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お嬢様と執事と元伯爵

作者: purapura

暗い、会話だけの回です。


お嬢様のカウンセリング回です

ルーカスさんは溺愛というより

とても愛情深い人です


「お母様」

「なんですか?」

「言ってみただけ」

「ぼくも。おかーさま」

黒髪の男の子達が貴族の御婦人、といっても

20歳くらいか。にべったべったに甘えている。

御婦人とはわたくし、リレンザ女伯爵アラベラです。

膝の上に4歳と3歳が2人乗ってきてかなり重いです。

自分は羽のように軽いと思ってるみたい。

結婚相手とは別の方の子どもを授かっております。そのあたりは契約上問題なく、家族としても関係は良好だと思います。


旦那様は脳の血管のご病気で左足が不自由になってらっしゃいましたが、車椅子で動いてらっしゃいます。以前より顔色も良く、たまに仕事を手伝って頂いています。

旦那様の人脈や知識が役に立つこともあります。

旦那様はルーカスが血縁だとお気づきのようてすが、何も仰いません。

亡くなった奥様の肖像画を見せたり、ルーカスの指を見せてもらったりして、

ルーカスが何か言ってくれないかなと

アピールしている可愛い御方です。


事実上の夫であるルーカスは、副執事になって忙しそうです。

できるだけ側にいてほしいのですが。

我儘ばかり言えないので、寝る時は必ずわたくしの部屋で寝るように決めています。

寝室では、2人きりでいろんな話をして、

いろんなことをしてます。

ルーカスがこんなに可愛い人だったなんて。

こんな幸せな日々が訪れるなんて。

でも。


「ベラ」

結婚してから、時々愛称呼びにしてくれるよう頼みました。

本当は敬称にしたいらしいです。

言葉遣いも対等に変えたのですか、

つい人前ででそうなので元に戻したそうです。

実は愛称呼びが初めてで嬉しい。

誰からも呼ばれなかったの。


「何か悩んでますか?」

すぐにばれてしまいます。

「子どもたちのこと」

「はい」

「わたくし、家族運がなかったでしょう?

正しい親子関係が分からないの」

「私からみたら上手くできてると思いますが、お嬢様には違いますか?」

わたくしはルーカスをまっすぐに見つめて

言いました。

「子どもたちが大好きなの。でもね、たまに憎くなってしまって、怖い」

「どんなときに憎くなるのですか?」

「わたくしが子どもたちを可愛がるでしょう?わたくしは可愛がられなかったのに、

この子たちは可愛がられてずるいとおもうの。変よね」

「変ではありません。でも、もしもですが

突然怒りたくなったり叩きたくなったら、

子守か他の者にお任せ下さい」

「いいの?」

「旦那様も可愛がってらっしゃいます。

乳母も他の使用人もいます。

私は親として関われないのが残念です。

親と名乗り出ることもないでしょう。

ですが一使用人として可愛がります。

ベラは私がいっぱいいっぱい愛します。」

「ふえっ?」

急に恥ずかしくなった。

「小さなベラが、愛してほしくて嫉妬してる。可愛がってほしくて泣いている。

ベラに足りない愛情は私が差し上げます。

今まで欲しかった親子とか家族とかの愛情を私が全部差し上げます。

もちろん、友人や恋人や夫婦の愛情もです。覚悟して下さい」

ルーカスがぎゅっと抱きしめてきました。

「いやじゃないですか?」

「嬉しい」

「気づくのが遅れて申し訳ありません」

「うん。遅い」

何だか涙がでてきました。

「わたくし、子どもの頃からルーカスが

好きで好きで」

ルーカスが私も、と鼻の頭にキスした。

「結婚はできないけれど、愛し合って子どもができて、とても幸せだったの。

まさか自分がお父様のようになりそうと

思うなんて」

「やってみないとわからないことなんて、

いくらでもございます。

お嬢様は頑張っていらっしゃいます。

貴族なんて子どもと関わらないのが普通です。

無理しないで、皆を頼って下さい。」

「いろいろ言って、甘えてもいい?」

「ベラのことなら何でも嬉しいんです」

「あのね、どうして私は叩かれたのかな。

殴られて痛かったの。どうして。どうして。私が泣くと笑ってたの。」

わたくしは泣いていた。

ルーカスがわたくしの髪の毛と頬を触る。

何だかくすぐったい。

「ベラは悪くありません。悪いのはお父様です。八つ当たりです」

「どうして、私だったの。

私、何もしてないの。

なのにお父様に嫌われて叩かれて、鞭で打たれた。」

言っているうちにしゃくりあげてきて、少し恥ずかしい。

頭を撫でながらルーカスが

「ベラのお父様はもう怖くないです。

叩けないし、鞭も持てない。

麻薬中毒になった顔、覚えてますか?」

わたしは泣きながら頷きました。

「もういない?」

「もういません。」  

「もう叩かれない?」

「ベラは大人になりました。

もう、勝てるんです。勝ちましたよね?」

べそべそと泣いてしまう。変な顔、ルーカスに見られるのいやだな。

「前から考えていましたが、地下室を封鎖しませんか?ずっと使ってませんよね」

拷問部屋なんて、前世紀の遺物だ。 

父がわたくしに使うから残していた。

「業者を呼びましょう」

「思い切りがいいですね。

さすが私のお嬢様です。」


それからも、時々泣いたり不安になったりした。娘時代はこんなことなかったのに。

弱くなったのだろうか。

「お子様たちの年齢が、お嬢様の辛い記憶の

ある年齢と一致したのでは?」

とルーカスは考えているらしい。

わたくしの心は穴だらけだ。

その穴を少しずつ埋めていく。

ルーカスや周囲の人たちと一緒に

埋めていく。

心がざわついても、少しで静まるようになった。

「お嬢様は本当に優しくなられましたね」

「マイカ。わたくしは最初から優しいの」


多分これが時系列として最後になると思います

お嬢様はトラウマをぷちぷちとつぶして

以前より感情が安定し、優しい方になられています

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