(106)パーティー(2)
翌日の夕方・・・
「ハイス子爵。突然の訪問、申し訳ない」
「何を仰る。我らの仲ではないですか、ブライアン殿」
宰相のブライアンがハイス子爵邸を訪問しており、どう考えても今回のパーティー開催が心配になって来ているのは間違いない。
「ブライアン殿が来られた理由もわかりますが、今回は以前とは全く違う環境ですので心配は無用です」
「そう・・・なのかもしれませんね。万屋、リーン殿、古龍、敷地内にはシンロイ商会もあるのですから、確かにそうですね」
過去のパーティーとは異なり言われてみればその通りなので安堵したブライアンだが、自ら発案した古龍の移動が今回のパーティー開催に繋がった可能性が捨てきれずに自責の念から何か助力が出来ればと思い援助を申し出る。
「できる事があれば言って頂ければと思いますが、如何でしょうか?」
「ありがとうございます。ですが、本当に今回は大丈夫です」
その様子から本当に大丈夫なのだろうと安堵したその後は和やかな話しになり、ついでとばかりに商会の中を軽く視察して帰って行ったブライアン。
来客である以上は突入するわけには行かずに部屋で大人しくしていたロイだが、カードの者達からブライアンが帰ったと聞いて直に両親のもとに向かう。
「あの・・・実はこれ、俺から母さんにプレゼントです」
「まぁ、何かしら?嬉しいわ!」
ダイヤキングから渡された装飾品とドレスが入っている箱を渡すロイは、何故か相当羨ましそうに見ているヴァイスの視線を感じながらもテレシアが本心から喜んでくれるかが少しだけ心配になっている。
家族の今迄の態度を見ればこの心配は全くの杞憂なのだが、ドレスや装飾品については個人の好みもあると思っているロイは不安が拭えない。
自分の感覚では相当高級感に溢れながらも派手過ぎずに良い品だと思っているのだが、直接身に着ける本人がどう思うのかは分からない。
「凄く綺麗ね!ロイ君が準備してくれたのかしら?」
真剣にテレシアの表情を見ていたロイは、本当に喜んでくれている様に見えたので嬉しくなるとともに安堵する。
「えっと、喜んでもらえると嬉しいけど」
「嬉しいわよ!今回のパーティーの話しを聞いて準備してくれたのかしら?本当に嬉しいわ。お母さん、絶対にこれを着て行くわね」
「えっと、父さんの分は無いのかな?」
この場にリーンがいればもっと揉めていたのだろうが、明日にでもヴァイスとリーンの分も用意すると伝えて自室に戻ったロイはどうせ全てを聞いているだろうと思いつつも改めてダイヤキングを自発的に召喚し、お礼と共に追加で二人分の準備をお願いする。
お礼と共に新たな要望も伝えられたダイヤキングとしては、これ以上ない程に高揚してカードに戻り全力で準備をする・・・してしまう。
ロイは家族の喜ぶ顔が見たい一心でまたしてもカードの者達の暴走、そして常識が大きく一般人と乖離している事を忘れて頼みごとをしてしまった。
一応見かけ上はゴテゴテの装飾があるようには見えずに落ち着いた雰囲気ながらも凛とした品が出来上がり、ロイからしても非常に満足のいく仕立てである為に翌日の朝には二人にもプレゼントする事が出来た。
何故真夜中にこれほどの品の準備ができるのかは一切気にならないヴァイスやリーンなので、本当に嬉しそうにロイのプレゼントを受け取っていた。
そして数日後・・・このパーティーの開催を半ば強制的に命じた国王バレントや、過去にバレントや第一王子ハンブルと共にハイス子爵家に対して陰湿な行動を行っていた貴族達も訪問してくる。
国王だけはシンロイ商会から何かを購入する予定はなく、だからと言って新しい服や装飾品を買えるだけの税収が無くなりつつあるので、歴代の王族が戴冠式で着用する由緒正しい服を着ている。
他の貴族達はと言えば、縮小したとは言っても服のオーダー程度は受けてくれると言う甘い考えでシンロイ商会に注文を出そうとしたのだが、あっさりと断られた挙句に装飾品すらショーケースから手元に来ない状態でどうしても新しい品を準備できずに、過去に使用した中で最も豪華な品を使う事にしていた。
していたと言うのはその服や品を準備できなかったからであり、余りに高揚したカードの者達の暴走、そして過去の不敬な態度に対する鬱憤もあり、豪華そうに見える服やら装飾品を全て破壊、焼却していた。
国王に対しては王子を含めてある程度罰を与えているので敢えて放置していたのだが・・・貴族達にとってみれば新規購入も出来ずに止む無く古い服を引っ張り出そうとした所、何故か相当古いデザインの骨董品とも言える品しか残っておらず、ここまで来て欠席も出来ずに悔しそうに俯きながら入場している。
その視線の先には・・・無駄に目の肥えた貴族達から見てもあり得ない程の上等な服に身を包んでいるハイス一家であり、より一層自分達がみじめに見えて入場直後から下を向いたまま視線を固定してしまう。
国王バレントも一応王族としてある程度の品については価値がわかるので実際に今自らが来ている服、身に着けている装飾品と比べるまでも無い品々をハイス子爵家が身に着けているのは嫌でもわかる。
苦虫をかみつぶしながらも王族の矜持として下を向く事無くヴァイス・ハイスの元に向かうのだが、その胸についている宝石のような品を見て驚愕する。
「ハイス・・・子爵。それはまさか、龍の涙か?」




