(プロローグ)①
本作は完結保障です
よろしくお願いいたします!
王城の謁見の間にて・・・本人の希望とは全く逆の状況に陥っている人物、ロイ・ハイスと言う青年が、自らの養父が臣下となっている国家の王と謁見をしている。
背後には義姉であり冒険者として絶大な力と権力を得ているリーン・ハイス、その後ろには子爵家現当主のヴァイス・ハイス、その妻テレシア・ハイス、そして間もなく当主となるロイの義兄、ルホーク・ハイスがいる。
「よもや我が臣下のハイス子爵家があの商会の長とは夢にも思わなかったぞ。だが、逆に言えば我が国にとってコレは僥倖とも言えるだろう。シンロイ商会は万屋と懇意にしていたはずで、その力があれば侵略者に怯える必要も無ければ物資の枯渇を心配する必要も無い。今後も我らソシケ王国の為に励むが良い!」
シンロイ商会と言うロイを称える名前を付けられてしまった商会の会長である事が明らかになり、更にはその商会と懇意にしているのが公になっている謎の集団である万屋を制御できると喜んでいる国王バレント。
自らの臣下と言える貴族、それも下級貴族である子爵家の爵位を継げない存在で、実は元息子であった人物がそれ程の商会をどのように立ち上げて運営しているのか不思議に思う所はあるのだが、事実ハイス子爵家の敷地内に商会がある以上は目の前の取るに足らないと思っていた存在であるロイを商会長であると認める他なかった。
「あら?貴方は随分と頭が高いわね?自分の立場が理解できていないのではないかしら?」
そこにロイの義姉であるリーンが国王に向かってとんでもないことを口走るのだがその言葉を聞いて焦っているのは何故か国王とロイだけであり、国王の護衛である騎士はリーンの強さを嫌と言う程理解しているので少々怯えているし他の臣下である貴族達もリーンと視線が合わないように下を向いているだけ。
臣下と言う立場であるはずの子爵家当主ヴァイス、妻のテレシア、次期当主でありロイとリーンの兄であるルホークもリーンの言葉に当然とばかりに深く頷いている。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん!突然何を言い出すの!!大丈夫だから。これが普通だから。全く問題ない・・・」
謁見している最中にあたふたしてしまう事自体も相当不敬ではあるのだがこのままリーンの暴走を見逃せば本来リーンを諫めるべき立場であるはずの父でさえ頼りにならないと理解しているので、行きつく先は大惨事・・・あろう事か強制的に国王を玉座から引きずり降ろして土下座でもさせかねない程の事を平気で実行すると知っているので、ロイは誰よりも必死だ。
何故か家族全員ロイ至上主義である為に、あり得ない程の物資を揃えて莫大な益を叩き出しているシンロイ商会の商会長であると公になった今でもその権力や力には全く興味を示さずに只管ロイの事を想って行動している。
その結果がリーンの暴走と家族の誰もその暴走を止めない事態に発展しているので血は繋がらないながらも家族の中で唯一人奮闘してこの場を抑えようと必死のロイなのだが、残念ながらロイの言葉は最後まで続かない。
<フハハハハ、リーン殿はよく理解しておられる。正に世界の真理とも言える。どう考えても我ら万屋が懇意にしているシンロイ商会の商会長と訳の分からん国王とでは立場が大きく異なる。本来言わず共理解できるのが万国共通の常識だと思うのだが、所詮はこの程度の国王なので仕方がないと大きな心を見せてやろう。っと、言わずともわかると思うが我らは万屋、よろずや、よ・ろ・ず・や である!>
何故か不思議な声だけがこの場に響いた挙句に聞こえてくる内容はこれ以上ない程国王を侮辱しているのだが、リーンの発言時と同じようにハイス子爵家に加え彼等と懇意にしている貴族以外の面々が怯えてガタガタ震えだす。
「わ、わかった。商会長!そなたの店と懇意にしている万屋を抑えてくれ!」
厳重な警戒が行われている王城、その中でも特に防衛に力を入れている国王のいる謁見の間において存在を全く関知されない程の実力を持つ万屋に過去に相当色々やられている国王達なので、偉そうな態度は鳴りを潜めて懇願するかのような態度に変わる。
思わずため息が漏れそうになるロイだが何とか堪え、万屋を名乗っている人物に対して国王の依頼通りにこれ以上介入しないように指示を出す。
「えっと、万屋さん。少し大人しくしていただけますか?」
万屋の力を知っている国王達はいくら懇意にしている相手とは言ってもこのような物言いでは気分を害される可能性があると目を大きく見開くのだが、シンロイ商会と同じく万屋もロイ自身の能力によって生み出されている人物達が活動しているだけなので、ロイは万屋と自分の関連を疑われないように第三者的に話す事だけ気を付けている。
<コレは失礼した>
万屋を名乗る人物としては本来絶対の主であるロイに対してこのような口の利き方をしたくはないのだが、あくまで万屋は謎の集団と言う位置付けである以上はロイとの繋がりを勘ぐられては不味いと言う共通の認識で、苦渋の決断ながらも口調を変化させている。
その後は何故か国王がロイの前に遜り、本当にいたたまれない気持ちになりながらも謁見を終えて帰路につくハイス子爵家一行。
「ロイ君!流石の貫禄だったね。もういっその事ロイ君が国王になっちゃえば良いんじゃないかな?」
極刑に処されそうなほどの言動、クーデターととられかねない程の事を平然と普通の会話の様に話せるハイス子爵家もどうなの?と思いながらも、ロイがそのような面倒な立場を好まないと知っている上で冗談として言っている事は分かっているので、深く突っ込むのは無駄だと理解しているロイは苦笑いをするだけだ。
その後屋敷に戻って一人になると、とある存在が突然ロイの前に現れて跪く。
「我が主。あの不敬な国王をどのように処分いたしましょうか?」
この男こそがあの謁見の間で万屋を名乗っていた存在であるのだが見た目通りにロイを絶対の主と仰ぐ存在であり、この力を使って自ら望んだ事ではないながらもシンロイ商会と万屋を世に生み出していたロイ。
「処分なんていらないよ。全く、最近は特に暴走気味だな・・・」
絶対の力を持ちながらも驕る事無く生活しているロイは近年配下の者達の暴走を抑える事に非常に苦労しているが、平穏と言えば平穏ではあるのでロイはここに至るまでの事を思い出していた・・・




