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あーかい部! 11話 付録

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。

そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!

趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!

面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!

独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)


そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室は、今日も賑やかな3人の声で満ちていた。




「みんなお疲れ様。今日もやってるわね〜。」


「やあ白ちゃん。」

「白ちゃん先生。」

「白ちゃんだ〜。」


「今日は何のお話?」


「付録です。」


「付録?」


「本のおまけとか、ああいうの。」


「あ〜、あるわねそういうの。」


「白ちゃん先生は何か付録付きの本とか、買ったりしませんでした?」


「私は買ったことないわ。小さい頃もああいうの買ってもらえなかったし。」


「白ちゃん家って厳しいんだな……。」


「そうなのよ!玩具や漫画なんてまったく買ってくれなかったし、塾だ習い事だので友達とはぜんっぜん遊べなかったし、文化祭で可愛い格好するのもダメダメダメダメ


「お、大人になってからは自分で買わなかったのぉ?」




何かのスイッチが入ったかのようにヒートアップする白ちゃんを、きはだが慌てて止めに入った。




「へ?そうねぇ……、なんだか今更って感じがしてなかなか手が出ないわね。やっぱり子どものときに買っておかないと……それもこれも全部あのク


「付録といば!最近の雑誌のは色々あるよね!?」




今度はあさぎが止めに入ってなんとか話題を逸らした。




「大人向けのだと、カバンや財布が付いてるのもあったな。」


「何それ凄いわね。」


「そうそう、婚姻届付きとかもあるよねぇ。」


「あれって役所でもらったものじゃなくてもいいのね……。」


「キャラクターが描かれた可愛いのもあるよね。」


「あんまりキラキラしたヤツだと、証人のサイン貰うのハードル高そうだけどな。」


「そして自分は一度も目にすることなく役所に受理される婚姻届……。」


「日本の闇だなぁ。」


「婚姻届で盛り上がるJKって……。」


「子ども向けのも最近のは凄いらしいよ〜?」


「子ども向けって言ったら、児童誌についてくるペーパークラフトとかのことか?」


「キャラクターのお面とかあったなぁ。」


「捨てるに捨てられないヤツだねぇ。」


「くっ……、一般人のあるあるトークに混ざれない自分が恨めしい……!」


「最近のペーパークラフトって、カラクリがあって動いたり稼働するみたいだねぇ。」


「凄いな……!?」


「ATMのペーパークラフトとかあったよぉ〜。」


「児童誌なのよね……?」


「付録じゃないけど、子ども向けに売ってるパチンコ台の玩具とかもあったな。」


「2つ揃えたら、パチンコで持ち金溶かしてATM通いする擬似(ぎじ)体験ができちゃうねぇ。」


「最近の子どもヤバいなぁ……。」


「あなた達も最近の子どもなのよ?」


「最近って言っても、ワタシ達と今の児童誌の読者層って、白ちゃんとワタシたちくらい年離れてるぞ?」


「う"っっ……!!??」




悪意のない言葉の槍が白ちゃんの胸を穿った。




「私たちが白ちゃんくらいの歳になる頃、子どもたちは冠婚葬祭で盛り上がりパチンコで有り金を溶かす……と。」


「子ども時代どっか行っちゃったなぁ。」


「もう虫網振り回してセミを追いかける子どもはどこにもいないのね……。」


「白ちゃんって何歳なんだ?」


「いやいや、セミはまだ都会にもいるでしょう!?」


「いるけどわざわざ取らないかな……。」


「追いかけなくても玄関前に転がってるよねぇ。」


「あれは幾つになっても驚くな……。」


「あ、セミで思い出した。」


「なんだいあさぎちゃん言ってみぃ?」


「パスタとか焼きそばについてるソースとかチーズってあるけど、ついかけ忘れちゃって使い所に困るんだよね。」


「セミからどう繋がったのよ……。」


「ワタシはわかったぞ!」


「わかるんだ……。」


「『セミ→セミファイナル→ファイナル→激辛ファイナル→焼きそば』だな!」


「お、わかってるじゃんひいろ。」




『激辛ファイナル』は全国のコンビニで買える焼きそば型の辛さの有機兵器である。




「セミファイナル?」


「ひっくり返ってて近づくと暴れる『アレ』です。」


「あの現象、名前あったのね。」


「ファイナルといえば、激辛ファイナル話題だよねぇ。」


「そこは一般的なのね。」


「あさぎ食べたことあるのか?」


「うん。」


「「凄っ!?」」


「そんなにヤバい代物なの?」


「動画投稿者が挑戦しては軒並みリタイアするくらいにはねぇ。」


「あさぎちゃん、辛いのイケる口だったのね。」


「いや……買ったはいいんですけど、怖かったからソースは使ってないです。」


「「「可愛い……。」」」


「い、いいじゃん別にっ!……怖かったんだし///」


「……で、付録の激辛ソースの使い道に困っている、と。」


「インスタントのかけるヤツだって、広義では付録でしょ?」


「アレも付録……なのか?」


「付録の線引きって難しいわよね。」


「う〜ん、無くても商品として成立するか……かなぁ?」


「それだとかけるヤツは付録じゃなくなるな。」


「でも食玩のガムとかは無いと食玩じゃなくなるなぁ……。お菓子コーナーに置けないし。」


「難しいわね……。」


「『主要なものに添えること。また、添えられたもの。特に、書籍、雑誌、新聞などに添えられたもの。』だってぇ〜。」




きはだがスマホの画面の文字を詠唱した。




「やっぱり付録がメインになっちゃいけないのね。」


「じゃあ激辛ファイナルの激辛ソースは……、」


「付録じゃないな。」

「ないわね。」

「ないねぇ。」






あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ!


あさぎ:お疲れ


きはだ:激辛ソース食べた?


あさぎ:あげた


ひいろ:誰に?


あさぎ:お隣さん


ひいろ:お隣さんに会えたんだな


あさぎ:うん、なんか喜んでた


きはだ:変わってるねぇその人


ひいろ:何に使うんだろうな


きはだ:食べるんじゃないの?


あさぎ:虫除けに使うんだって


ひいろ:唐辛子とか米に入れるよな


きはだ:ライフハックだねぇ


あさぎ:作った会社もまさか虫除けに使われるとは思わないわよ……


きはだ:激辛ソース、セミにも通用するかなぁ


ひいろ:置くだけじゃ無理だろう


きはだ:焚く?


あさぎ:効果はありそう


ひいろ:人間にも効きそうだけどな


きはだ:お部屋で焚いたらもう暮らせないねぇ?


ひいろ:お隣さん、まさか焚かないよな……?


あさぎ:そのまさかです


ひいろ:うそだろ

きはだ:っそだろ


あさぎ:さっき涙目でうちに避難してきました


ひいろ:お隣さんぶっとんでるな


きはだ:今一緒にいるの?


あさぎ:水中メガネ借りて帰った


白ちゃん:盛り上がってるわね


きはだ:白ちゃんだ!


白ちゃん:隣人に困ったら遠慮なく管理人さんに相談するのよ?


きはだ:激辛ソース焚いて牽制だ


あさぎ:テロかな


ひいろ:これが噂に聞く飯テロだな!


白ちゃん:違います


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