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何それ里美発見伝

作者:

 婚約破棄された上に追放された悪役令嬢の里美。

 しかしそれは、世界を手に入れようとする魔王の策略であった。

 試練に屈する事なく立ち上がった里美の元に、宿命に導かれた八人の勇士が集結した。

 今ここに、世界を救うための戦いが始まる。


「勇士の皆様、わたくしの呼びかけに応じていただき感謝します」

 広い部屋に置かれた円卓の一角で、里美は立ち上がり頭を下げる。

 集まった勇士たちは、強い意志を感じさせる目で里美を見ていた。そのうちの一人が静かに立ち上がる。

「里美様、顔をお上げください。我々は自らの意志でここに集ったのです」

 どこか控えめな雰囲気の青年が、里美に声をかける。

「ありがとうございます。あなたは?」

「はい、私は傲慢のスペルビアと申します」

「あまり……傲慢には見えませんわね」

「いえ、それほどでは」

「謙虚なの?」


 少しだけ戸惑う里美に、あいまいな笑みを向けたままスペルビアは着席した。

 その隣の勇士が立ち上がり、里美に向きなおる。

「私は強欲のアバリシアといいます。趣味は寄付です」

「おい強欲。いや寄付するんじゃなくて集めなさいよ」

「お金はそんなに好きではありません」

「名前との整合性は考えてるの?」


 戸惑う里美を置き去りにして、アバリシアは静かに座った。

 その隣の勇士は優雅に立ち上がる。

「私は嫉妬のインビディア。芸術家を目指してましたが夢破れたので芸術関係のパトロンをしています」

「嫉妬しろよ!」

「いや、皆さん才能豊かで」

「名前変えろ!」


 声に遠慮がなくなり始めた里美を静かにスルーしてインビディアは座る。

 その隣の勇士がおっかなびっくり立ち上がる。

「あ、あの、僕は憤怒のイラといいます……ごめんなさい」

「なんで謝るの?」

 里美は少しイラッときた。

「ご、ごめんなさい」

「怒れよ!」


 普通に怒鳴り始めた里美と視線を合わせないようにイラはテーブルの下に隠れた。

 その隣の勇士が隙のない動作で立ち上がる。

「私は色欲のルクシリア。神に全てを捧げた者です」

 しばらく考え込んでいた里美は、顔をあげると意を決したように話しかけた。

「……じゃあ、その、色欲はどうなの」

「私のすべては神のもの。色欲などもってのほかです」

「そう……」


 何かを諦めたような里美の方を見ないまま、どこか遠くに祈りを捧げながらルクシリアは座った。

 その隣のやせこけた勇士が、息も絶え絶えによろよろと立ち上がる。

「私は……暴食の……グラ」

「食えよ!」

 里美が元気を取り戻した。

「食欲がなくて……」

「いいから何か食え!」


 何か食べ物を持ってくるよう指示をだす里美。グラはゆっくりと倒れて床に横たわる。

 その隣の勇士が元気よく立ち上がる。

「俺は怠惰のピグリシア! よろしくな!」

「怠惰がなんでいるの! サボれよ!」

 里美の声が力強さを増していく。

「義務はちゃんと果たさないとダメなんだぜ!」

「怠惰にあやまれ!」


 肩で息をはじめた里美をよそに、よくわからない演説をはじめるピグリシア。

 カップの水を飲んで一息ついた里美が円卓を眺めてふと呟く。

「勇士の方は八人と聞いていたのですが……あと一人は?」

 七人の勇士は顔を見合わせ、二つ、三つ言葉を交わす。

 ピグリシアが大きな声で里美に回答を伝える。

「四捨五入して八だぜ!」

「ねえよ!」

 里美は切り捨てるように言い捨てた。


 こうして里美と八人の勇士は空中分解。 魔王は異世界からやってきた勇者に討ち取られて世界に平和が訪れた。

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