(125)聖国ロナのロマニューレ(2)
ダイヤキングが扮する万屋から今自分がいるこの場所が崩落現場の内部だと告げられたロマニューレは、確かに周囲の状況を見れば鉱山と言っても納得できる風景であり明かりを得る前には全く光らしきものが入っていなかった事から、相当深い場所か崩落して外光が入っていない場所である事は理解できた。
ロマニューレ自身は採掘現場に顔を出す様な人物ではない為に何となく鉱山の雰囲気があると思っているだけで自国に鉱山が存在しながらもその知識がある訳ではないのだが、相当な警備体制を誇っている城からいつの間にか訳の分からない場所に移動させられている不思議な力を直接目の当たりにしているのでここが崩落現場と言われれば疑う余地なく信じる他ない。
「そ、それで、何故私をこのような場所に連れてきたのですか?」
「は~、本来はこの場で作業をしていた者達の無事について聞くのが国主としての務めではないのか?流石は二つ名である“強欲ババァ”の名に恥じない存在だな」
呆れているダイヤキングの言葉だが、ロマニューレとしては何故そのような必要があるのか本心から理解できない。
「その必要はないでしょう。作業に不慮の事故はつきもの。その都度国主が弱い心を見せれば国として成り立ちません。その程度も分からない下賤な存在に何かを言われる筋合いもありません!」
本来は万屋と直接接触できている所だけを考慮すれば相当望んだ展開ではあるのだが、全く友好的ではなく寧ろ敵対している感触である為に交渉はさっさと諦めて無事に戻れる事だけを考えているロマニューレ。
自らの考えをコンコンと説く形で権威を示し、立場を理解させる事で無事に帰れると思っているのだから相当な図太さを持っている。
「お前と話しをしても無駄な事は良く分かった。だがお前の欲の為に相当な恐怖を味わった者達の気持ちを少しでも体感すれば、民を想えるようになるのではないかと我ら万屋は考えたのだ。正に我らが守護するハイス子爵の領地の様に・・・な。どうだ?親切だろう?滅多にない機会だ。存分に体感すると良い!」
「は?私以上に国を立派に治めている国主など存在しませんよ?それに一国家の臣下である子爵程度を国主である私が見習えと?比較にすらならないでしょう?万屋はどこまで思いあがっているのですか?確かに不思議な力を持っているようですが、大陸中で光魔法の力によって発言力を増している聖国ロナの敵にはなり得ませんよ?」
ここぞとばかりに、今まで積み重ねてきた結果である光魔法を脅しに使った他国への発言力を表に出して脅しをかける。
「フハハハハ、滑稽。お前程度・・・いや、スーレシアと言う下賤な存在も含めてだが、光魔法程度を我ら万屋が使えないと思ったか?そもそもスーレシアから聞いているだろう?ジンタ町での奇跡を。あの程度の回復魔法の行使など、我ら万屋にとっては息を吸うのと何ら変わりはない」
ロマニューレは自分と同じ匂いのする強欲のスーレシアから、確かにジンタ町での状況を聞いていた。
今まで教会で荒稼ぎしたのだが突然現れた万屋と名乗る不思議な三人が・・・ロマニューレも実力だけは認めているスーレシアでさえ完全に癒しきる事が出来ずに、カモとしていた者達をあっという間に治して見せたと言う事を。
「ま、まさか、貴方達は伝説とも言える聖魔法を使えるのですか?」
「ははは。その程度は出来て当然だろう?寧ろ回復魔法の総本山、そしてそのお山の大将が使えない事に驚いている所だ。態度は大きいが実力が伴わない矮小な存在だったな」
実際にはロマニューレが言う様に伝説級とまで言われる聖魔法を行使できるのはハート部隊とジョーカーだけなのだが、敢えて説明する必要はないと考えているダイヤキング。
「あ、貴方・・・私に鑑定魔法を!?」
ロマニューレは普段から城を出る事なく過ごす事が多いのだがそれには当然理由があり、外に出れば守りが薄くなり危険な状態になる可能性が高いと知っている。
この現象は民や各国からの逆恨みだと思っているので、あり得ない事態に陥った時の為に各種機能を付与した装飾品を山の様につけて対策している。
相当高価な品である事から装飾品としても非常に優れている品でありロマニューレの欲を満たす一つの手段にもなっているのだが、その中には当然の様に鑑定魔法を妨害する品もあり、そこを難なく突破したと告げている。
実際に回復魔法その物を統治するかのような態度を取り続けているロマニューレなので他国からは聖魔法すら使える存在ではないかと言う噂が出ている中で、ダイヤキングが暴露したように聖魔法を行使できるわけではない。
無駄なプライドがあるのでこの事は側近を含めた誰にも伝えていないはずなのだが、あっという間に看破されてしまい焦っている。
「お前と押し問答をするつもりはないのでな。では、今回の崩落に至った原因であるこの鉱山に棲んでいる魔獣、サイクロプスを紹介しよう」
「ひぃぃいいぃぃぃ」
話しが突然飛んで理解できない内に理解できない内容を言われ、流石にロマニューレでも知っている凶悪な魔獣の一角と言われている一つ目の巨人がノソノソ現れたので腰を抜かしてアワアワするしかできない。
「何やら相当無駄にこの鉱山を荒らしたようで、奥深くで静かに暮らしていたこの御仁も大目に見る事が出来なくなったようだ。その原因を作ったお前には直接謝罪する義務があろう?では、せいぜい頑張るのだな!」
この言葉と共に万屋を名乗る数体は煙のようにこの場から消えると残されたロマニューレは尻もちをつきながら震える事しかできず、近接してくるサイクロプスに対して何も対処できる訳が無く怯え続けて気を失う。
気が付けば元の部屋にいたので、あり得ない程の事象であった事から悪夢だと思い異常に乾いた水を飲もうとした所・・・机の上に置手紙がある事に気が付く。
恐る恐るその手紙を読み進めると夢かと思いたかった事象は全て事実であり、今後ハイス子爵関連の者に対する無駄な接触、回復魔法を盾にした脅しをすればサイクロプスをこの場に送ると書かれており、あれ程の力を目の当たりにしたロマニューレは脅しではなく事実だと受け止めて慌てて使者を止めるべく行動を始めていた。




