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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
117/121

(116)王都のハイス子爵家

「ヴァイス様。リーン様の使い魔が到着しております」


 王都にある別邸に到着したリーンの魔獣だが、結構な距離がある為に聖国ロナから即日到着したわけではない。


 その足についている手紙を嬉しそうに取りながら、ヴァイス子爵と共に居る子爵夫人のテレシアに手紙を渡す執事エドバン。


 直に受け取り夫婦で仲良く読み進めているのだが、両者共に表情が明るいために楽しく旅が出来ているのだろうと安堵している。


「エドバン。どうやらロイとリーンは楽しく旅が出来ているようだが、今は聖国ロナにいるらしい」


「聖国ロナ・・・でございますか。お二方に回復魔法が必要になる状況と言うのが考えられませんしリーン様は回復薬をお持ちですから何も問題はないと思いますが、聊か心配です」


 流石に長く子爵家に勤め政に関しての相談を受けている立場の執事エドバンは聖国ロナの状況を把握しているようで、聖国ロナで怪我や病気をしようものなら相当吹っ掛けられるのではと心配している。


 巨大商会が営業を停止してハイス子爵家の別邸に収まる程に縮小すると万屋から連絡があった際、情報として子爵家は聖国ロナからも監視対象になっていると告げられて納得していた子爵家当主のヴァイス・ハイスは、自らの家族を監視してくる祖国のソシケ王国と聖国ロナの二か国の内の一つに二人が到着していた事は万屋の手が入っていると思っていた。


 政に関する状況に関してはルホークも情報を共有しているのだがロイはギルド職員として活動し、そのロイに会うため、そして益を与えるために冒険者として活動していたリーンの二人に対しては余計な情報と判断していたので一切伝えていない。


「大丈夫だ。リーンがいるので何も心配はしていないのだが、聖国で我がハイス子爵家の守護を行うと宣言している万屋を通してシン()ロイ商会を設立する形をとるらしい。どうやって聖国ロナにいる二人が万屋に願いを告げるのか・・・場合によってはシン()ロイ商会に直接依頼をするのかもしれないが、何れにしても連絡手段がないだろうに」


「ヴァイス様。万屋の守護対象はリーン様、ロイ様にも及んでいると考えるのは当然であり、そこを考慮すれば既に依頼は実施済みなのではないでしょうか?この王都で何かを対処するような事が書かれているのですか?」


「いや。設立について確定のように書かれているだけで、こちらに何かをしろとは一切書かれていない」


「であればロイ様は非常に理路整然としたお考えが出来る方ですので、こちらで動く必要がないためにそのような書き方をされているのでしょう」


「そうだな。その通りだ!」


 ヴァイスとエドバンのやり取りは王都の別邸を守護している担当のクラブシックス、クラブセブン、そしてエドバンの執事としての技量を盗もうと観察しているクラブナインによってカードのダイヤキング達、そこからロイの護衛であるスペードキングを通してロイにも伝わっている。


 少々込み入った話しになっていたので子爵夫人のテレシアは口を開かずに笑顔でいるだけなのだが、会話が終わったのを見計らって思いを告げる。


「この使い魔、リーンちゃんの元に戻すのでしょう?それならば私もロイ君とリーンちゃんにお手紙を書きたいわ!」


 ほんわかした女性なので無意識に周囲を温かい気持ちにさせる事が出来る才能を持っており、この一言だけで何故か周囲がウキウキしてしまう。


「それは宜しいかと。直ぐに紙をお持ちします!」


 エドバンが一礼して即部屋を出る。


「テレシア。この近況報告は一応領地にいるルホークにも伝えておこうと思う。きっと二人が楽しく旅が出来ているので喜ぶだろう」


「そうですね。その方が良いかと思います!」


 領地との通信は使い魔ではなく直接連絡できる道具がある為に何かを準備する必要がなく直に連絡する事が出来るのだが、恐らく今は時間的に領地での仕事は最も忙しい時であると理解しているので、一刻も早くロイやリーンの話しを聞きたいと思っているルホークが目に見えるのだが敢えて時間をずらして連絡する事にしていた。


「本当に楽しそうで良かったですね」


「あぁ。これも、不思議な万屋とシン()ロイ商会のおかげだ」


 子爵の視線の先には、敷地内部にいつの間にか建設されていたシン()ロイ商会とそこに入店するために並んでいる相当数の冒険者や民の姿が見えている。


 一部貴族関係者らしき姿も見えるのだが今までの巨大商店と異なって入店の人数制限がある為に、シン()ロイ商会の方針として身分に関係なくしっかりと列に並ばなくてはならない。


 選民意識が強い貴族に至っては喚いた上で列の割り込み等を平然と行う様な者もいたのだが、その全てを容赦なく撃退しているのも目撃しているのでハイス子爵家としては何も対処する必要がなかった。


 冷静に考えれば存在すら把握できないような組織、そして王城にオークを平然と送り届ける事が出来る様な万屋がシン()ロイ商会の移設に一枚かんでいるので子爵家が守護する必要は一切ないと判断する事が出来ていたのだが、コレはハイス子爵側が思える事であって王都にある各貴族にとってはその限りではない。


 あくまで商会が子爵家の敷地にある以上は子爵が管理できていると考えるのが普通であり、流石に龍がいる以上は直接的な暴力に訴える事が出来なくなっているのだが格下の貴族である子爵が上位貴族である者達に配慮していないと映る。


 龍すら手中にしている上にあり得ない程の品をあり得ない金額で販売できるシン()ロイ商会まで手中に収め、更には訳の分からない存在である万屋まで背後に控えているハイス子爵家。


 脅威の対象であると同時に配下に組み込めば別格の益をもたらす存在であると認識されているので、子爵夫妻が表に出れば嫌がらせや多少の恫喝が起きるのは通常の流れだが、今の所(・・・)は護衛のカードの者達が上手くあしらっていたので普通に過ごせている。


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