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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(127)ロイのトラブル(2)

 勝手に割り込み勝手に暴走し、更にはロイに迷惑をかけたのは間違いないジョロールは腹が痛むのを我慢しながら尊大な姿勢を維持しようとするが、髪の毛を掴まれて中途半端に可愛らしいリーンに持ち上げられている情けない状況は改善出来ていない。


「もう一度言うぞ!今更謝罪を受けようが俺はお前を、お前等を許す事はない!当然ギルドでの依頼受注も今後は一切できない。つまりは何も収入を得る事が出来ない!せいぜい野宿をして苦しめ!!」


 立場的に王族であるとしても、冒険者として活動しているので完全に越権行為である為に受付が窘める。


「ジョロール様!それは少々問題があるのではないでしょうか?そもそもギルドは独立機関ですよ?」


「お前もまだ言うか?この俺に向かって偉そうに!おい、いい加減にお前(リーン)は俺の髪を放せ!」


 もう収拾がつかなくなり始めているので、とりあえず今日の依頼は受けずに周囲を散策する事にしようとロイが近づいてその旨をリーンに告げる。


「姉ちゃん、今日は依頼を受けるのを止めて町を見ようか?」


「え!本当?うん。そうする。さっ、行こう!ロイ君!」


 ジョロールに向けていた視線とは打って変わって見かけ通りに可愛らしい暖かな雰囲気を醸し出したリーンは、所謂急変を間近で見た受付とジョロールが唖然とする中でロイを伴ってギルドから平然と去って行くのだが、ロイはギルドを出る直前に受付に向かって申し訳ないと言う気持ちを込めて軽く頭を下げていた。


 職員としての苦労は十二分に理解しているので余計な苦労と心労を掛けてしまったと言う思いから無意識のうちに取った行動なのだが、この状況はスペードキングからダイヤキングに即座に伝達され、絶対の主に無駄に頭を下げさせた怨敵ジョロールが出来上がる。


 カードの者達が怒りの会議を開催している間、嬉しそうにしているリーンと共に町を散策して食事を楽しみ特産を見て喜び宿に向かった二人。


「え?空いていないのですか?」


 今までは多くとも三件程度回ればどこかは空いている宿だったのだが、結構な数を回っても何処にも空きがないと告げられる。


 本来はカードの者達の力で空き状況を把握してロイに伝える事も出来るのだが怒りの会議が継続して開催中であり、その情報を聞きながら護衛をしているので事前調査の余裕が心理的になかった為に実行できなかったスペードキング。


「う~ん、申し訳ないけど見た感じはガラガラに見えるんだけどね。何か特別な催し物でもあるのかな?姉ちゃん」


「そうかもしれないね。でも大丈夫よ?色々と収納しているから別に宿に泊まれなくても問題ないわよ。安心してね、ロイ君!」


 全く困った様子がない二人を観察している一般人がおり、その中の一人は急いで移動してとある人物にこう報告する。


「ご報告いたします。あの二人は全く堪えている様子がなく、寧ろ野営の準備を喜々として行っております。あの女の方は収納魔法持ちのようですので相当な物資を運べているはずで、事実あり得ない程に豪華な野営の準備が整っています。つまり、いくら宿から締め出そうが冒険者としての活動を制限しようが、あまり影響はなさそうです。ジョロール様」


「あ?くそっ。こうなったらもう少し力を使う他ないか?」


 ギルドで、童顔で小さめの可愛い女性に成す術なく吹き飛ばされると言う醜態を晒した王族のジョロールはその立場を使って宿に二人の容姿を伝えた上で絶対に宿泊させるなと伝えており、相当打ちひしがれている所に颯爽と現れて土下座でもさせようかと思っていたのだがリーンやロイがそのような状況に陥る訳も無く楽しそうにしていると報告を受けて苦虫を噛み潰している。


 全く効果が無ければ更なる手を使うのが当然なのだが、そこに報告してきた者が待ったをかける。


「お待ちください、ジョロール様。収納魔法を使う童顔で金目金髪の女性・・・ソシケ王国のリーンの可能性があります。だとすれば相当に危険な相手ですよ?他国ではありますが、貴族の娘でありながら冒険者として活動している噂がここまで聞こえてくるのですから」


「だから何だ?今回俺が少々飛ばされたのは油断していたからに他ならない!あの程度、通常であれば難なく避ける事が出来ていたのだ!」


 プライドによって正確な判断が出来ないジョロールなのだが、情報をしっかりと把握している男は極めて冷静だ。


「そうかもしれませんが・・・良く聞いて下さい、ジョロール様。仮にあの小柄な女性がソシケ王国のリーンであった場合、間違いなく今回の宿やギルドの件で報復されますよ?何と言っても、あの女性は古龍を手中に収めているほどの傑物です。それも従属魔法を持っていない状態でしっかりと制御し、王都の邸宅に守護神として残してきているほどです。ある程度制御できている魔獣であっても主から遠く離れれば逃走や制御不能の状態に陥るのが普通ですが、従属魔法無しに遠距離の状態でしっかりと制御できている。コレは規格外と言う言葉でも説明が出来ません」


「はっ。その噂は聞いた事があるが、所詮眉唾。そもそも人が古龍を従える等できる訳がないだろうが!」


 一般の人、常識のある人であれば当然の返しをするジョロールだが、情報通なのかしっかりと裏を取っている男の考えがブレる事はない。


「仰りたい事、大変良く分かります。ですが今私が申し上げた古龍の話しは噂ではなく、手の者が直接その目で確認しています。最低でも十日前の時点ではソシケ王国の王都、それもハイス子爵家の邸宅内部に古龍が鎮座しているのを確認しています」


 王城で生活をしていた頃からの情報源として活用してきた男の確信を伴った発言である事から、流石のジョロールもこれ以上否定する術は持てずにあの女性がリーンでなかった事を祈り始める。


「お、俺は、ひょっとしてとんでもない怪物に余計な事をしてしまったのか?お、おい!今から宿とギルドに対しての要求を全て取り下げろ!」


 ギルドは良いが宿については手遅れだと思いつつも、命令通りに動く男だ。


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