トランスセクシャルしましたがそんなのはすでに想定済みです
「……んむぅ」
なんだか寝苦しくて目覚めた。
何故か顔に布がかかっている。
「んだこれ… てか、これ俺のTシャツじゃん」
何故か俺は俺のTシャツにくるまって寝ていた。
俺が寝巻きに使っていた、俺にジャストサイズのTシャツに、くるまって寝ていた。
つまり。
あきらか俺がサイズダウンしている件。
そしてついでに声も違う。
「ははーん、つまりこれはアレだな?」
まぁ、そんじょそこらの野郎であれば理解に苦しむ事だろう。
だが、しかし、訓練されたオタクである俺は違う。
この事態はすでに妄想済み。生来の妄想好きが人生において始めて役に立っているでおじゃる。
「ふふふ、やっておくか、様式美って奴をよお!」
俺は立ち上がり、自分の様子を確認する。
そしてまず、髪を両手で後ろにふわりと流した。
「…髪、長い!」
肩甲骨のあたりまである、金髪よりの茶髪。
「腕、細い!声、高い!」
俺のたくましい腕は見る影もなく、豊満なウエストも、ムチムチのフトモモも、消失している。
ついでに、おっぱいも小さくなっている。
「あー、あー、テステス、地声テス」
声は可愛い声だ。
これは声優になれるのでは?
いやいや、なめるなよど素人が。
「声優さんは偉大なのだ。俺のような雑魚オタが気軽になれるものではないのだっ」
身の程を知るがよいっ!
……ちなみに系統としては水瀬いのりさん系かな。
はぁはぁ、ヘ○ティア様、チ○ちゃん、はぁはぁ、カトンボ膝ロボ娘…
声質が若干似ているんじゃぁ。
スマホスマホ、録音押して……
「まったくたけるさんは本当に困ったたけるさんです……」
そして再生。
うほぉ、やべえ、思いのほか○ノちゃんでござるぅ。
劣化版チ○ちゃんが俺の名前を呼んでるでござるぅ。
こ、れ、は、捗る!
「ラ○ネスさんに名指しで罵倒されたい勢の俺としては、夢が広がりますなぁ」
さて。
それじゃあ、そろそろ様式美をフィナーレしとこうか。
「ない!いや、本当にないなっ!」
ステータスで希少価値はあるやつだ!
「そしてこっちもない!」
俺のネオアームストロング砲が、喪失してしまっている。
「ふふふ、やはり間違いない」
俺は無い胸を張り、そして吠える。
「こいつぁTSFだぜっ!」
いや待てよ、現実に起きてんだから全然ファンタジーじゃないじゃん。
ということはTSFじゃなくてRTS(リアルトランスセクシャル)?
まぁ、知らんけど。
「さてと………… とりあえず裸体拝むか」
トランスセクシャルしたらまずやるべきこと。
それは己の裸体チェックだろう。
TS物でよくあるのは、自分の体にドキドキしながら覗くように自分の裸を拝むと言う流れだが、訓練された紳士である俺は違う。
「はぁ!」
だるだるのTシャツを脱ぎ捨て、姿見の前に仁王立。
堂々とガン見してやるもんね!
「うほっ…… いや、引くほど美少女じゃね?」
スマホを取り出して、かつての俺が萌えキャラの等身大パネルと自撮りしている画像を出す。
顔を見比べてみると、構成されているパーツは完全に一致していることが解る。
ただ、配置が違いすぎる。
かつての俺は、某お髭真っ黒海賊団の巨漢船長の幻の11人目か?というほどにデカかった。縦にも横にも。
それがどうよ。
めっちゃ、すっら〜、ってなってますやん。
はぅぁ、エロう可愛らしいお尻だすなぁ。
だけどお胸は慎ましいなぁ。
あれかな、俺の奥ゆかしいところが胸の大きさとしてでちゃったのかな?
「……TS前の方が巨乳だったパターンとか、新しいな」
しかし、やはりというかなんというか。
自分の身体って、全然興奮しないのな。
当たり前といえばそうだけど。
ふ、なんだか寂しいぜ。どこいっちまったんだよ俺の愛棒。俺たちは昔から二人で一つ、妄想内じゃ負け知らずだったじゃないか……
っく、惜しい棒を亡くした。
まぁ、とにかく己の体は把握した。
身長もめちゃんこ、ちっこくなってる。
前は190はあったが、今はこれ何センチなんだ?推定140弱?
「そこそこ直子に似ている。さすが妹、さすイモ」
パーツは同じだし、妹にもにている。
つまり今の俺の現状は、全く別の美少女に転換したというよりは、(骨格レベルで)痩せてにょたったらこうなった、って感じか。
なんだ、俺って脂肪脱いだら美少年なタイプだったのか。ちっちゃい頃からデブだったから知らんかった。
「はいはいはい、完全に理解したわ」
なるほど、全くわからん。
まぁ、多分例のTS病だろう。なんでも性転換する際に、尋常じゃないエネルギーを消費するため、健康で頑強なデブじゃないと生き残れないふざけた病気と聞いた。
丈夫なデブでよかったな俺。始めてデブそのものに感謝したわ。
まぁ、この後どうせ病院とか行くんだろうし、その時詳しく聞けばいっか。
現状のコンディションは抜群だし、問題ナイナイ。
となれば、今俺がやるべきことは一つ。
「まずは、腹ごしらえだっ!」
そういえば、めっちゃお腹減っとるんですよ。
よっしゃ、そうと決まれば飯を食う前に服を着よう。
なにせ、せっかくの美少女、着飾らねばもったいなし!
