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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(15)ギルドへの罰

 目の前の得体の知れない黒い物体、その中は生焼けなのか所々から謎の液体が流れ出ており、実際匂いも強烈なので誰一人として手が出せていない。


 普段から食料を大切にする冒険者ですら、第一歩が踏み出せずにいた。


 そこにギルマスの半ば強行とも言える推薦によって実弟であるドノデラが料理長になった事を知っている冒険者によって、ギルマスが強制的にその料理を口にする羽目になっていた。


 クノデラは震える手でナイフとフォークを持つとできるだけ小さく目の前の黒く怪しい塊を切り取ろうとするのだが、そんな事を許す冒険者はいない。


「お前、そんなに小さいと味なんてわからねーだろ?料理長であるお前の弟が作った力作だ。しっかり食えよ?」


 隣に来ている冒険者が、自分のナイフとフォークで少し大きめの一口に切り出す。


 すると切断面から怪しい色で強烈な匂いを発する汁と瞬間で目がやられそうなほどの煙が再度立ち上り、周囲の冒険者の嗅覚や視覚を襲う。


「うっ、ウェッ。何だこりゃ。魔獣除けの罠でもこれほどの匂いを出すものはねーぞ!」


 喧騒に包まれる食堂の中でクノデラは一人どうすればこの窮地を乗り切れるかを必死に考えているのだが良い言い訳など出てくるわけもなく長く放心していると、痺れを切らした冒険者によって肉らしき物体を口に入れられて瞬間で意識を失う。


 そこからはギルドと言う組織についての糾弾が始まった。


 一般職員に対しての糾弾ではなく、ギルドマスターを始めとした上層部について……だ。


 冒険者達は、何故あれほどの高級食材を毒物に変える腕しか持っていない者を料理長にするのか、そもそも料理人であろう人物が厨房でタバコを吸っている態度等、この短い時間で得た情報だけでも相当酷いと感じていた。


 ロイも突然の事でどう対処するか悩んでいたのだが、スペードキングからの情報で何とかこの場は収まるかもしれないと期待した。


「表に誰もいないと思ったら、なんでこんな所に・・・ここって職員専用の食堂じゃないの?どうしたの?ロイ君」


 ロイに早く会いたいためだけに、無駄に高い身体能力を全力で使って部屋の掃除を終わらせたリーン()がやってきたのだ。


 使える能力を何も持っていないただの職員と公に認識されている自分ではこの騒動は収められないと思っていたロイは、このギルド最強と認識されているリーンであれば自分が頼めば何とかしてくれるのでは?と言う期待があった。


 そこである程度事情を話し、現実的に毒物とも言える大量の高級食材だった物も見せて信憑性を上げて行く。


 リーンからしてみればロイの言う事は無条件で正しいと思っているので過剰な説明になってしまった部分は否めないが、それでも一通り説明する。


 その間、周囲の冒険者や職員、更には厨房の中のドノデラを始めとした一同も一切口を開かずに成り行きを見守っているのだが、そのような様子はリーンの視界には入らないのでドノデラ達だけが無駄に震えているのもわかっていない。


「う~ん、ロイ君はどうしたいの?」


「俺も大事にはしたくないけど、ちょっとこれは目に余るよね。料理の出来ない料理長ってどう考えてもおかしいし」


「わかったわ。お姉ちゃんに任せて!でも今日はこれから用事があるから、ロイ君も一緒に来てね?」


 即答で対応してくれると言い切った姉が普段のポンコツ具合とは大きく異なってとても頼りがいのある立派な冒険者に見えたロイは、何故か昼なのにギルドから連れ出される事には意識が向かずにそのまま共にギルドを後にした。


 その後の行動はお察しの通りにコレと言った用事がある訳でもなく、ひたすらロイを甘やかす行動をとり続けるだけのリーンだった。


「ふ~、今日は色々・・・いや、いつも通りと言えばいつも通りか。多少のトラブルと姉ちゃんの暴走。でもギルドの問題を解決してくれるのだから、今日の暴走位は目を瞑らないといけないよね」


 目の前には陰から出ているスペードキングと、商会についての報告を行っていたダイヤキングがいる。


「我が主。非常に申し上げにくいのですが、情報が入りまして・・・リーン様がギルドで暴れ始めたようです。狙いはギルマスであるクノデラと料理長であるドノデラです」


「・・・やっぱりポンコツだったか!立場を利用して問い詰める程度かと思っていたけど、力技かい!って、ギルドの被害は?」


 今までロイが陰ながらサポートをしていたとは言え、現時点で相当な力を得ているリーンは文字通りギルド最強。


 王族すらその力を恐れてハイス子爵家に対する圧力をかけられず、そのリーンがギルドで暴れているとなれば建屋も纏めて吹き飛ばされかねないと本気で慌てるロイ。


「我が主、ご安心ください。どうやら厨房に屯していたドノデラ一味を強引にギルマスの部屋に連れて行き、今の時点ではギルマス含めて恫喝しているだけのようです」


「恫喝!?貴族と言っても、イチ冒険者がギルマスに恫喝?」


 姉に期待した自分がバカだったと激しく後悔するロイだがここまで来てしまってはどうする事も出来ないので、他の人や物に被害がないようにフォローする事を伝えると現実逃避するべくふて寝した。


「も~。ギルド職員として経験を積んだら旅に出たいのに!まだ俺は知らない事が多すぎる。冒険者から得られる情報は値千金だから、簡単に情報を得られる立場のギルド職員をもう少し続けたいんだけどな。でもそろそろ潮時かもしれないな」


 叶わなくなるかもしれない願望を呟き、新たな決心をしながら・・・


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