い含めれば問題ないと放置する。


 こうなると次は自分の退職の話だと思い、既にリーンの対応も終わったので前もって準備していた退職願を懐に忍ばせてギルドマスターの部屋に向かうロイ。


 残念な事に退職の意向については家族の誰にも、特にリーンにも一切伝えていないのだが、これは事前に伝えてしまっては問題がある事を知っているからだ。


 王族による収納魔法持ちの厳しい管理から漏れているリーンは最早戦闘能力的に管理できない事も有るのだが、ある意味手綱をつける事で見逃されている。


 その手綱とはロイがギルド職員になってリーンを王都に留める事なのだが、通常では知り得ないこの辺りの情報もカードの力を使って知っているロイ。


 自分が旅に出ると言えば絶対について来ると言ってきかないリーンの姿を想像しているが、残されるリーンは想定以上の力を得ている事から仮に王族からの強制管理の動きがあっても拒否できるだろうと思っている。

 

 古龍の話についても王族に知れ渡っている状態であり、更にはスペード部隊を護衛に潜ませているので安全については問題ないが、自分を探して放浪しないかだけが気になっているロイ。


「まぁ、そこはこの手紙で何とかなるでしょ」


 手紙には自立したいので一人で旅に出る事が書かれており、その間はこのギルドや領地の手助けをしてほしいとも追記している。


 ロイがお願いをする事は殆ど無かったので恐らくこの願いは聞き入れられるだろうと思い、少し申し訳ない気持ちになりながらもギルドマスターの部屋に入る。


「どうした、ロイ?」


「えっと、急で本当に申し訳ないですが・・・」


 懐から退職願を出すロイに驚くが、当人が決めた事を否定はしないギルドマスターは深く突っ込んだ事情は聞かずに退職願を受け取る。


「寂しくなるな。まぁ、何時でも戻ってきてくれて構わないからな。ところで、この件をリーン様は知っているのか?」


「そうなりますよね。実は伝えていないのでこの手紙を渡してください。このギルドで活躍してほしいと書いていますから。実は部屋ももう解約しているので、この足で旅立とうと思います」


 突然の退職願の直後に、もうこの町を出て行くと言っているロイの話しを黙って聞いているギルドマスター。


「それと、申し訳ないついでに一つ・・・このまま出て行くので、同僚や料理長達にも何も言わずに行きます。姉ちゃんの事ですから、何故かいつの間にか話しを聞きつけて手紙を読む前に暴走する可能性があるので」


「ぷっ、ハハハハ、そうだな。リーン様はロイの事になると異常な力を発揮するからな。ギルド内での話しも直ぐに掴んでしまうかもしれない。確かにその通りだ。わかった。ロイの旅に幸多からん事を願っているぞ」


 あっけなく挨拶も終わり、リーンが依頼をこなしている方向とは逆の方向に移動するロイ。


 素早く移動できる程自分自身の力はないので小さな荷台を準備して、その荷台にロイが乗ったまま召喚したクラブの部隊数人に高速で運んでもらっている。


 新たな門出に心を躍らせているロイだが、その昼過ぎにギルドに戻ってきたリーンによってギルドが相当荒らされた事をスペード部隊から聞かされた時には申し訳ない気持ちで一杯になっていたのだが、手紙を読んだリーンは多少元気がないものの何とか落ち着きを取り戻したと報告を受けて安堵し、思いを口にする。


「姉ちゃん、ごめんね。フォローはするけどハイス子爵家とギルドを頼むね」


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