4/4
冬斗①
血の匂いがする。
「兄さん?」
私の唇は微かに震える。
愛人と母はただの肉の塊に成り果てていた。
兄さんはもう私の知ってる兄さんではなかった。
「ようやく殺せた。見ろよ夏葉!俺達を支配していた偉そうな豚どもの末路を」
私達は助かった。だけどなんなんだろうこの不快感は。
確かに死ねばいいと感じていた。だけどだけど。
私は言う。
「人を殺しちゃあ駄目だよ。兄さん」
兄さんは私を睨み付ける。
「俺は間違っていない」
私達は冬空の下、外に出た。雪が舞い散る。私は裸足で歩く。
兄さんの歩く速度に追い付くように。
「死体、あのままでいいのかな?管理人さんに見つかったら警察を呼ばれるのかな」