(99)ダイヤキングの提案
領地の城で、執事のエドバンを筆頭に久しぶりに会う使用人達と親交を深めつつ美味しい食事を食べて楽しく過ごしていたロイ。
その後の入浴時にリーンに付け狙われたのだがロイはしっかりと釘を刺している事をエドバンに教えると、リーンは逆らえないのかあっさりとエドバンに捕縛されて軽く説教を受けていた為に一人でゆっくりとお風呂を楽しむ事が出来ていた。
翌日・・・朝も早くからリーンがロイの部屋に突入して朝食に誘いに来るのだが、あまりに良く寝ているので暫く嬉しそうにロイの寝顔を見ているとそっと部屋から出て行った。
普段であればここまで起きられない事は無いのだが、昨晩はカードの者、ダイヤキング達と色々と話し込んでしまった為に寝るのが遅くなっていたロイ。
その内容とは・・・
「我が主、ダイヤキング殿からお話しがあるようです」
いつもの流れで、スペードキングからの依頼でダイヤキングを顕現させるロイ。
「我が主。実は色々とご相談させて頂きたい事がございます。先ずは我らの能力を上げる事に繋がるのですが、このお屋敷にいらっしゃる執事のエドバン殿の素晴らしい力量を目の当たりにして、カード部隊一同感激している所存です。その素晴らしい歓待能力を我が物にするため、一人陰に潜ませて仕事ぶりを観察させて頂きたいと考えております」
いつも以上に真面目な話しぶりだった為に構えてしまっていたロイだが、エドバンの有能さはロイ自身も認めるところなのでその申し出に否は無かった。
「わかった、良いよ。でも、一応プライバシーだけは他の面々と同様にしっかりと配慮する事が条件だよ?」
「ありがとうございます。ご指摘の通りに致します。そしてもう一つあるのですが」
「え?そう・・・なんだ。まだあるんだ。何かな?」
山を越えていなかった事に不安が再び襲い掛かってきたのだが、話しを聞かなければ事は終わらないので気持ちを新たにダイヤキングに視線を向ける。
「実は・・・ルホーク様も仰っておりましたが、最近の王都は少々状況が宜しくないようです。あの大会がきっかけになっておりますが、余計な・・・何と言いましたか、聖国ロナでしたか?そこの雌狐も恐れ多くも我が主の御実家の情報を得ようと躍起になっているのは明らかです」
王都から領地までの追跡者の情報も得ており、よくよく動きを観察した結果、当初楽観的にカードの者達はロイの威光を受けるだの善意のおこぼれを貰う者だのと話し合っていたのだが、実際には聖国ロナから派遣された人物である事が判明していた。
楽しく旅をしているロイにそこまでの情報を与えるのはどうかと言うダイヤキングの配慮によって暫くは追跡者の存在だけを伝えるに留めていたスペードキングだが、今後の話しもあるのでこの場ではしっかりと情報を伝える事にしていた。
「それって、スペードキングが教えてくれた緑の服を着た追跡者の事?」
「仰る通りです、我が主。ですが今の所危険はありませんので特に対処しておりませんが、領地を守護する担当の者、今はスペードエイトがしっかりと捕捉しておりますのでご安心ください」
この後しばらく、王都の状況が如何に良くないかについての説明が続く。
「・・・ですので、我が主の所有物であるシンロイ商会の納税で成り立っている状況なのは明らかで、その大恩ある我が主に対して感謝すらなく余計な面倒をかける等、言語道断!厳しく罰するのが正義ではないでしょうか?」
「そ、そう?」
徐々に熱くなっていつものダイヤキングになってきたので、ロイもいつもの通りに返事が短くなってきている。
「そこで、恐れ多くもこの私ダイヤキングが一計を案じました。幸運な事に王都だけではなく周辺国家にもハイス子爵家が万屋の庇護下にある事は周知されております。そこで・・・」
「え?そこまでするの?王都にいる冒険者や一部の貴族の人達が相当困るでしょ?」
「確かに一部の人々は困るでしょうが、罪なき民は万屋が対応すれば良いのです。確かにあの広大な敷地の各休憩所に設置している、神である我が主の銅像に願いを伝えれば良いと言う噂が広まった状況を覆すのは少々惜しいですが、痛みなき改革は有り得ません!」
ダイヤキングの案としては、今回の大会がきっかけとなったロマニューレの行動を知りつつ止めるような事が出来ない国王への罰も含め、広大な敷地に集約したシンロイ商会を大幅に縮小の上で王都のハイス子爵邸宅の庭の一部を間借りする形で再開させると言うものだった。
直接的にシンロイ商会と万屋の繋がりは公言していないのだが、商会の中の銅像に対して願いを告げれば万屋が解決すると言う噂は広く伝わっているので誰もが無関係とは思っておらず、そこも有って公に万屋の庇護を受けていると知られているハイス子爵の邸宅で開店できれば、店員になっているカードの者達が容易に守護できると考えている。
更に・・・王都にある貴族の別邸敷地内の収入、通常そのような場所で収入を得る事は不可能である事から地税以外は納税の義務がない大きな抜け穴になっており、そこで開店すれば王都に無条件で垂れ流していた益を取り上げる事が出来る。
「そこまでしたら、ソシケ王国から相当目をつけられるでしょ?父さんにも相談しないと決められないよね?」
「恐れながら、不敬ながらも現時点で相当目をつけてきている事実がありますし、事態の改善が望めない以上は割り切っていただく他ないかと。しかし、我が主の仰るハイス様のご判断が必要との事は理解できます故、急ぎ万屋として接触して判断を仰ぎましょう」
「いやいや、ちょっと急ぎすぎ。兄ちゃんにも確認する必要があるから、明日にでも俺から話すよ」
「承知しました。そう言えば、ソシケ王国の良心と言っても良い宰相殿・・・ブライアン殿にも意見を頂く事もありかもしれません」
そもそも全ての事の発端はハイス子爵領の経営が相当上向いた理由を知る為にリーンを妾として強制的に内部に取り込もうとした事であり、そこも忘れていないダイヤキングは国王に対する厳しい対処を譲るつもりは無かった。




