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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(11)職員食堂

 朝も早くからギルドに出勤して、いつも通りに姉であるリーン用の依頼を見繕っているロイ。


 そこに、護衛として自らの陰に潜っているスペードキングから情報が伝えられる。


「我が主。スペードサードからの情報では、本日リーン様は王都の邸宅にあるご自分のお部屋の掃除を厳命されているようで、ギルドに来られる状況ではないそうです」


「・・・ありがとう」


 相変わらずだなと苦笑いのロイは、分厚い依頼書の束を流し見している作業を止めて職員専用の食堂に向かう。


 リーン用の依頼を見繕う必要がなくなったために、本来の業務開始時間まではまだまだ余裕があるので少し休憩しておこうと思ったのだ。


「おや?暫くぶりだね。こんな時間にこっち来るなんて本当に珍しいね。今日はリーン様のお相手をする準備は良いのかい?」


 ギルド併設の場所である為に事情を知っている女性が机を拭きながら話しかけてきており、ロイの姿を見て最強と名高く弟大好きと公言してやまないリーンの対応をしなくて良いのか軽く聞いている。


「今日は依頼を受けられる状況ではないそうで、朝からゆっくりできますよ。久しぶりにここのご飯を食べる良い機会ですから。朝食をお願いします!」


「そうだよね。ほぼ毎日リーン様はロイに会いに来るからね。あれほど分かり易い接し方もなかなか見る事が出来ないよ。まっ、好かれているのだから良い事だよ。でも今のウチの料理は・・・」


―――ガシャーン―――


 女性の言葉を苦笑いで聞いていると、厨房の方から突然大きな音がした。


 女性は慌てて厨房の方に向かっているが、その最中にロイにも聞こえるような大声が食堂中に響き渡る。


「何をトロトロしていやがる!お前のせいで材料が全部パーだ。さっさと材料を買い直して来い!当然お前の自腹だ。さっさと行け!」


 久しぶりにここ(職員食堂)に来たのだが、聞いた事のない声がしたので立ち上がって厨房方面に向かうロイ。


 すると、中からは泣きそうな顔の女性が出てきて黙って外に向かっていく。


「スペードフィフス、あの娘を頼む」


 即座に小声で一体召喚して、女性の後を追わせるロイ。


 収納魔法からカードを出した上で召喚した方が楽なのだが、このように直接召喚する事も可能ではある・・・が、何故か非常に疲れるので普段はこのような事はしない。


 今回のように周囲の目がある時など、やむを得ない状況の時に限って直接召喚を行うようにしている。


 その女性の姿を少し悲しそうな表情で見ているロイと話しをしていた女性が、何やら事情を知っていそうなので聞いてみる事にした。


「あの・・・あの方って前からここに勤めていましたよね?それと今の怒鳴り声は初めて聞きますが、最近この食堂で働き始めた人ですか?」


「あぁ。そうだよ、ロイ。あの娘は弟妹を養う為に必死に働いているから私達も目をかけていたんだけど、少し前にこの料理長が代わってね。そいつが横柄なのさ。それに今まで持ち帰らせていた食事の余りも全て目の前で捨てる始末。血も涙もない奴だけど、聞けば納得すると思うよ。ギルドマスターの弟、クノデラの弟でドノデラとか言うのが来てから厨房は一変したよ」


「おい、お前もいつまでも遊んでんじゃねー。さっさと仕事しやがれ!全く、兄貴の言う通りにこのギルドの連中は職員も含めてどいつもこいつも使えない奴ばかりだぜ!」


 ロイを睨みつけながら厨房の中から大声で騒いでいるドノデラの声を聞いて、ロイと話しをしていた女性も慌てて厨房に引っ込んでいく。


「う~ん、あのギルマスの弟か。確かにこの短い時間だけでも相当横柄な態度だな。それに、なんだかあまり美味しそうな匂いがしないし・・・腕に期待はできないかな?」


 ポツリと呟きながらも、一応注文してしまった料理を待つために席に戻るロイ。


 記憶にない程長く待たされて、漸く料理が運ばれてきた。


「ロイ、ごめんよ。随分と待たせたね。あんな腕しかないなら私が作った方がよっぽど早くできるんだけど……って言おうとした時にあんな事があったから言いそびれたよ。本当に申し訳ない。ドノデラは私達に絶対に調理はさせないんだよ」


 困った顔をしながら配膳する女性の言葉を聞きつつ、料理に視線を落とすロイ。


「えっと、この黒いのってどう見ても焦げ・・・ですよね?と言うか、この野菜だった物がほぼ焦げて真っ黒ってなんて料理ですか?炭火焼き?」


「本当にごめんよ。一応野菜炒めらしいんだよ」


 申し訳なさそうな顔の女性の視線が痛く、勇気を振り絞って野菜炒めらしき黒い物体を一口、口に運ぶと・・・


―――ザリッジャリガリッ―――


 とても野菜炒めとは思えないような音が自分の口から聞こえてくる。


「うっ、ウェッ、ちょっと、これは無理です。ごめんなさい!」


 過去の過酷な経験から多少であれば我慢して食べるのだが、ロイの多少の範囲を大きく逸脱している素晴らしい食感と見た目、そして味だったので一口飲み込むのに全体力を持っていかれてしまったロイ。


 力なくお金を机に置くと、よろよろ立ち上がって食堂を後にした。


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