(119)崩落(3)
「つ、疲れた・・・」
翌朝の食堂では平然と国を乗っ取った挙句に神国ロイと言う名前の国を樹立すると言ってのけたダイヤイングの言葉を聞き、その対処に追われ疲労困憊のロイがいる。
「ロイ君、大丈夫?」
「う、うん。ごめんね、姉ちゃん。ちょっと疲れただけだからさ。それで今日の依頼だけど、申し訳ないけど休みにしても良いかな?」
「本当に大丈夫?回復薬、いる?」
心底心配そうにしているリーンなので、特別な何かがあったわけ・・・ではあるが、体には異常がないと告げるロイ。
「本当に大丈夫。で、崩落の件だけどさ?万屋に頼ろうかと思っているんだけど、どうかな?変に姉ちゃんが処理をして二次災害が起きても困るでしょ?」
ロイとリーンの二人は昨日の時点で今日にでも崩落対処の依頼を受けようと相談していたのだが、そもそもダイヤキングを筆頭としたカードの部隊が動く以上は自分達がいるとかえって邪魔になると言う事もあってそれとなく今日は休みにすると告げている。
ハイス子爵家が万屋の守護を受けている事はリーンも知っているのだが異国の地にいるこの場でどのように依頼を行うのかについては気になっておらず、唯々ロイの体調だけを心配している。
「それは良いけど、じゃあ今日はお姉ちゃんと一緒に寝る?それとも気晴らしにどこか軽く散歩した方が良いのかな?」
「えっと、そうだね。一緒に町でも歩こうか?」
「やった!って、でも、本当に大丈夫だよね?ロイ君。ゆっくりしていても良いんだよ?」
ロイはリーンが暴走しない最も確実な方法は自分と共に楽しく行動する事だと知っているので、余計な心労をこれ以上かけられたくないとの気持ちから共に行動する事を選択する。
「いや、何度も言うけど本当に大丈夫だから早速行こうか?俺は特に目的地は無いから、姉ちゃんが決めてくれて良いよ?」
こうしてギルドにも向かわずにこの場から直に遊びにでも行くような形になっているので何時どのようにロイが万屋に依頼を行うのかは分からないながらも、ロイと共に行動できる事で歓喜に包まれているリーンは朝から晩まで一緒にギルドの依頼ではなく自由に散策できる事に喜びを爆発させている。
崩落に対する対策についてはロイが昨日の時点でダイヤキングに行動しても良いと許可を出して複数体顕現させているのでこれと言って新たな指示を出す事はなく、場合によっては既に行動は終了している可能性すらある。
つまりこの時点でギルドに行けば余計な騒ぎに巻き込まれる可能性があるので、ギルドにも行かずに町を散策する事にしていた。
騒動から避けるようにして一日を過ごしたロイは、夜にダイヤキングから報告を聞いている。
「・・・と言う事で、全員回復させた上で鉱山の外に連れ出しております。魔獣につきましては魔力溜まりの住み心地が良いようで、我が主の指示により特段手を出さずに見つかり辛い場所に移動しました。崩落はそのままで外部からの侵入が出来ないように強固に補強しております。欲深い聖国の連中ですから再度侵入する可能性に備え、全ての魔石・鉱石は没収しております」
「ありがとう。まぁ、最終的には魔力溜まりがある以上は魔石が出来る訳だけど、鉱石が無ければ大丈夫かな。仮に魔石が新たにできたとしても、再侵入はし辛いんでしょ?」
「もちろんでございます、我が主。本来この国の全てが我が主の物になる所を寛大な慈悲で見逃されているのですから、多大な益をもたらす品などを提供する謂れは一切ございません!」
「そ、そう?・・・まぁ、わかったよ」
神国ロイの建国を諦めていないかのような口ぶりのダイヤキングに少々押され気味なのだが、ここで何か言おうものなら訳の分からない方向に進みかねないので会話を終了するロイ。
「これで明日の朝、ギルドは喜びに満ち溢れているんだろうなぁ」
ロイはダイヤキング達からの崇拝を甘く見ており、彼等カードの者達はロイの指示によって行動をしているのだがロイの名声を全く広める事が出来ない状況を座して見ている様な者達ではないので、裏の組織である万屋として行動する様に言われていながらもその名声を無駄に広めようとしていた。
翌朝リーンと共に朝食を食べてギルドに向かったのだが既に入り口に入る前から相当に酒臭くなっており大多数の冒険者が夜通し騒いでいたのは容易に想像でき、仲間の無事を喜んでいたのだろうと少しだけ安堵の気持ちで匂いを我慢しながら中に入る。
「あ、リーン様、ロイ様。昨日、万屋を名乗る組織から崩落に巻き込まれた者達の救出が行われるとお告げがあり、お告げ通りに全員が無事に戻ってきたのです!ソシケ王国のギルドからの報告では万屋と接触できる可能性があるのはハイス子爵家だとの事ですが、ひょっとしてリーン様かロイ様が手配してくださったのでしょうか?」
「あぁ、それならロイ君が率先して頼んでくれたわよ。助かって良かったわね」
「ロイ様でしたか!ありがとうございます!ギルドマスターからも万屋の件がお二人のおかげであれば、是非ともお礼を伝えたいとの事でお呼びするように言われております。お時間を頂けますでしょうか?」
「ロイ君、どう?」
「えっと、はい。大丈夫です」
目立ちたくないロイとしてはリーンが万屋に依頼したと言ってくれるように伝えるのをすっかり忘れていたおかげでロイの功績を主張したいリーンによって止める間もなく事実を伝えられてしまい、実際に自分の口から依頼しておくとリーンに言っていた以上はこの場で否定する事も出来ずに諦めてご機嫌のリーンと共に受付の後について行く。
「ロイ君!流石はロイ君だよね。沢山の人達の命を救ったんだよ!」




