第一話
「リヒト!見て見てこのお花とってもキレイじゃない?」
少女は目を輝かせながら手元の本をリヒトに見せる
「キレイだな」
「でしょ~夜にしか咲かない夜花、私、このお花で作った花かんむりを付けて結婚式するのが夢なんだ!」
少女は更に目を輝かせて夢を語る
「叶うといいな!」
リヒトは少女を見て微笑みながら言葉をかける
「うん!」
「じゃあ、次はリヒトの夢を教えてよ!」
「俺の夢かぁ--カーンカーン--夕時を告げる鐘が響く
「あっ、もうこんな時間だね」
少女は残念そうに下を見る
「また明日会えるんだからそんな顔すんなよ」
「そうだけど……」
「それに、明日は誕生日だろ?」
「そうだね、とっても楽しみ!」
少女の口角が上がる
「今年も盛り上げるから楽しみにしてろよ!」
「楽しみにしてるね、--でも……去年の虫のこと忘れたわけじゃないから……」
少女の口角が再び下がる
「あれは本当に悪かったって、明日は絶対にお前が喜ぶ物用意するからさ!」
「本当に……私が喜ぶ物なの?」
「今年のプレゼントには絶対の自信がある」
「そこまで言うなら……一応、楽しみに待ってるね」
「おう、またな!」
◆◆
男は洞窟の中心にある剣に魔力を送っている
「ふぅ、」
一息ついて隣接した家に入り、夕食の準備に取り掛かる
「久しぶりにリヒトが好きなハンバーグを作るか」
男は手早く調理を進めていき、程なくして料理が完成する
「父ちゃんただいまー!」
丁度リヒトが目を輝かせて帰ってきた
「お帰り、リヒト」
「このにおいは肉か?」
「そうだぞ、今夜はお前が大好きなハンバーグだ!」
「やったー!」
リヒトはよだれを垂らしながら飛び跳ねた
「早速食べるか」
食事の支度をして席に着く
「うめぇー!!!」
リヒトは真っ先にハンバーグに食らいついて歓声を上げる
「やっぱり父ちゃんが作るハンバーグが一番うまい!」
「相変わらず嬉しいこと言ってくれるな」
「このハンバーグは世界一だ!」
「はいはい、分かったからもうちょっと落ち着いて食え」
「ところでリヒト、今日もカレンちゃんの所に行ってきたのか?」
「うん、いっぱい話をしてきた」
「どんな話をしたんだ?」
「最近あったこと、本の話、あと、夢の話もしてきた!」
「夢の話か叶うといいな」
「明日のプレゼントも決まったんだ」
「今年はもう変なもん渡すなよ」
「分かってるよ、今年はとっておきがあるから大丈夫だ!」
リヒトは自信げに鼻を鳴らした
「ずいぶん自信があるみたいだな、何をプレゼントするつもりなんだ?」
「花だ」
「はへぇ~リヒトが花ねぇ」
「これからとってくる!」
「今からってことは夜花か?」
「そうだ!」
「この辺は安全だけど気を付けていけよ」
「いってくる!」
リヒトは慌ただしく外出した
◆◆
リヒトは本の情報を基に夜花を探し回る
「う~ん、夜に咲くってどこに咲いてんだ?」
草木をかきわけながら懸命に探すも中々見つけることができずにいた
「かなり村から離れてちまったなぁ」
そう言いながらも森の奥に入り更に捜索を続けていると--
「あった!あの崖にあるやつだな!」
遂に夜花を目に映したリヒトは急いで崖の上まで向かい、手早く木のつるでロープを作り自分と大木に巻き付けて崖に咲いた夜花を目指そうとした瞬間--ドゴォォーーン!!村から爆炎が上がる
「--っ、ぅ、なんだ、、あの爆発、なんだあの爆発!?」
リヒトは初めて経験するかつてないほどの悪寒と目を疑う光景に一瞬言葉を失うがその足は既に村に向かっていた
◆◆
村中が炎に包まれる中、大木のような角の生えた魔人と男は向き合っていた
「人間にしては中々だな、流石は元七剣……豪炎のハンバ」
魔人は首を鳴らしながら口角を上げる
「がっふぅ、、この状況で……嫌味か?」
ハンバは吐血しながら答える
「いや、仮にも人間が四天王の俺に傷をつけたんだ誇っていいぞ……お前、魔王軍に入れ」
「入るわけねぇだろ、俺には聖剣の守り人としての使命がある!!」
「くだらないプライドだな」
「父ちゃん!!」
村に駆けつけたリヒトは重傷のハンバを心配そうに見つめて呼びかける
「リヒト逃げろ!!」
「逃げろって、カレンや村の皆は!?父ちゃんは!?」
混乱しているリヒトにはハンバの声は届かない
「死んだ奴らの心配なんてしてる場合か?ガキィ」
魔人が視線をリヒトに変える
「……お前から始末してやる」
手に闇のオーラをまといリヒトを貫こうとする
「……ぁっ、あ」
リヒトは恐怖で動けずに座り込む――魔人の手がリヒトを貫く瞬間--させるかぁぁ!!」
ハンバが庇い胸を貫かれる
「……ぐっ、、」
ハンバは倒れそうになりながらも聖剣に力を送り魔人めがけて構えながら抑え込む
「離しやがれ!」
魔人は抵抗するも決死の力に身動きが出来ない
「……逃がすかよッ!」
聖剣の輝きが数段増す
「ホーリーバーストッォ!!」
辺り一面を光が覆う—―
聖剣から放たれた光により魔人の体が灰に変わっていき消滅すると同時にハンバも倒れる




