(115)聖国ロナのロマニューレ
「ロマニューレ様!」
「どうしたのかしら?何か面白い事でも起こりましたか?」
聖国ロナの頂点である聖主ロマニューレが、癒しを与える存在としては真逆のイメージになる無駄に豪華な椅子に座って昼間からお酒を嗜みつつ家臣の声に耳を傾けている。
「実は・・・どうやら我が国にあのハイス子爵家の者、特に古龍を従えているリーンが入国したとの情報が入っております」
「目的は何かしら?未だに私があの方の領地に行けていないので、お詫びかしら?」
「現在情報収集をしておりますが、既に冒険者ギルドに入って一暴れしたようです。屈強な冒険者達を事も無げに退けて平然としていたようですが、問題はその後です。ギルドマスターのシャインと何かを話し込んでいる様なのです」
「その何かが重要ではないかしら?」
「そ、その通りなのですが、リーンの脅しによって周囲の冒険者達は全てギルドから撤収させられているので、これ以上の情報が入ってこないのです」
「そう。それほど大きな問題にはならないでしょう?後で職員に少し脅しをかけて聞けばわかる事でしょうから。何かわかり次第報告なさい?」
「はっ!」
ここで言われている脅しとは当然回復に纏わる事であり、受付として担当している冒険者の癒しが行われなければ再度依頼を受けられる状態に戻るまで時間を要し、怪我の具合によっては引退すらあり得る。
結果、担当の受付は一気に賃金が減少して生活もままならなくなる可能性もあり、それでも不十分だと判断されてしまえば受付本人やその家族に対しても回復に関して対応時の金額の上昇を匂わせるだけでどうにでも制御できると思っている。
事実今迄そのようにして完全に制御した結果が現状のギルドの状態であり、冒険者のイザコザすらも制御できなくなっている事に繋がっている。
「少し前にスーレシアからの情報で美味しい思いが出来たけれど、それ以降はあまり良い話しがないですわねぇ。早く子爵家を取り込みたいですが、今回は少し期待できるかしら?」
シンロイ商会の物資入手ルートに障害を与える程度の行動を起こした際に容赦なく一部の物資を略奪して懐に入れていたので、欲にまみれたロマニューレは同じような状況が訪れるのを待ち続けていた。
そこに圧倒的な戦力を見せつけられて繋がりを持とうとしているハイス子爵の王都の別邸、今回入国したとされるリーンの実家であるハイス子爵家にシンロイ商会が移設したとの情報は当然掴んでいるので、同じように聖国ロナにもしっかりと管理できる状態で勧誘すればもっと儲かるのではないかと考えてしまうのは当然だ。
「あのギルドマスター、シャインと言ったかしら?早速商会の勧誘でもしてくれれば良いのだけれど、あの頑固者ではそうはならないでしょうね」
シャインはロマニューレの言葉通りの事をしているのだが彼女にとっての勧誘は聖国ロナの懐、つまりはロマニューレ個人の懐を潤す為だけのものであり、回復に係わる事について国内で実施させるつもりは一切なかった。
今まで回復に対してギルドでも何かしら対応しようとした際にはこれ以上ない程に圧を加える事で全て潰していたので、彼女から見たシャインは最早簡単に掌の上で転がせる存在程度の認識になっている。
「ロマニューレ様!」
「もう、何かしら?」
再び相当な益を手中に収める事が出来ると妄想を膨らませているロマニューレに対して、異なる家臣が慌てた様に入室してくる。
「じ、実は、例の魔石が採掘できる鉱山ですが崩落事故が起きました。原因は調査中ですが、最も可能性が高いのは鉱山を崩落させるだけの力を持つ魔獣の存在です。現時点で相当数、冒険者を含めた採掘に係わる者達が内部に取り残されております!」
聖国ロナは各国に教会を設立して癒しを一手に担っている巨大な組織と言っても過言ではないのだが、留まる事を知らない欲にまみれている聖主ロマニューレがいるおかげで売れる物は高額で売りつける方針の元、日々活動していた。
臣下の報告に出てきた魔石と言うのも内部に魔力を内包した鉱石であり、素材として各種活用されている重要な資源とされている。
同じように魔核と言う魔獣の心臓とも言える物質も魔石と同じく魔力を内包しているのだが、魔核を損傷しないように魔獣を始末する必要があるので魔石と比べると非常に入手が難しい。
一方の魔石は魔力が溜まっている場所で稀に存在するのだがその場所を見つけさえすれば相当な益を得る事が出来、ロマニューレは聖主就任直後から魔力の溜まっている場所で採掘を行うように命じ、そのうちの一つから魔石が見つかった結果相当な益を手にする事が出来ている。
採掘を進めれば埋蔵量の関係から得られる量は減少するのは当然であり、今では最盛期から比べると採掘量が減少しているのだがその分売り上げ、則ちロマニューレが手にする益が少なくなる。
現場がどうあれ減収を認める事がない為にロマニューレの強い圧で無理をして採掘した結果、各種調査がおざなりになり危険な魔獣が奥深くに潜んでいたのを見逃したまま採掘を続けた為に魔獣を刺激してしまったのだろう。
「何ですって?早く復旧させて採掘を続けなさい!ノルマは必達ですよ?多少無理をしても回復魔法で回復させる事が出来るのですから、早く作業を開始できる状況に戻しなさい!直にですよ?」
家臣としては内部に閉じ込められている作業者達の救出を行いたいのだが、返ってきた言葉はあくまで益を追求する言葉だった為に肩を落としてこの場を去って行く。
「わ、わかりました。復旧についてはギルドに依頼致します」
「一刻も早く依頼をしておきなさい。卑しい連中ですから報酬を要求してくるでしょう。回復魔法を数回無料で受けられる権利を与えると伝えておきなさい!」