さあ皆さんお待ちかね。TS美少女が最初に何着るかの時間だぜ。
よくありがちなのは、前の自分のTシャツを来て、彼T状態になるケースだろう。
だが、それはもうやってもうた。
なので俺はこいつを着させてもらう!
「まさかこいつを着ることになろうとはな」
ずっと前にメルカリで衝動買いしてしまった、某運命戦争が騎士王様の普段着お嬢様服と完全一致してる青いスカートとオシャレシャツ、青リボン、黒タイツだ。
いや、別にコスプレ品とかではなく。本当に偶然、大体の仕様が同じスカートが出品されていて、感動のあまりポチってしまったのだ。そしてそれに合わせたリボンとタイツとシャツを揃えちゃった感じだ。
めっちゃあざとい服やでぇ、これは。
「うっほ、セイバーコスの茶髪美少女だぁ。こんなエモい服装、俺本人じゃなかったら激写しちゃうね」
きゃわいい。
くるっと回ってスカートひらりして、人差し指たてつつあざとポージング。
あらきゃわいい!
……脳内で巨漢の前俺がちらつくな。ぉぇ。
まあいっか。可愛いは正義と憲法にも定まっているし。
ちなみにパンツも女物だ。
もし聖杯をめぐる戦争に巻き込まれてもいいように、セイバーさんに似合うおパンツを買っておいたのだ。
はい、キモいとかいわない。セイバーさんは某運命本編時では霊体化出来ないから必要なんだよ、おパンツがよぉ!(※だからといって別に履く必要はない)
まぁ単純にタイツにトランクスは難しい。ブリーフ派ではないのだ、俺は。
ちな、タイツを履かないという選択肢はない。タイツ女子って、最も高いと思うんだよね、俺。
「さって、着替えも済んだしメシメシ」
キッチンに移動し、冷蔵庫を漁れば、俺のために用意してくれていた朝飯の数々。
大盛りサラダと、巨大具沢山オムレツ、それとウィンナーが巨大なお野菜たっぷりポトフだ。
これとトースト数枚か本日の俺の朝食である。
うん。
果たしてこの体はどれだけ食えるのだ?
「まぁとりあえず一枚だけトースト焼こ」
そして実食。
結果。
「嘘だろ、トースト一枚食えないとか、そんな人類いるの?」
なんかもう、はんぶんでいいかんじ。
あとちょっと、ポトフをちっさいカップ一杯でいい。もちろんデカイウィンナーは食えるはずも無く。
「……ぅわ、めっちゃポンポンいっぱい」
なんかもうノーセンキューだ。
嘘だろ、こんなに変わるもんなの?
今、ここにきて一番TSに戦慄してるんだけど。
「…………………ま、そんなこともあるか。うむ、諸行無常なり」
食の楽しみが大分失われてしまったが、なに、これからは量より質で食の楽しみを味わっていこうではないか。
うむ、気にしない気にしない!
気にしてもしゃあないしなっ!
「さぁて、これからどうすっかなぁ」
椅子に深く腰掛けて足をプラプラ。
うちの一族は皆、ジョースターの血統並みに全員ガタイが良い(入り婿の父もマッシブ)ので、必然的に家具も大きめなものが採用されている。ので、今の俺には結構でかい。
よって、こういうあざとムーブも思いのままである。
「……とりあえず学校いっとくか」
ふむ、せっかく可愛くなったのだから、自慢しないという手は無い。
学校行ってみんなに「可愛い」って言ってもらっちゃうぞッ!
「うっし!そうと決まれば!」
早速食べた食器を片付けて、家を出る準備をする。
ちなみに家族は全員すでに出ている。
両親は仕事だし、二つ下の双子は朝練で先出してるし、二つ上の兄貴は大学の用事で早出しているらしい。
「服はこのままでいいよな、カワイイし」
うちの学校は私服ありの私立高校だ。制服はあるけど別に着なくていい。
学校で着てる奴は半々ってとこだ。俺は今までは制服派だった。
俺のサイズだと私服を買うのも大変で制服の方が楽なのだ。
だが、これからは俺も私服派へと鞍替えしようと思う。こんなに可愛いのだから、可愛くせねば嘘である。だが、制服も可愛いので制服も新たに買うべきだと思う。
大丈夫、(親の)金ならある!
「さて、家族への連絡はぁ〜」
〜うん。
後でいいよね。
だって知らせたら絶対、速攻で病院連れてかれるもんね。
うちの家族は家族愛が尋常じゃないからなぁ。
まぁ、かく言う俺も、もし家族が似たような目にあってたら、ふんじばってでも連れてくけどね!
「さてと、準備おっけーだな」
俺は置き勉派の帰宅部なので基本的に荷物は少ない。
今までの荷物の九割九分九厘は弁当であった。
今は、当然そんなの持てないので、実質手ぶらである。
「よし!いってきまーすっ!」
そんなこんなで、俺は家を飛び出し、学校へ可愛さを振りまきに行く。そして、この二時間後には家族にふんじばられて帰宅するのだった。
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