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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
151/261

(150)冒険者ではないが、護衛の任につく

 第三者から見れば独り言を呟きながら歩いている不思議・・・不気味な人物になるのだが、テクテクと適当に歩を進めているロイと、絶対的な主の為に何とか希望を叶えんと動いているカードの者達。


「我が主。どうやらこちらの道の方が町に近いようです」


 スペードキングからの情報が上がってくるのだが残念ながらこれは嘘で、そちらに向かえば盗賊崩れがいるという情報がジョーカー、カードの者、スペードキングと伝わったからであり、もちろんダイヤキングの指示によって誘導するようにしている。


 ロイにしてみればどこに向かうのか特段決めている訳ではないし距離が近いに越した事はないので、言われた通りに分岐を指示された方向に進む。


 その間ジョーカーはどうしているのかと言えば・・・


「我は名乗る程の者ではありませんが、貴方達にお願い・・・ではないですね。命令があります。当然命令ですので拒否権はありませんから、悪しからず」


「お、お前、どうやってここに入ってきやがった!あぁ?」


 盗賊達が塒にしている森深くの洞窟に到着し、同じカードの者達でさえその姿を明確に判別する事ができない状態のままに命令を告げている。


 未だかつてこの場所が明らかになった経験もなければ、敵と思しき相手に気がつかない状態でこれだけ近接された経験もない盗賊の統領は警戒感を露わにする。


「この程度で焦るようでは三流ですね。っと、そんな事は今重要ではありません。良いですか?重ねて伝えますが、命令があります。良く聞いてください」


 なぜか警戒態勢にまでは移行する事ができたのだが、その後に指一本すら動かせなくなってしまった統領をはじめとした盗賊達は黙ってジョーカーの説明を聞く他ない。


「結構です。これから貴方達にはとある旅人を襲撃していただきます」


 ここまで聞いて盗賊が全員安堵したのは言うまでもなく、自分達と同じ穴の狢だと思い、逆にこれだけ不思議な術を使える存在を仲間に引き入れればより価値のある品々を安全に手に入れられると喜んでいる。


 ・・・が、当然表情も動かせないので彼らに変化はない。


「あちらの方向、と言っても薄汚い洞窟の中なので貴方達では方向が分からないでしょうが、とある高貴そうな馬車に乗って移動している集団がいます。ターゲットは理解できましたね?それでは少し拘束を外します。我に襲い掛かるのは自由ですが、相応の反撃を覚悟した上でお願いしますよ?」


 ありえない術を含めて理解し難い状況に追い込まれているので、自由に動ける状態になった盗賊達の誰もジョーカーに襲い掛かるような事はしない。


「そいつはアンタの何だ?恨みでもあるのか?」


「恨み?我は今の所そのような感情を持った事はありませんから、わかりませんね。そうですね、強いて言えばロ・・・我が主のご要望と言った所でしょうか?」


 目の前のジョーカーを配下にするような存在がいると理解できてしまったので、素直に言う事を聞いて仲間に引き入れるのが最善の策だと判断する統領。


「わかった。んで、何をどうすりゃ良いんだ?」


 実はジョーカーは盗賊が何をするのか今一つ理解していないので、少しだけ首を傾けてしまう。


「・・・そうですね。普段はどのように活動しているのですか?」


「そりゃー、抵抗すりゃー後がめんどくせーから土に還ってもらっているぜ?そんで積み荷の中で有用なものは俺たちの物。女子供は遊んだ後に売り飛ばすってとこだ。普通だろ?」


 同族と疑っていないのでありのままを話すのだが、その直後に統領の姿は消え去る。


「まったく、胸が悪くなりますね。そうですか。盗賊とはそう言った者ですか。このように心身ともに薄汚い者達では我が主が接触する事も憚られますが、今回は止むを得ないと言ったところでしょうか?」


 一人自問自答しているジョーカーに対して、突然頭領が消えてしまった盗賊達は動揺を隠せないながらも次が自分の番にならないように大人しくしている。


「これは思わぬ副次効果ですね。従順になって何よりですが・・・それにしても汚い。これでは我が主の前に出る準備が整っているとは絶対に言えません!」


 この言葉の後に、なぜか突然全員の体や服が一気に奇麗になる。


「悪人顔はどうしようもありませんが、そこは大目に見ましょう。はい、では皆さん!これから我が言うとおりに行動していただきますよ?」


 得体のしれない恐怖に襲われている上に頼みの綱の統領もいないので、従う以外の選択肢がない。


 その頃のロイと言えば行きかう人々と笑顔で挨拶をしながら旅を楽しんでいるので、その情報を受けているジョーカーは盗賊達を調教する時間が確保できたと思いつつも一刻も早くロイの希望を叶えなくてはならないと力が入る。


「そうではありませんよ?何度言ったらわかるのですか!相手の剣がある所に全力で打ち込んでいるフリをするのですよ!ダメダメ。あくまで攻撃をしっかりと受け止めたように見せなくてはならないのです!」


 本当に茶番以外の何物でもないのだが只管ロイのために指導に熱が入るジョーカーと、何故このような事をしているのか真意がつかめないまま逆らえずに只管茶番劇に向けて修練する盗賊達。


 数日経過しただろうか・・・


「ようやく形になりましたね。間もなく本番です!我の言葉を良く聞きなさい。万が一にも救いに入っている人物に少しでも傷を負わせたら・・・死よりも辛い地獄が待っていると心得なさい。ですが!!臆して演技と明らかになるような行動をとった場合も同じ罰を与えます。では向かいますよ?」


 状況を把握できない盗賊は、異を唱える暇もなく出撃した。


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