(152)護衛(茶番)②
「オマエハ、イノチガイラナイノカ!」
これから本気を出しているふりをしつつもロイに傷一つつけずに敗北しなくてはならない盗賊達は、余計な事を話す余裕などあるわけもなく本当に棒読みになる。
「問答無用!」
ロイが果敢に攻めて複数いる内の最も馬車に近い盗賊の場所まで一気に・・・と言っても一般的な冒険者から比べると相当遅いのだが、肉薄して馬車を背にすると一人に対して上段から切りかかる。
―――キィン―――
ロイの上段からの全力の振り下ろしに対して余裕をもってしっかりと受け止めた一人の盗賊だが、これがジョーカーの命令に合致しているのか気が気ではない。
「ツ、ツヨイ!」
正直自分の持っている力を弱い方向に調整するのにいっぱいいっぱいの上に本来であれば周囲の盗賊達がこの状況を漠然と眺めている状況がおかしいのだが、ジョーカーが念入りに調教して仕込んだ劇は続いていく。
いつも通りに反応してしまえば間違いなく目の前のロイを始末しかねないので、反射的に体が動かないように必死に調整している盗賊。
ダイヤキングとしてもせっかく仕込んだ手駒なのでここで始末するのは惜しいと考えており、ジョーカーに連絡してロイの攻撃を受けても死亡しないように調整するべきだと進言している。
秘匿すべき最強のカードであるジョーカー二枚も顕現している上にスペードキングまでが最大の警戒心を持って事に当たっている以上はロイの身に何かが起こるわけもなく、あえなく盗賊一行は倒れ伏す。
「ふ~、スペードキングが教えてくれた通りに俺でもしっかりと対処できたよ。正直かなり緊張したしキツかったけど、きっと皆が調整してくれたんでしょ?ありがとうね。で、護衛の人達はどうしようか?」
ロイの言う調整とは、自分が危険な状況にならない程度に敵の力を削いでいるという認識だ。
「もったいないお言葉です。護衛に関しては気絶しているだけですのでハート部隊を出すまでもありません。無駄に広い馬車に積んでおけばそのうち目を覚ますでしょう」
結構ぞんざいな扱いだなと思っているロイだが間違いなく馬車には意識のある人が乗っているのでカードの力について知られるわけにはいかない事もあり、ハート部隊を顕現出来ずに提示された通りに馬車に積む事にした。
「っと、そうだ!あの・・・もう大丈夫ですよ?」
馬車の扉を軽く叩き、直に安心してもらえる様に既にギルド職員のカードが見えるように準備済みのロイ。
ここまでくれば作戦は大成功だとジョーカー一体はカードに戻り、残り一体もロイが去った後に気絶している盗賊達を保管すれば良いと待機している。
この場で意識がある人は馬車に乗っている一人とロイしかおらず、喧騒が収まった上にもう大丈夫だと優しい声をかけられているのだから、怯えの表情を見せながら馬車の扉を開けて外に出てくる女性。
盗賊であれば優しく声掛けなどされないという希望の元に扉恐る恐る扉を開けるとそこには優しい笑顔のロイが身分証を提示して待っており、周囲には護衛と盗賊達が倒れ伏している。
「護衛の方々は意識を失っているだけですから、全く問題はありませんよ。あっちの馬車に乗せておけばそのうち意識を取り戻しますから!」
スペードキングからの情報をそのまま伝えているロイと、その言葉を聞いて安堵の表情を見せる女性。
ここでもギルド職員という圧倒的に信頼がおける身分証が功を奏したようで、若干ながらも緊張が解れているように見える。
「じゃあ、ちょっと護衛の人達を乗せてきますね」
本来のロイの力では持ち上げる事すらできない屈強な護衛達を陰に潜むスペードキングがしっかりと補助をした為に楽々作業が終了した所で、御者すら気絶しているのに気が付いて荷台の馬車を連結した上でロイが御者をすると申し出る。
カードの者達にしてみれば少々筋書きが違うのだが、結果的にある意味護衛を行っている状態と変わりはないのでこれはこれでアリだという結論になる。
「私もお隣に座ってよろしいでしょうか?」
プラチナブロンドの奇麗な女性だと思っているのだが雰囲気、この馬車、数々の護衛を見れば最低でも貴族である事は明らかであり、失礼のない様にしつつ対応しているロイ。
「どうぞ」
「ありがとうございます。私、フラウと申します。この度は盗賊から助けていただき、感謝申し上げます」
「いやいや、当然のことをしただけですよ。もう身分証をお見せしたのでご存じだとは思いますが、ソシケ王国の王都でギルド職員をしていたロイです。一応実家は子爵になります」
「ソシケ王国の子爵家の方と言えば、ひょっとしてリーン様のご家族の方でしょうか?」
ソシケ王国からは相当距離が離れているはずのこの場所でもリーンの名前は知られているのかと驚いているロイ。
「そうですね。姉ですよ」
これがきっかけで話しに花が咲くのだがその流れで事情を聞けばフラウは他の町を治める貴族の娘であり、これから向かう王都を治める領主の息子・・・つまりは王族に輿入れに向かう最中だという所まで説明を受けたので当たり障りのない祝辞を述べる。
「それはおめでとうございます!」




