ずっと晴れていればいいのに
今日は雨。
当然青空は見えないし、激しい雨の音がけたたましく鳴っている。
うっとうしい。雨のせいで僕は今日、部屋に閉じこもったままだ。
‘外に出たい’
けれど傘を持って歩かなくてはならないし、冷たい雨が僕の体温を奪っていくのを想像するだけで出かける気力は自然となくなる。…これだから雨は嫌いなのだ。
部屋にいたって、やることは無い。
勉強も、ゲームも雨の日のこの鬱々とした空気の中では選択肢に入れたくなかった。
‘こんなときは想像の海に浸るに限る’
だから僕は、‘創造’することにした。
自分の想像する新しい世界を。
いざ、このじめじめとして鬱屈な雨の無い世界へ…。
一面に花々が広がっている。
空は満面の青。雲はひとつたりとも見当たらない。
やはり青空は良い。その空と同じように、僕の心も晴れやかなものになった。
思いっきり、息を吸って、そして一気に吐き出す。花と、土の芳しい匂い。それが全身にいきわたるようなそんな感触。僕はこの世界が好きになっていた。
土の上で寝転んだり、体を伸ばしたりして、この世界を堪能した後、僕はこの世界の住人を探すことにした。
そうして暫く照りつける太陽に焼かれながら歩いていると、花畑の中に一人の少女と少年を発見する。
挨拶すると、二人ともが笑顔で返してくれた。話を聞くと、二人はこの先の町に住んでいる子らしい。
「君たち、この世界は好きかい?」
この世界を生み出した者として、気になっていることを単刀直入に聞いてみる。
「うん、とっても好き!」
少女のはじけるような笑顔。やはり皆、晴れが好きなのだ。
「今ね、お花を植えてるんだ」
そう言った少年が指差した先には、まだ平らな、何も無い茶色い土。
少年たちの言うとおりなら、ここに花の種が植えてあるのだろう。
「そっか。楽しみだな」
そんな僕の言葉に、二人ともがうなずいてくれた。
この世界の時間にして数週間がたった。
花畑は、見るも無残な状態になった。当然だ。雨が降らない世界なのだから。
水はどんどん無くなっていく。残されたわずかな水を花に分け与える余裕など町の人々には無い。
そんな中、子供たちが植えた種から出た芽だけが、まだかろうじて生きていた。
「ねぇ、お願い。水をお花にも分けて!」
「お願いします。枯れちゃいそうなんです!」
少女と少年が植えた花を助けるための水を必死に集めようとする。だが、大人たちは花の分の水を分けてはくれない。分けてくれるのは、ほんのわずかな二人分の水。
少年と少女は自分たちのそれを、こっそり花に与えた。
僕も水をもらっていたので、それもあげた。
雨が降れば大丈夫、二人はそんな風に話していた。しかし僕は知っている。ここは今、雨の降らない世界なのだと。
そんな生活が数日続いた。
少年と少女はまだ自分たちの水を与え続けている。おかげで花はすくすくと成長していた。
その一方で少年と少女はこの数日間ほとんど水を飲んでいない。僕は、この世界の住人でないから飲まなくても平気だが、彼らはこの世界の住人だ。当然しわ寄せが来る。
まず、少女が倒れた。
なので与えられる水は僕と、少年のものだけになった。
それから間もなく、少年も倒れた。
水は僕の分しかない。僕は毎日水を与え続けた。しかし足りない。
空を見上げる。
この世界にきた時から変わらない、雲ひとつ無い青空に、かんかん照りの太陽。
僕はこの不条理な想像に、身を投じるのをやめた。
窓の外で相変わらず降り続く雨。やはりうっとうしい。
でも外に出ようと思った。僕は合羽を出してきて、身にまとう。
外に出て、手を広げて存分に雨に打たれる
そうだ、今度花でも育ててみよう。
行き先は、花屋に決まった。僕はいつの間にか、うきうきしだしていた…。
THE・END
今現在、雨が降っています。
じめじめして鬱陶しい雨。あまり好きな天気ではありません。
だけどそんな雨をたまらなく好きになるときがあります。
体育の授業があるときとかね。
現金なものです。
雨の日は嫌い。でも必要。
今あなたの嫌いな物も、もしかしたら必要なものなのかもしれません。
…必要な勉強の現実逃避に小説書いてる俺の言葉では説得力ありませんが。