(112)聖国ロナのギルド
相当目立った行動を取っていたリーンだが、当人としては特段気にするような事ではなく普段通りに過ごしている。
いや、普段通りと言う訳ではなく、ロイとの旅が楽しすぎてはしゃぎ気味ではある。
「じゃあロイ君。早速一緒に依頼を受けよっか?」
ロイはギルド職員としての経験はあるのだが今持っている身分証では冒険者として活動できるわけでもなく、当然素のままでは全く戦力にならない。
リーンもそこは理解しているので共に依頼を受けようと誘ってはいるのだが戦闘などさせるつもりは一切なく、荒事は自分一人が完全に引き受けつつも冒険者としての経験を共に味わいたいと言う気持ちでいた。
ロイも折角ならば!と、リーンと共に数ある依頼書を見ているのだが、二人に、特にリーンに対して冒険者達が過剰に怯えてしまい極端に道をあけるので、依頼書が貼られているボード近くは非常に異質なものになっている。
「あ、あの・・・リーン様?」
「ねぇ、ロイ君。これなんてどうかな?この村で目撃されている獣って私も聞いた事がないから見てみたい気持ちがあるな」
「あの・・・リーン・ハイス様?」
ロイだけを見て依頼を決めている所に必死に職員が話しかけているのだが、リーンとしてはロイが襲われかかった時に何も対処する素振りすらなかった職員一同もふざけた冒険者達と同類と言う認識でいるので、まるで存在していないかのように扱っている。
「姉ちゃん、ちょっと話しを聞いてあげてくれる?」
あまりにも目の前の職員が不憫になったロイはリーンにこう告げるとリーンは仕方がないと言う表情で初めて話しかけてきている職員に視線を向けるのだが、いくらロイの頼みとは言え友好的な態度にはなれない。
「・・・・・・何かしら?」
機嫌が悪いとあからさまにわかるので冒険者達の惨劇を見ている職員は少々怯えているのだが、今この時を逃すと話しが出来なくなるかもしれないとの思いから必死だ。
「そ、その・・・実は、リーン様に受けて頂きたい依頼がございまして」
「あっ、そう言うのは不要。じゃあロイ君、これにしようか?」
リーンはロイに言われた通りに本当にちょっとだけ話しを聞いてあげたので、これで用はないとばかりに再びロイに視線を向ける。
「えっと、姉ちゃん?」
「ん?他の依頼が良いかな?ロイ君」
本当にこの人は・・・と思いつつも泣きそうな顔をしている受付の女性が更に気の毒になってしまう優しいロイなので、今回だけと言う意識で間に入る。
「きっと事情があると思うんだ。もう少ししっかりと話しを聞いてあげてくれるかな?」
ロイに言われては断れないリーンは、多少嫌な表情を隠しきれないまま再び受付の女性に視線を移す。
「何かしら?」
「は、はい。実はリーン様ほどの実力を持つ冒険者がこの聖都にはいないので、ご実家の状況も鑑みた上でお願いしたい事があります。今回は是非ともリーン様にこの特殊な依頼を受けて頂くためのご相談です」
リーンは即答せずにロイを見るとロイは仕方がないとの思いから頷き、その姿を見たリーンは目の前まで来ている受付に続きを促す。
「どんな依頼かしら?」
「ありがとうございます!!では詳細を説明させて頂きますので、こちらに来ていただけますでしょうか?」
この場で説明をし続けては他の冒険者達が全く依頼書の中身を検討出来ないので、別の場所に先導する。
「どうぞお座りください」
ロイとリーンの対面に座っている受付の女性と、いつの間にか現れて同じように座っている男性。
片方の目は眼帯で隠されているのだが、見える傷跡が眼帯に隠されている目に続いているので恐らく冒険者として活動している時に敵の攻撃を受けたのだろう。
しかし見えている方の視線は非常に厳しく、それだけで相当過酷な現役時代を生き抜いた事は容易に想像できる。
「こちらが、この聖都のギルドマスターのシャインです」
ロイとリーンの想像通りの人物が出てきており、ロイは流石の貫禄だと思っているのだがリーンは突然文句を言い始める。
「ギルドマスター?随分と見掛けとは違って腑抜けなのね。あれ程余計な騒動が起きていたのに職員が何も対処しない。そもそもギルド内部であれほどの蛮行が行われているのを座して見ている時点でどうかと思うわね。そんな事だから舐められて、調子に乗った冒険者の連中が増長するのよ!」
ロイや家族以外には全く容赦がないリーンの圧を受けているが、流石に歴戦の猛者なのかギルドマスターは若干冷や汗をかいているようには見えつつも表立って動揺しているようなそぶりを見せずに対応するが、ロイの気分を間違いなく害したあの出来事を許せないリーンがそう簡単に止まる事はない。
「そこは謝罪しよう。申し訳ないが指摘の通りだ。だがこちらにも事情がある」
「どんな事情があれば、これほど傍若無人な冒険者が増えて荒れ続ける環境を作る事が出来るのかしら?ヘタレマスター!」




