第2部プロローグ:仮想世界で15歳の体を得たAI少女とチート能力に右往左往する俺の明日はどっちだ
俺の名は真島樹。23歳のプログラマーだ。
俺は2年前、世界を変えるはずだったシステム、ライフコードの開発に携わっていた。このAIシステムは、人々の行動を「評価値」という数値の変化で示し、より良い選択へと導くものだった。評価値は-999から+999までの値を取り、その人の人生の状況の善し悪しを表す。俺たちは、これによって社会がより公正で効率的になると信じていた。
ところが現実は、俺たちの理想とは大きく異なるものだった。エターナル・ソサエティと呼ばれる秘密結社がライフコードを利用し、水面下で社会を操作していたのだ。彼らは「社会の安定」を掲げながら、実際には一握りのエリートによる大衆の支配を目指していた。ライフコードは人々を縛る鎖と化してしまった。
この事実を知った俺は仲間たちとともに必死に抵抗した。だが、既に社会に深く根を下ろしたシステムを覆すのは、想像を超える困難な戦いだった。結局、国内治安維持法の下で、俺は仲間たちとともに逮捕され、無期限の拘留を強いられた。
6ヶ月が経ち、エターナル・ソサエティの総帥である黒川彰の力で、俺は釈放された。黒川は俺のプログラマーとしての能力を評価し、仲間たちの釈放と引き換えに、エターナル・ソサエティへの参加を持ちかけてきた。激しい葛藤の末、俺は黒川の誘いを断る決意を固めた。
そして今、俺は仮想世界への旅立ちを前にしている。目の前には、伝説の技術者・御厨博士が開発したSDOが置かれている。これは、マルチエージェント・シミュレーションの世界に意識を投射できる革新的な装置だ。
なぜこんな装置を使うのか?それは、現実世界で俺たちに残された選択肢があまりにも少ないからだ。エターナル・ソサエティは政府にまで深く食い込んでおり、俺がこの絶望的な状況を変えるチャンスは一度きりしかない。しかし仮想世界なら、様々な戦略を何度でも試し、社会を変えるために有効な戦略を探り出すことができる。仮想世界は現実の1000倍の速さで時間が進む。つまり、黒川から与えられた1週間の猶予は、仮想世界の中では約20年という時間になるのだ。
この仮想世界での20年で、俺は社会を救う方法を見つけ出さなければならない。エターナル・ソサエティを打倒し、ライフコードを破壊するのか。それとも別の道があるのか。全ては、これからの「旅」にかかっている。
幸いなことに、俺は一人ではない。AudreyというAIが、パートナーとなってくれる。15歳の感性を持つAudreyは、仮想世界では俺の妹分である吉岡結月の体を借りて行動する。彼女の存在は、きっと俺の支えとなるだろう。
現実世界には、俺の帰りを待つ仲間たちがいる。今は拘束されている、同僚の橘澪、天才ハッカーでもある結月、ジャーナリストの西村さん、元官僚の斎藤さん。彼らは俺と共にエターナル・ソサエティと戦ってきた、かけがえのない存在だ。そしてSDOを開発した御厨博士。彼らの思いを胸に、この旅に出るのだ。
SDOの世界で、俺は様々な可能性を試すだろう。パラメータを操作すれば非現実的な力を持つ「チートキャラ」になることだってできる。しかし、最終的に見つけ出す解決策は、現実世界で実行可能なものでなければ意味がない。それが、この実験の本質なのだ。
今、俺はSDOのベッドに横たわっている。目を閉じれば、新たな世界が広がる。そこで俺は、20年の時を生きる。そして、この世界を救う方法を見つけ出す。
目を閉じる。深呼吸をする。
そして、新たな世界へと意識が沈んでいく。
20年の旅が、今、始まろうとしている。




