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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(129)ムジカ王国

 王城にて、第三王子ジョロール失踪の報告を受けている国王ムジカ。


「陛下。ギルド、宿、酒場、どこを探してもジョロール王子は見つかりません。出国の形跡は有りませんが所持品すらどこにもない以上は連れ去られたとみるべきで、危険な状態にあるのかもしれません」


「そうか。今迄の行動を鑑みればその可能性が高いだろうな。余としても矯正できなかった事は悔やむ所だが、もうどうなろうが余の対処でき得る範疇ではない。立場上王族としての立ち位置を奪う事は出来なかったが、結果的に王族と言う立場を使って悪さをする事も出来なくなっているだろう。自業自得だな。だが、そのおかげで少々困った事態に陥ってしまうのも事実か」


 少々疲れた表情をしている国王ムジカと報告をしている騎士が会話をしているのだが、そこに不思議な声が聞こえてくる。


 ロイが家族を大切にしている影響を受けたのか、あれ程の愚息であってもその後についての情報は知りたいのではないかと配慮したダイヤキングの指示によってジョーカーが姿を見せずに声だけを国王ムジカに対して届けている。


<我は万屋、よろずや、よ・ろ・ず・や である。愚息であるジョロールの話しをしていたようだが、命に別状はない。しかし発言の中であった通りに目に余る行動が多すぎる故、こちらで罰を与えた。おそらくもうこの国に戻る事はないだろう。異存はあるか?>


 突然聞こえた声ではあるが万屋はロイの思惑とは異なって最近では相当広くその名を轟かせてしまい、流石に王族ともなればその噂が事実である事も突き止めている為に少々驚きはするが警戒する事はなかった。


「どこから話しているのかはわからんが万屋殿の言、理解した。余の不徳の致すところである為、ジョロールの件については何も言わんし言えん。だが命については配慮いただいた事、深く感謝する」


<話しが通じて何より。念のために付け加えると、罰を終えれば苦痛は無いまま無事に過ごせる事を約束しておこう。これも我ら商会長の慈悲によるものと心得ておくが良い>


「改めて深く感謝する、万屋殿。今後このように接触できる可能性は少ないと認識しているが、一つ余の話しを聞いてくれないだろうか?」


<・・・伺おう>


 このムジカ王国で第三王子と言う王族の立ち位置を奪わなかったのには理由があり、あまりにも傍若無人である事から冒険者として活動をさせつつ監視し、状況に変化がなければある意味生贄として隣接国家のモバイ王国にその身柄を差し出すつもりでいた。


 国力的にはモバイ王国の方が圧倒的に上である為に、第三王子とは言え王族を直接差し出す事で従順な姿勢を示そうと言う狙いがあった。


 その後態度が改まらずにモバイ王国で苛烈な扱いを受けようが、その時点で文句を言わない事で更に敵対するつもりがないと言う証明になるので問題ないと考えていたのだが、その生贄とも言える存在を失ってしまった為に思い切って万屋に相談する事にした国王ムジカ。


「・・・と言う事で、情けないが余の力では今後ムジカ王国をモバイ王国から守る術がないのが現状なのだ。あの国が何もしなければ問題はないが、そう楽観的にとらえられる状況ではないのでな」


 ジョーカーを含むカードの部隊はそれぞれ配置されている場所の情報やロイに関する情報についてはしっかりと把握しているのだが、ムジカ王国やらモバイ王国やらと突然話を振られても何が何だか分からないので黙って国王の話しを聞いている。


「そこで、愚息の矯正すら任せてしまった上での話しになるので非常に申し訳ない相談ではあるのだが、何とか我がムジカ王国を守ってもらうように動いてもらえないだろうか?」


<我らが一国家を相手にして勝利できるとお思いか?>


「小国とは言え色々な情報が入ってくる中で精査すると、我が国程度は一気に滅ぼす事が出来る程度の力は軽く持っていると判断させて頂いた。その証拠の一つが、誰にも気づかれずにジョロールを連れ去った事だ。余の方でも愚息の動向は監視させていたのだが門番を含めて一切の報告が上がってきていないこの現状を見れば、あり得ない力をお持ちである事は明らか」


 当たり前の判断はできる国王であると言う感想を持ちながらも、黙って話しを聞いているジョーカー。


「その万屋を纏めている商会長も相当な力をお持ちと見た。いや、そうでなければおかしい。更に従業員がどの程度いるのかは知る由も無いのだが、その全てをしっかりと纏めている様に感じるところも別格の力を持っていると思う根拠となっている。余程素晴らしいお方なのだろう」


<引き受けよう!>


 ロイを無条件に褒めた上にしっかりと称えている事から、善悪の判断や事情の把握をすっ飛ばして依頼を受ける決断を秒で決めているジョーカー。


 情報をカードの者達に送りつつ国王ムジカと話してはいるが、カード側からもダイヤキングが代表して即受けるべきだとの返信が来ているのでカードの者達の総意として依頼を受ける決定が瞬時になされている。


「おぉ、恩に着る、万屋殿!」


<非常に慈悲深く慈愛溢れる敬愛する我らが商会長の御意思であると心得て頂こう>


「もちろんだ。それで、あのモバイ王国は我が国と隣接しておりあわよくば我が国を手中に・・・と言う言動を絶えずあちらの王族が口にしているとの情報を得ている。そこで手段はお任せするのだが、こちらに攻め込まないように何らかの対処をしてもらいたい」


<フム、相分かった。作業が終われば連絡しよう>


 その後ジョーカーは二か国の状況を調査した結果、国王ムジカの言う通りにモバイ王国が領土を広げようと画策していると言う事実を掴み、これならば全く問題ないと追加の情報と共にカードに戻る。


「で、我の調査によればモバイ王国は相当聖国ロナからの援助を受けて勢力を伸ばしている様子。となれば・・・」


「成程な。ジョーカー殿の言いたい事、良く分かった。強欲ババァ(聖主ロマニューレ)に対処させれば良いのだろう?」


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