(110)聖国ロナのギルドの状況
冒険者ギルドはどこの国にあっても独立した機関であり、ある意味聖国ロナが各国に派遣している人物の拠点である教会と似ている。
生活の基盤となる素材、食料、薬草入手、安全に対する処置、多岐にわたる仕事があるのだが相応の危険がある事もまた事実であり、故に癒しを行う聖国ロナとしても非常にありがたいお客であると言える。
「うわっ、この国だとギルドと教会が隣接しているんだね」
「そうみたいね。ソシケ王国ではどこの町でも教会とギルドが隣接している場所は無かったよね?きっと直ぐに怪我を治してもらいたいのだと思うよ?ロイ君」
ギルドに入らず共ギルドの中が騒がしいのは変わらないな・・・と思っているロイと、嬉しそうに話してくれるロイを笑顔で見つめているリーンがいよいよ他国のギルドに入る。
相当騒がしいので新たな人物が入って来た事に気が付いたのは入り口付近にいた者達だけなのだが、やはりリーンの可愛らしい容姿は相当目を引くらしく、更にその容姿が荒事を生業にしている冒険者に相応しくない事からも一瞬ポカンとしてしまう。
流石にソシケ王国であれば龍を手懐けている事まで噂になっているので余計な事を言ったり絡んだりする者は皆無なのだが、ここは異国の聖国ロナ。
リーンの現状の強さ、更には実績を理解できている者はいない。
「まったく、面倒ね」
ロイに聞かれないように独り言を漏らしてしまったリーンは周囲の刺す様な視線、値踏みするような視線、あわよくばと思っている下種の視線を感じつつもロイと共に依頼書のあるボードに向かっている。
ロイとしては聖国ロナのギルドが発注する依頼とはどのようなものなのかを職員の立場として見てみたいと言う思いがあり、依頼書の方にリーンと共に向かっている。
「あれ?薬草採取の依頼ってやっぱり相当少ないんだね。教会があるし、その総本山と言える国だからかな?」
「そうだよね。あの門に並んでいた人達を見ても癒しが必要な人が集まる場所なのは間違いないよね。それでいて薬草採取の依頼があまりないと言う事はそう言う事で間違いないと思うよ、ロイ君」
始めて来た国の事情を把握しようといているだけなのだが中途半端に二人の会話を聞いているこの場の冒険者としては、殆ど危険がなく比例して報酬も低い薬草採取を求めている力のない冒険者が相談し合っているように聞こえてしまう。
「おいおい、随分とヒョロヒョロの兄ちゃんとちっこい姉ちゃんだな。いや、坊やと嬢ちゃんか?」
「「「ギャハハハハ!その通りだが、あまり新顔を虐めてやるなよ」」」
お決まりのパターンになり始めているのだがロイとしては職員時代にこの程度の煽りについては何度も対処した事があるので落ち着いており、逆にこの状態をこの国のギルドではどのように対処するのか確認しておくのも良いかもしれないとの気持ちから敢えて自ら対処するそぶりを見せなかった。
「ロイ君、お姉ちゃんが始末しようか?」
黙っているロイを見て心配になったリーンがこう告げるのだが、ロイとしてはここでリーンが暴走しては本当に完全に始末してこの世から抹消しかねないと思い慌てる。
「い、いやいや、大丈夫だよ姉ちゃん。ちょっと色々思う所があってさ?ギルドがどう対応するのかも気になるから、少し様子を見たいんだ」
ロイの言う事は一も二も無く肯定するリーンなので、柄に手が向かっていた動きが止まって笑顔になる。
「おい、お前等姉弟かよ。随分と甘っちょろいんじゃねーか?ここは戦場。いくら聖国内部のギルドとは言え、冒険者は常在戦場だ。そこんとこをしっかりと理解させてやるのも先輩冒険者の務めだからな!」
勝手に盛り上がり始めている冒険者達なので今までは全くロイとリーンの存在を把握していなかった者達まで集まり始めており、逆に言えばギルドの受付にまで間違いなく騒動は知られていると言う事になる。
「我が主。残念ながら先程我が主が仰っていたこのギルドの対応ですが、どう見てもこの騒動を把握していながら誰一人として仲裁に入るそぶりを見せておりません。騒動については全く対処するつもりがないようです」
耳元にロイだけに聞こえるように情報を伝えてくれている、陰の中に潜っているスペードキング。
「うわっ、最悪だ!」
ロイの返しは何も制御できていないのでこの場の面々にしっかりと聞こえており、つまり余計なちょっかいをかけてきた冒険者に対する返事として捉えられる。
「そうだよね!流石はロイ君。なんだか随分と偉そうな小汚いおっさんが昼間からお酒臭いのに、そんな存在が私達に何を理解させてくれるのか凄く不思議だったんだ!」
そこにリーンも当然のように乗っかってくるので、ロイとリーン対この場にいる聖国ロナを拠点としている冒険者の図が一瞬で出来上がる。
誰か一人でもリーンの力について、更には見た目にからは想像もできない苛烈な性格である事を知っていれば被害は少なくて済んだのだが、ギルド職員ですら場違いな可愛らしい女性が来ている程度にしか思っていなかったので事態は加速度的に悪化して行く。
「ふ、ふははははは。良いぜ?その不思議な思いを俺達がしっかりと理解させてやるぞ?嫌と言っても・・・な!」
冒険者の中には女性もいるのだが彼女達も騒動を止めるつもりはサラサラ無いようで、何故このような事になってしまっているのか不思議になっているロイ。
「まっ、どれだけボコボコにしようが死んでさえいなけりゃ隣に教会があるからな。金はかかるが、授業料だと思えよ?」
勝手に事情を説明する形になっている冒険者の声を聞き、残念ながらこのギルドと隣接している教会は必要以上に蜜月関係になっているのだろうと把握したロイだ。




